映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第68弾の今回は、前回に引き続き「ゾンビ映画に登場した腕時計」の後編をお送りします。
*出典元:https://zombiejunkyard.com/
1930年代に生まれた「死者を蘇らせる呪術映画」だったゾンビ映画が、1970年代には「蘇った死者が人を襲って食う怪物映画」として人気のホラー映画ジャンルに定着。21世紀になると「人並外れた運動能力で襲ってくるゾンビ」が、映画だけでなくTVゲームや漫画の題材として若者の間で人気を博すようになります。
いまや『ウォーキングデッド』(2010)など、TVドラマの題材になるほど大衆的な人気を獲得した「ゾンビ」。今回は、近年公開されたゾンビ映画に登場する腕時計を見て参りましょう。
- ◆ ランド・オブ・ザ・デッド
- ◆ バイオハザードIII
- ◆ 28週後…
- ◆ ワールド・ウォーZ
- ◆ アイ アム ア ヒーロー
- ◆ まとめ
ランド・オブ・ザ・デッド
LAND OF THE DEAD(2005)
*出典元:https://muitomolho.com/
ゾンビ禍が蔓延し、当たり前のようにゾンビで溢れ返る世界。生き残った人々は、ゾンビが渡ることのできない川に挟まれた土地で生活を始める。スラムの住人たちがゾンビの襲撃に怯えて生活する中、富裕層は要塞のような高層ビルに住み、スラムの住人たちに集めさせた物資で豊かな生活を送っていた。物資調達部隊のチョロ(ジョン・レグイザモ)は、街の支配者カウフマン(デニス・ホッパー)に都合よく使われる日々に嫌気が差し、復讐の機会を窺っていた。やがてゾンビの中に知能を持つ個体が現れ始め、富裕層、貧民層、ゾンビによる三つ巴の抗争へと発展していく。
『ゾンビ』(1984)で大量消費社会に警鐘を鳴らしたロメロ監督の次なるテーマは「格差社会」。貧しさから抜け出すことができずに苦しみ続けるスラムの住人よりも、知能を持ちはじめたゾンビの方が人間らしく生きられるという矛盾が描かれています。
*出典元:https://interwatches.wordpress.com/
この映画に登場する腕時計は、スラムの住人チョロ役を演じるジョン・レグイザモが着用するタグホイヤー アクアレーサー(Ref.WAF1110.BA0800)。川に囲まれた街を舞台にしたゾンビ映画だけに、高い防水性を誇るアクアレーサーは、そのロケーションに合致した腕時計と言えるでしょう。
バイオハザードIII
RESIDENT EVILl:EXTINCTION(2007)
*出典元:https://interwatches.wordpress.com/
アンブレラ社が開発するウィルス兵器「T-ウィルス」の漏洩によって、全世界にゾンビ禍が蔓延。地球はゾンビに覆い尽くされ、文明社会は崩壊してしまう。元アンブレラ社の特殊部隊員でありながら反旗を翻したアリス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、ゾンビとの応戦を繰り広げながら、安全な土地といわれるアラスカを目指す。
1996年にプレイステーションで発売されたアドベンチャーゲーム『バイオハザード』を実写化したホラーアクション映画の三作目。それまでの薄暗い地下や夜間から一転、日がギラギラと照り付ける砂漠を舞台とした、開放感あるゾンビ映画となっています。
*出典元:https://almostontime.com/
この映画に登場する腕時計は、ミラ・ジョヴォヴィッチ演じるヒロイン、アリスが着用するタイメックス アイアンマン トライアスロン 30ラップ(Ref.T53151)。トライアスロンレースのアスリートたちの要望で作られた、タイマーやラップタイム計測機能を搭載した多機能スポーツギアですが、残念ながら画像のような地図表示機能は搭載しておりません。おそらく、調べた限りでは、この形状でオールブラックのモデルは発見できなかったので、終末感や使い古した雰囲気を演出するため、全体を黒く着色したのではないかと推察されます。
28週後…
28 WEEKS LATER(2007)
*出典元:https://www.disneyplus.com/
感染すると数秒で脳に侵入し、感染者の理性を破壊して凶暴化させるウィルスが蔓延したロンドン。生き残った非感染者の脱出と英国本土の隔離措置が完了し、凶暴化した感染者は隔離区域内で死に絶え、感染発生から28週間後に安全宣言が出される。感染者に襲われた妻を見捨てて生き延びたドン(ロバート・カーライル)は、避難区域で妻の生存を知り、隔離中の妻の部屋に忍び込むと、見捨てたことを謝りキスをする。しかし妻が無症状感染者であった為、ドンはウィルスに感染。凶暴化して逃亡したドンによって、避難区域内で瞬く間に感染が広がっていく、、、
生物を凶暴化させる危険なウィルスの蔓延を描いた『28日後…』(2002)と、その続編である『28週後…』(2007)は、どちらも「生きた感染者が凶暴化する話」なので、正確に言えば「死者が蘇るゾンビ映画」ではないのですが、どう見ても感染者がゾンビにしか見えないので独断と偏見でゾンビ映画に含めさせていただきます。『高慢と偏見とゾンビ』(2016)ではありません。
