映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第118弾の今回は、「タイカ・ワイティティの腕時計」をお送りします。

大ヒットアメコミ映画『マイティー・ソー』のシリーズ3・4作目の監督として知られ、脚本家、俳優、声優、コメディアンとしても活躍するニュージーランドの映画製作者、タイカ・ワイティティ。製作や監督だけに留まらないマルチプレイヤーとして、近年、エンターテインメント界を大きく賑わせている映画人のひとりです。

*出典元:https://www.out.com/

ヨーロッパ系の母とマオリ系の父との間に生まれ、ニュージーランドで育ったタイカ・ワイティティは、学生の頃から演劇やアマチュア映画製作にのめりこみ、地元のCM監督、短編映画製作者、テレビ映画の俳優として活躍。やがて本格的な長編映画製作を開始すると、世界各国の映画祭で絶賛を受け、新進気鋭の映画監督として注目を集め始めます。

そんな彼の知名度を一気に押し上げたのが、『マイティ・ソー・バトルロイヤル』(2017)への大抜擢。同作は興収面・批評面でいずれも高い評価を受け、ハリウッドのヒットメーカーへの第一歩を踏み出しました。

*出典元:https://marvel-guide.com/

先日、海外の映画情報サイトを見ていたところ、タイカ・ワイティティが新作プレミアやインタビューなどに登場するたび異なった腕時計を着用しており、しかもそれらの腕時計が、非常に趣味の良いモデルであることに気がつきました。調べると、彼は時計愛好家としても知られているようで、これは当コラムでも紹介せねばなるまいと思った次第でございます。

そんなワケで今回のActor’s Watchは、タイカ・ワイティティ着用した腕時計をご紹介して参ります。

ロレックス デイトナ

*出典元:https://timeandtidewatches.com/

まずは「セレブが着ける腕時計」としてのお約束の、この一本からご紹介いたしましょう。言わずと知れたロレックス デイトナ(Ref.116528 もしくは 116508/参考画像)です。この写真ではベゼルのデザインが確認できず、残念ながらどちらのリファレンスかは不明確ですが、いずれにしろ鮮やかな青い上着とイエローゴールドの色味がマッチした、絶妙なスタイリングとなっております。

デイトナの中でも、逆パンダ文字盤に差し色の赤が映える個性的なモデルを選ぶあたり、彼のクリエイティヴな感性と人となりを感じさせる一本と言えるでしょう。

ロレックス サブマリーナー

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続いてもロレックスと参りましょう。こちらは前述のデイトナとは真逆の、実にシンプルな一本、ロレックス サブマリーナー(Ref.14060)。飾り気のないトロピカルシャツのマリンスタイルに、敢えてシンプルなノンデイトのダイバーズウォッチが選ばれたように思えます。

同じサブマリーナーでも「Ref.5513」などのヴィンテージが選ばれていないのは、実用性や機能性といった「道具としての腕時計」という側面に、彼がこだわりを持っているからなのかもしれません。

セイコー セカンドダイバー “キャプテン・ウィラード”

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続いての一本は、セイコー セカンドダイバー 後期型 “キャプテン・ウィラード”(Ref.6105-8119)。映画ファンならご存知かと思いますが、フランシス・コッポラ監督の名作『地獄の黙示録』(1979)の劇中で、主演のマーティン・シーン演じる「ウィラード大尉」が着用していたことで有名なモデルです。また、世界的に著名な冒険家、植村直巳氏が生前に愛用していたことで”UEMURA”というニックネームでも呼ばれております。

タイカ・ワイティティが、映画監督として『地獄の黙示録』に影響を受けたかどうかは定かではありませんが、彼が「映画好きに愛される腕時計」を愛用しているのは、映画&腕時計好きにとって、実に喜ばしい限りです。

☞#12『地獄の黙示録』のセイコーとロレックスを読む

セイコー KS スペシャル

*出典元:https://oracleoftime.com/

セイコーからはもう一本がラインアップ。こちらは1975年のみ生産されたレアモデルとして知られる、キングセイコースペシャル(Ref.5256-8000)。搭載されている8振動ムーブメント「Cal.5256A」には、デイトのクイックチェンジの際にもゼンマイの巻き上げが行なわれるという、変わり種ながら実用性の高い機構が備わっています。

写真では曜日表示が「SAT」となっていますが、実はクイックチェンジで日本語と英語が選べるバイリンガル仕様。タイカ・ワイティティが「土」という表示を見て「SATは日本語で『土』と書くのか…」などと思っていると考えると、なんだか親近感が湧いてきます。

