映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第130弾の今回は、「ジェレミー・アイアンズの腕時計」をお送りします。

双子の産婦人科医の間に起きた愛欲の悲劇を描くサイコサスペンス『戦慄の絆』(1988)。一人二役で双子の産婦人科医を演じたジェレミー・アイアンズは、この作品の演技で高い評価を受けると、その二年後、妻を植物人間にした罪で有罪判決を受けた男を演じた『運命の逆転』(1990)でアカデミー主演男優賞を受賞。国際的なスター俳優としての座を手にします。

*出典元:https://www.britannica.com/

端正な顔立ちから放たれる冷徹な眼差しを武器に、数々のサスペンス映画やヒューマンドラマで観る者に強烈な印象を残してきたジェレミー・アイアンズ

今回は、そんな彼が劇中で着用した腕時計に迫ってまいりたいと思います。

インランド・エンパイア

INLAND EMPIRE(2006)

*出典元:https://www.presseportal.de/

映画界の有力者と結婚し、長く女優業から離れていたニッキー(ローラ・ダーン)は、新作映画『暗い明日の空の上で』の主演に抜擢される。彼女の実力をよく知る映画監督、キングスリー(ジェレミー・アイアンズ)のもと、ニッキーは再起をかけるため、そのオファーを快諾する。

主演男優のデヴォン(ジャスティン・セロー)と共に撮影を開始したニッキーだが、次第に彼女の周りで不可解な事が起き始める。やがて彼女は、この作品が主演俳優の死によって制作中止となった映画『47』のリメイクである事を知る。

そんな「いわくつき」の映画撮影を続けるうち、映画と現実の境界線を見失ったニッキーは、徐々に不条理な世界へと足を踏み入れていく、、、

*出典元:https://www.legrandaction.com/

イレイザーヘッド』(1977)や『ロスト・ハイウェイ』(1997)で知られるカルト映画の帝王、デヴィッド・リンチ監督の引退作となった『インランド・エンパイア』(2006)。本作で主演女優の演技力を絶賛する映画監督、キングスリーを演じるジェレミー・アイアンズが着用している腕時計は、一見するとカルティエ マストタンクのように見えます。

しかしリューズにカボションが見当たらないので、この腕時計はおそらく、ロンジン ドルチェヴィータ(Ref.L5.655.4)と思われます。

「ドルチェヴィータ」は、デヴィッド・リンチ監督が敬愛するフランス映画界の巨匠、フェデリコ・フェリーニ監督の代表作『甘い生活』(1960)の原題、『La dolce vita(ラ・ドルチェ・ヴィータ)』と同じ名前を持つ腕時計。「映画監督が着ける腕時計」としてこのモデルを選んでいるのは、フェリーニ監督に対するオマージュなのかもしれません。

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

BATMAN V SUPERMAN: DAWN OF JUSTICE(2016)

*出典元:https://www.fotogramas.es/

スーパーマンとゾッド将軍の激しい戦いにより、甚大な被害を受けたメトロポリス。バットマンの正体である大富豪、ブルース・ウェイン(ベン・アフレック)が経営するウェイン社のビルも損壊し、社員の多くが巻き添えとなった。

人類の危機を幾度も救ったスーパーマンだが、彼の強大すぎる力を危険視するようになったブルース・ウェインは、執事のペニーワース(ジェレミー・アイアンズ)を説き伏せ、スーパーマンの弱体化を図る。

スーパーマンとバットマンの間に生じた軋轢。世界征服を企む悪の天才科学者レックス・ルーサーは、それを利用して彼らを戦わせようと画策する。

*出典元:https://www.luxury4play.com/

強大なパワーを持つ、二人のスーパーヒーロー同士の戦いを描いた『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)。ジェレミー・アイアンズは、バットマンの正体である大富豪、ブルース・ウェイン家に仕える執事のアルフレッドを演じています。

ブルースの身の回りの世話だけでなく、バットマンが使用するメカニック開発やメンテナンスまで行うアルフレッドが着用しているのは、ブライトリング ベントレー 6.75 ミッドナイトカーボン リミテッド(Ref.M444B27ERB)。ベントレー最大の「6.75リットルエンジン」にリスペクトを捧げた、ケース径49mmのインパクトある腕時計です。

第二次世界大戦時には英国のスパイとして活動していた経歴を持つアルフレッド。従順なだけではない「仕事人」としての雰囲気を強く感じさせる一本です。

ハウス・オブ・グッチ

HOUSE OF GUCCI(2021)

*出典元:https://id.jugomobile.com/

貧しい家庭出身だが野心的なパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は、イタリアで最も裕福なファッションブランド創業者、グッチ家の後継者の一人であるマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)をその知性と美貌で誘惑。マウリツィオの父、ロドルフォ・グッチ(ジェレミー・アイアンズ)の反対を押し切り、マウリツィオの妻の座へと収まる。

やがて彼女は一族の権力争いを利用して、次第にブランドの経営を支配していく。しかし、順風満帆だったふたりの結婚生活に陰りが見え始めた時、パトリツィアは破滅的な結果を招く危険な道を歩み始める、、、

*出典元:https://variety.com/

ファッションブランド「グッチ」創業者一家の三代目、マウリツィオ・グッチ暗殺事件の真相に迫り、グッチ家からの批判も巻き起こった問題作『ハウス・オブ・グッチ』(2021)。殺されたマウリツィオの父親、ロドルフォ・グッチを演じたジェレミー・アイアンズが着用している腕時計は、ヴァシュロンコンスタンタン オーヴァーシーズ(Ref.4500V/000R-B127)と思われます。

オーヴァーシーズは1996年に発表されたモデルの為、1983年に死去したロドルフォ・グッチが着用しているのは時代的に合いません。しかし、グッチの経営陣に加わるまで人気俳優として活躍していた彼のイメージを優先し、スタイリッシュさとエレガンスを兼ね備えたオーヴァーシーズが選ばれたのではないかと思われます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ジェレミー・アイアンズは英国を代表する「イケオジ」のスター俳優だけあり、劇中と言えどもチープカシオやG-SHOCKといったカジュアルウォッチの着用は見当たらず、ほぼ全てが歴史あるブランドの腕時計ばかり。さすがと言って良いでしょう。

*出典元:https://www.pinterest.com/

2023年7月の時点で御年74歳の立派な「おじいちゃん俳優」のジェレミー・アイアンズですが、そのファッションセンスは昔から個性的で尖んがっており、その装いがインスタグラムピンタレストなどのSNSで話題になることもしばしば。

腕元が見える私服の写真はほとんど無く、これらのスタイリングにどのような腕時計を合わせているのかは残念ながら確認できなかったのですが、彼のファッションスナップは眺めているだけでも楽しいので、それを励みにもう少しリサーチを続けてみようと思います。

着用している腕時計が判明しましたら、続報としてお伝えします!
意外とG-SHOCKだったりして、、、

ではまた!

Actor's watch