*出典元:https://www.fanpop.com/
この映画に登場する腕時計は、ジェレミー・レナー演じる特殊部隊の狙撃手、ドイル軍曹が着用する、ルミノックス ネイビーシールズ (Ref.3001)。アメリカ海軍の特殊部隊「SEALs」との共同開発で誕生した、いわゆる「ミルスペック」の腕時計です。ドイル軍曹はデルタフォース(アメリカ陸軍)の所属ですが、ミルスペックであれば海軍だけでなく、陸軍の制式採用基準も満たしていますので、ネイビーシールズの腕時計であっても違和感はありませんね。
ワールド・ウォーZ
WORLD WAR Z(2013)
*出典元:https://www.vigilanzatv.it/
妻と子供2人と共に、平和な日々を送っていた元国連捜査官のレイン(ブラッド・ピット)。彼はある日、謎のウイルスによって人々が瞬く間に凶暴化し、次々と感染していく現場に居合わせてしまう。「Z」と呼ばれる感染者の拡大によって世界が崩壊の危機を迎える中、家族を守るため国連に復帰したレイン。世界各国の感染状況の調査を続ける中で、彼はゾンビに襲われない人間がいることに気づき、ある仮説を立てるのだった、、、
製作と主演をブラッド・ピットが、監督を『007/慰めの報酬』(2008)のマーク・フォースターが務めたゾンビ映画界の超大作。製作費2億ドルに対し、興収5.3億ドルを稼ぎ出し、ブラッド・ピット主演作の中で最大のヒット作となりました。莫大な製作費をかけただけあり、登場するゾンビの数は圧倒的。文字通り「死屍累々」となったゾンビたちの姿が、途方もない物量で描かれます。
*出典元:https://www.spotern.com/
この映画に登場する腕時計は、ブラッド・ピット演じる国連調査員、レインが着用する、テッラ チエロ マーレ オリエンテーリング(Ref.TC7008PVD3PA)。2001年にイタリアで創業した新興ブランドの腕時計です。地図と方位磁石だけを頼りに目的地を目指す「オリエンテーリング」競技用のこちらの腕時計は、太陽の位置から東西南北を知ることができるコンパス機能を搭載。大航海時代のマルコポーロやコロンブスのように、危険な国々を巡る国連調査員の腕には、実に相応しい腕時計と言えるでしょう。
アイ アム ア ヒーロー
I AM A HERO(2016)
*出典元:https://www.spotern.com/
クレー射撃が趣味のミリタリー漫画家、鈴木英雄(大泉洋)はヒット作もなく、35歳を過ぎてもアシスタント生活から抜け出せずにいた。そんなある日、世界中で謎の伝染病が流行。感染者に噛まれた者はゾンビとなって他人を襲い、瞬く間に感染が広がっていく。ゾンビの襲撃を逃れた英雄は、逃亡中に「ゾンビ化しない感染者」の女子高生、比呂美(有村架純)と出会う。英雄は「標高の高い場所ではウィルスが死滅する」という噂を信じ、比呂美と共に富士山を目指すが、その途中で感染を逃れた者たちが避難する巨大なショッピングモールを発見する、、、
『キングダム』(2019)の佐藤信介監督、『アンナチュラル』(2018)の野木亜紀子脚本で送るこの和製ゾンビ大作は、出演も大泉洋さん、有村架純さん、長澤まさみさん、吉沢悠さんら、人気のオールスターキャストで固められており、洋画に勝るとも劣らないクオリティとパッション溢れるゾンビ映画に仕上げられています。日本でもこんなに素晴らしいゾンビ映画が作れる時代になったとは、ゾンビ映画好きとしては実に嬉しい限り。思わず劇場で3回も観てしまいました。
*出典元:東宝
この映画に登場する腕時計は、モールの生存者であるアベサン(徳井優)や、売れっ子漫画家の中田コロリ(片桐仁)が着用するロレックス。着用のアップが無いのでモデルや型番は不明ですが、いずれのシーンも「これ?ロレックス」「やっぱりロレックスは格好いいですね」といったセリフがあり、その着用が推察されます。物資としてカゴに集められた腕時計の中にも、プロップと思われるデイトナやサブマリーナーなどが数多く映し出されており、文明崩壊の危機であっても高級腕時計に憧れる「変わらぬ人心」が描かれています。
*出典元:東宝
この映画では、ロレックスは明確に「富の象徴」として描かれており、うだつの上がらない英雄が、コロリやアベサンのロレックスを羨ましそうに眺める姿が印象的。ショッピングモールに逃げ込んだ英雄も、そこで「憧れのロレックス」を手に入れますが、そのロレックスは物語後半、さすが「実用時計の王様」と呼べる活躍を見せてくれるのでお楽しみに。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
ゾンビ映画という、ある意味「荒唐無稽なB級ホラーの極地」のような表現作品であっても、そこに登場する腕時計は、キャラクターの性格や、ロケーションを表現する重要な小道具として扱われていることがお解りいただけるのではないかと思います。
むしろ、一瞬の判断ミスが死に繋がりかねない極限状態であるからこそ、「生き延びるために、どのような腕時計を選ぶ人物なのか」ということが、より際立つように感じられます。
まだまだこの先、多くのゾンビ映画が作られていくハズですから、その登場人物がどのような腕時計をサバイバルの相棒に選ぶのか、楽しみにチェックしていきたいと思います。
ではまた!