『ゴッドファーザー』(1972)、『スカーフェイス』(1983)、『ヒート』(1995)など、映画ファンであれば知らぬ者のいない傑作・名作映画に数多く主演し、ロバート・デ・ニーロと共にハリウッドの二大レジェンド俳優として名を馳せるアル・パチーノ。
80代となった近年も『アイリッシュマン』(2019)や『ハウス・オブ・グッチ』(2021)などの大作に出演し、2023年には54歳年下の女性映画プロデューサーとの間に子供を授かるなど、年齢など関係ない精力的な活躍ぶりを見せています。
映画やテレビなどで活躍する俳優の腕時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第178弾の今回は、そんなアル・パチーノの愛用時計をご紹介して参ります。
ジャガールクルト
ディープシー ヴィンテージクロノグラフ【Ref.Q207857】
まずは2014年のヴェネツィア国際映画祭。出演した『ブロークン 過去に囚われた男』と『The Humbling(原題)』の2作品が上映となったアル・パチーノが、記者会見に臨んだ際のヒトコマです。
この時に彼が着用していた腕時計は、ジャガールクルト ディープシー ヴィンテージ クロノグラフ(Ref.Q207857J)。1959年に発売された「メモボックス・ディープシー」をトリビュートし、ブティック限定で発売されたモデルです。50~60年代の雰囲気あふれるヴィンテージ加工の夜光と、横目の2レジスターのカジュアルな佇まいは、リゾート感を漂わせたアル・パチーノのラフなスタイリングにマッチしています。
オメガ
コンステレーション【Ref.14381】
続いては、アル・パチーノがマフィア一家のボス、マイケル・コルレオーネを演じた不朽の名作『ゴッドファーザー PART II』(1974)から。兄であるフレドの裏切りを知ったマイケルが、フレドの顔をしっかりと掴んで悲しみを吐露する、劇中屈指の名シーンでアル・パチーノが着用していた腕時計は、オメガ コンステレーション(Ref.14381)と思われます。
本作の舞台は1950年代末期。このモデルが製造されていた1950年代後半頃なので、年代的な整合性がとれた腕時計のチョイスと言えるでしょう。文字盤に十二角形の盛り上がりがある通称「パイパンダイヤル」は、現在も「オメガ コンステレーション グローブマスター」として、その意匠は引き継がれています。
ロレックス
サブマリーナー【Ref.16610】
2015年にロンドンのアポロ劇場で行われた、自らのキャリアを振り返るトークイベント『アル・パチーノとの夕べ』でのヒトコマ。『スターウォーズ』のハン・ソロ役や、『ダイハード』のマクレーン役のオファーを断った話や、演劇の恩師との出会いがドラック中毒から立ち直るきっかけになった話など、アル・パチーノの50年近くに渡る俳優生活の裏側を赤裸々に語るイベントになった模様です。
このイベントで彼が着用していた腕時計は、ロレックス サブマリーナー(Ref.16610)と思われます。ワイルドに着崩したスーツにゴツいリングとブレスレットを合わせ、まるでベテランのロックミュージシャンのようなスタイリングのアル・パチーノ。そこにブラックのサブマリーナーが足されることで、より男らしさが強調された印象です。
サブマリーナー【Ref.16610】
前述のロレックス サブマリーナー(Ref.16610)ですが、かつてどこかで見たような...と思って調べたところ、出てきました。かつてアル・パチーノがシェイクスピアの『リチャード三世』を舞台化した際の、その製作過程を記録したドキュメンタリー映画として話題となった『リチャードを探して』(1996)。
舞台の演者のひとり、ケヴィン・スペイシーと演技プランをディスカッションするアル・パチーノの腕に、おそらく同じロレックス サブマリーナー(Ref.16610)が着けられています。これが2015年の『アル・パチーノとの夕べ』で着けていたものと同じ個体であるなら、彼は20年近く同じサブマリーナーを愛用していることになります。いい意味で大スターらしくない、非常に堅実な腕時計の趣味と言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
マフィア一家のボスや麻薬組織のドンなど、映画の中では超コワモテの人物を数多く演じてきたアル・パチーノですが、インタビュアーなどの話によると、本人は大物ぶりをひけらかさない、実直で控えめな人物との事。リーズナブルでシンプルな「Ref.16610」を長年愛用しているあたり、彼の人柄が腕時計のチョイスにも表れているようです。
冒頭でお伝えした通り、2024年現在、御年84歳となったアル・パチーノは以前と変わることなく精力的に俳優業を続けており、2025年に公開予定のエクソシストホラー『The Ritual(原題)』では悪魔払いを行う司祭役、ジョニー・デップが監督を務める彫刻家モディリアーニの伝記映画『モディ』では、アートコレクター役を務めているそうです(画像は『The Ritual(原題)』での司祭役)。
近年のインタビュー記事などでは、彼の腕元まで写っている写真が少なく、彼が現在も「Ref.16610」を着け続けているのかは定かではありません。とは言うものの、ここまで来たら愛する同じ腕時計を着け続けてほしいもの。腕時計愛好家の皆様は、今後アル・パチーノの姿がメディアに掲載されたら、ぜひその腕元に注目してみてください。
ではまた!