映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第36弾の今回は「俳優と監督の二刀流 ベン・アフレックの腕時計」をお送りします。

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『アルマゲドン』(1998)や『パールハーバー』(2001)など、ヒットメーカーとして名高いマイケル・ベイ監督作に主演するイケメン俳優として人気に火が付いたベン・アフレック。2010年代に入ると、多くの出演作で監督や製作総指揮を兼任するなど、映画製作者としての顔も見せる「二刀流俳優」です。

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そんな、ハリウッド映画製作の表舞台も裏方も知り尽くした男、ベン・アフレックが選ぶ時計に今回は注目してみたいと思います。

ペイチェック 消された記憶

PAYCHECK(2003)

オールコム社での3年間の研究開発の後、機密保持のため莫大な報酬と引き換えに記憶を消されることに同意したエンジニアのマイケル(ベン・アフレック)。ところが記憶を消された後で彼が手にしたものは、19個のガラクタが入った封筒と”報酬を辞退する代わりにこの紙袋を受け取る”という自分のサインが書かれた誓約書だった。失意の中、機密を狙うスパイに狙われたマイケルは、そのガラクタを使って次々と訪れる危機を切り抜けていく。まるで危機を事前に予知して、それらのガラクタを準備したかのように…。

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『ブレードランナー』(1982)、『トータル・リコール』(1990)、『マイノリティリポート』(2002)など、数々の大ヒットSF映画の原作者として知られるフィリップ・K・ディック。彼の短編小説『報酬』を原作とした本作『ペイチェック』は、『フェイス/オフ』(1997)や『レッドクリフ』(2008)のジョン・ウー監督の手により、小気味のいいSFアクション映画に仕上げられております。

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この作品でベン・アフレックが着けているのは、セイコー WIRED Ref.W522-4A30。いかにも近未来らしい、大きな液晶画面のデジタルウォッチです。強い磁気にも晒されやすいであろうエンジニアの腕には、ラグジュアリーなハイブランド時計より、こういったスタイリッシュな高機能デジタルウォッチがリアルなのではないでしょうか。

カンパニー・メン

THE COMPANY MEN(2010)

リーマンショックでリストラされたエリート商社マン、ボビー(ベン・アフレック)が、次の仕事がなかなか見つからない中、高すぎるプライドや家族との関係を見つめなおし、自分のキャリアを再び取り戻していくヒューマンドラマ『カンパニー・メン』。トミー・リー・ジョーンズケビン・コスナーら、スター共演で贈る渋めの現代劇となっています。リーマンショック当時は国内の時計店も大きなダメージを受けましたので、他人事とは思えず、実に身につまされる思いです。

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本作でベン・アフレック演じるボビーが身に着けているのは、ピアジェ ポロ フィフティーファイヴ クロノグラフ。ラグジュアリーさと機能性を兼ね備えたドレススポーツモデルは、いかにもエリート商社マンらしい時計と言えるでしょう。

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ボビーは世界を相手に商船ビジネスを行なっている為、相手国の時間がわかるGMT機能付きというのもポイントが高いです。ちなみにこの腕時計は、読売ジャイアンツの終身名誉監督、長嶋茂雄の愛用品としても有名ですね。

アルゴ

ALGO(2012)

テヘランのアメリカ大使館が占拠され、52人のアメリカ人外交官が人質にとられた「イランアメリカ大使館人質事件」。大使館から脱出し、カナダ大使館に匿われた6人の外交官を救出するため、CIAの工作員トニー・メンデス(ベン・アフレック)が、6人を『アルゴ』という架空のSF映画の撮影スタッフに偽装させて国外に脱出させる計画を立てる…。1979年に中東で起きた実話を基にした本作で、ベン・アフレックは監督と主演の2役を務め、見事に2012年のアカデミー作品賞を受賞。演者としてだけでなく、映画製作者としての評価もうなぎ上りとなった作品です。

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本作でベン・アフレック演じるCIA工作員、トニーが身に着けているのはロレックス ディープシー Ref.116660。1979年に起きた事件の映画化ですので、Ref.1665あたりが適正ではないかと思いますが、Ref.116660が選ばれることとなりました。2008年から製造されたモデルですので、史実からは約30年と、大幅なズレを見せています。