カルティエ パシャ

*出典元:https://www.terra.com.br/

続いては、カルティエ パシャ ドゥ カルティエ(Ref.WGPA0007)
デイトナ、サブマリーナー、セイコーダイバーズ、キングセイコーと来たので、無骨で男らしい腕時計が好きなのかと思いきや、フランスが誇るジュエラー、カルティエのエレガントなドレスウォッチも余裕で着けこなすタイカ・ワイティティ。

豪奢なストライプのダブルスーツに身を包んだ彼の表情やポーズが、何となくフェミニンに見えるのは、私の思い込みでしょうか?

カルティエ サントス ドゥ カルティエ

*出典元:https://nypost.com/

続いてもカルティエから、サントス ドゥ カルティエ(Ref.CRWSSA0018)です。
1904年に発表され、「市販された世界初の腕時計」として腕時計の歴史に名を刻む「サントス」は、もともとパイロットウォッチとして開発されたとは思えないエレガントなデザインで、100年以上の長きに渡り腕時計ファンに愛され続けています。

ピンクの背景の前で、これまたフェミニンかつアンニュイな雰囲気を醸し出すタイカ・ワイティティ。もはや「狙ってやっているのでは?」とすら思わせます。そういえば映画『フリーガイ』(2021)では、彼はドラァグクイーンを思わせる大仰な言動で周囲を翻弄する悪役俳優として、エキセントリックな演技を見せていましたっけ。

*出典元:https://www.cinemacafe.net/

ドクサ サブ

*出典元:https://www.watchuseek.com/

今までの写真とは打って変わり、カジュアルな雰囲気のタイカ・ワイティティ。これが彼のオフタイム姿でしょうか。そんな彼が着けているのは、オレンジ色が目にも鮮やかなドクサ サブ(Ref.1200T)。日本未上陸ながら、ドクサは1889年創業という長い歴史を持ったスイスの時計ブランドです。

1900年代初頭に8デイズムーブメントを発表したり、ロレックスと協力してプロ用ダイバーズウォッチを開発したり、世界各国の軍隊で制式採用されたりなど、実用性の高い時計開発に長けたドクサですが、この水中での視認性を高める「オレンジ文字盤のダイバーズウォッチ」も、世界で初めてドクサが商品化したと言われています。

映画監督や俳優というのは視覚表現にこだわる職業ですので、デザインが機能性に直結する「腕時計」というアイテムにも彼がこだわりを見せるのは、当然と言えるのかもしれません。

オメガ スピードマスター

*出典元:https://lifestyleasia.onemega.com/

最後はオメガ スピードマスター ムーンウォッチ 42MM(Ref.310.60.42.50.01.001)。ピンクのセットアップに身を包んだタイカ・ワイティティが選んだのは、同じピンク色の新素材「セドナゴールド」を採用したラグジュアリーな一本です。

初代ムーンウォッチを踏襲した「左右非対称ケース」と「ドットオーバー90」のタキメーターを備える本機は、新素材を使いながらも、ムーンウォッチの歴史やスピリットを受け継いでおり、この腕時計を選んだ彼の「時計愛」は本物と言わざるを得ません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ロレックスやオメガ、カルティエなどの腕時計は、ハリウッドでも多くのセレブが着用しており、それだけなら当コラムで採り上げるつもりはなかったのですが、彼がセイコーのヴィンテージやドクサなど、「腕時計マニア」がこぞって愛するモデルを身に着けているのを見た瞬間に、「この事実を世に広めなければならない」という謎の使命感に駆られてしまいました。

*出典元:https://mashable.com/

さて、前回ご紹介した『スター・ウォーズ』のスピンオフドラマ、『マンダロリアン』の一部エピソードでも監督を務めたタイカ・ワイティティ。なんと『スター・ウォーズ』の新作映画で彼が監督&主演を兼任する可能性があるという噂が飛び込んで参りました。

『マンダロリアン』の彼の監督回はファンから非常に高い評価を得ており、もし実現すれば、スター・ウォーズファンが喜ぶような作品に仕上がる可能性は非常に高いと個人的には考えております。そうなれば、プレミアレッドカーペットで彼が着用する腕時計を見られる機会が増えることは必至。実に楽しみです。

とはいえ、このような噂はあまり当てにはなりませんので「話半分」で聞いておく事にいたしましょう(でも実現して欲しいなあ、、、)

ではまた!

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