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『フォードvsフェラーリ』のタグホイヤー カレラや、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』のシチズン ツノクロノのように、数年のズレに目をつぶって、年代の整合性よりもデザインを優先するケースはありますが、ここまでズレているのは珍しいですね。正直「何があった?」と言わざるを得ないレベルですが、詳細は不明です。

ゴーン・ガール

GONE GIRL(2014)

5年目の結婚記念日の朝、妻であるエイミーの失踪に気付いた夫のニック(ベン・アフレック)。即座に警察に通報するが、捜査では「ニックがエイミーを殺したように思われる証拠」が次々と見つかり始める。警察や世間の疑いの目が向けられたニックは、それに抗いながらエイミーを探し始めるが…。

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観ると結婚するのが怖くなると言われるほどの「夫婦間の闇」を描いた本作は、『セブン』(1995)や『ファイトクラブ』(1999)のデヴィッド・フィンチャー監督作。いまや監督の相棒とも言える、音楽担当トレント・レズナー(ナイン・インチ・ネイルズ)の陰鬱なインダストリアルサウンドが胃をキリキリと苛みます。

*出典元:https://www.fratellowatches.com/

この映画で闇を抱えた夫婦の夫、ベン・アフレック演じるニックが身に着けているのは、ロレックス GMTマスターII 青赤ベゼル、通称「ペプシ」。完璧な夫とは言えない、ある意味、人間らしい弱みを持ったキャラクターのニックに、ポップな印象の「ペプシ」が少しの柔らかさをもたらしているように思えます。先が読めない緊張感が続くこの映画において、「ペプシ」のポップさは一服の清涼剤といえますね。

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

BATMAN V SUPERMAN:DAWN OF JUSTICE(2016)

DCコミックスの劇中世界で繰り広げられるヒーローたちの戦いを描く「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズの第二作『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』。本作は、強大すぎる力を持ったスーパーマンと、彼が持つ破壊力を人類の脅威と考えるバットマンの戦いを描いた、異色のヒーロー映画になっています。

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本作でベン・アフレックが演じているのは、皆様ご存知のバットマン。大企業ウェイン・エンタープライズの総裁であり、財界人でもある大富豪、ブルース・ウェインがその正体だけに、着けている腕時計も実にプレミアム。

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その腕時計は ブレゲ トラディション 7047 プラチナ トゥールビヨン フュゼシリシオン Ref.7047PT/11/9ZU。フュゼ・チェーン式のトゥールビヨンを搭載し、精度への飽くなき追及を見せたブレゲの自信作です。バットマンの映画はオリジナルに敬意を払いつつ、リブートによって現代的にアップデートされていくアメコミ映画の象徴であり、ブレゲ トラディションのテーマ「原点回帰」「未来への展望」と重なるものがあるのではないでしょうか。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
実のところ、ベン・アフレックは、出演作の評価が安定せず、俳優としての評価もジェットコースターのように乱高下を繰り返す俳優でありました。『アルマゲドン』(1998)の大ヒットで人気が急上昇したかと思えば、『デアデビル』(2003)、『ジーリ』(2003)ではその年の最低映画を決める「ラズベリー賞」で最低主演男優賞の栄冠(?)にも輝きます。

*出典元:https://www.goliath.com/

初監督作『ゴーン・ベイビー・ゴーン』(2007)では多くの賞を獲得し、『アルゴ』(2012)でアカデミー作品賞に輝くも、2018年には依存症のリハビリ施設に入所。このように功績を並べてみると、器用なんだけれども弱さも感じさせる人間臭さが、俳優ベン・アフレックの魅力なのだろうと思えてきます。

選ぶ時計も、映画に登場するエリートビジネスマンの多くがロレックス デイトジャストを着けているのに対し、ピアジェ ポロを選んだり、作品の舞台となる年代に全く合わないロレックスを着けいていたり、と「完璧すぎないチョイス」が目立つのが面白いですね。こういったところにも人間臭さがにじみ出ているように思えます。

*出典元:https://wallpaperaccess.com/

ファッションや時計選びにおいても、あまりに完璧すぎるスタイリングは鼻につくもの。
ベン・アフレックにならって、これくらいのユルさを演出してみるのも、また面白いのではないでしょうか。

ではまた!

Actor's watch