人工衛星やF1の車体などに用いられる最先端の新素材が用いられ、宇宙工学など最新の科学技術に基づいた設計・加工・組立てが行なわれている、リシャールミルの腕時計。

高級腕時計の既成概念を打ち破り続ける創業者、リシャール・ミルのアイデアやポリシーに惹かれるセレブやアスリートは後を絶たず、2001年に設立されたばかりの新興ブランドながら、設立からわずか10年ほどで時計業界有数のトップブランドへと昇り詰めました。

「Actor’s Watch」第105弾の今回は、そんなリシャールミルとのコラボレーションが話題の世界的アクション女優、ミシェル・ヨーの着用モデルを採り上げたいと思います。

ミシェル・ヨーについて

破産寸前のコインランドリー店主のおばさん(ミシェル・ヨー)が、なぜかマルチバースで救世主として覚醒。宇宙と人類を守るため巨大な悪との戦いを繰り広げるSF映画『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(通称エブエブ)』(2022)。2023年3月3日の『エブエブ』日本公開を待ちわびている映画ファンも多いのではないでしょうか。

『エブエブ』は本年度の米アカデミー賞レースで最多の11部門ノミネートを果たし、主演のミシェル・ヨーも、アジア人初となるアカデミー主演女優賞へのノミネートという快挙を成し遂げています。

*出典元:https://mubi.com/

ミシェル・ヨーは、香港映画の重鎮サモ・ハン・キンポーに見いだされて1980年代に映画デビュー。ジャッキー・チェン主演作など、アクション映画の闘うヒロイン役として香港で活躍した後、1990年代にハリウッド進出。『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997)や『グリーン・ディスティニー』(2000)などの大作に出演し、激しいアクションを自らこなすアジア系美人女優として世界的な人気と知名度を獲得していきます。

還暦を過ぎた現在においても、彼女の美貌と切れ味鋭いボディアクションは健在。近作『ガンパウダー・ミルクシェイク』(2021)では、図書館に偽装した武器商店を取り仕切る「知性と攻撃力を兼ね備えた、格闘と銃撃のプロのおばさん」を熱演。私を含め、世界中のファンを歓喜させてくれたことは、記憶に新しいところです。

*出典元:https://m.imdb.com/

ミシェル・ヨーの夫は、監督としてプジョーのレース部門やフェラーリのF1チームを世界チャンピオンに導き、2021年の満期退任まで国際自動車連盟(FIA)の会長を務めていたジャン・トッド氏。

モータースポーツ界のトップを歴任してきたトッド氏とリシャールミルは、かつてドライビングウォッチ(Ref.RM 036)の開発でコラボレーションを行なっており、それが縁となってリシャールミルとミシェル・ヨーの出会いが生まれたそうです。

「還暦を過ぎてもノースタントで激しいアクションをこなす、エレガントな美人女優」という唯一無二のアイデンティティを持つミシェル・ヨー。確かに、リシャールミルのフィロソフィーを表現するのに、これほど適した女性も中々いないでしょう。

RM 036 トゥールビヨン ジャン・トッド

*出典元:https://www.richardmille.com/

ミシェル・ヨーの夫、ジャン・トッド氏の名を冠したコラボレーションモデル。ブランドのアイコンともいえるトノー型フォルムに、着用者にかかる重力加速度(G値)を計測して表示する機構を備えた、リシャールミル トゥールビヨン ジャン・トッド(Ref.RM 036)。急激な減速時に生じる「G」を12時位置にあるインジケーターで表示し、ドライバーの安全性(緑=安全/赤=危険)を視認することが可能です。

参考定価:63,140,000円(税抜)

さて、前置きが長くなりましたが、ここからはミシェル・ヨーのリシャールミルコレクションをご紹介して参りましょう。

RM 26-02 トゥールビヨン イーヴィルアイ

*出典元:https://www.thejewelleryeditor.com/

災厄や不幸をもたらすと言われる「邪眼」をモチーフとした、リシャールミル トゥールビヨン イーヴィルアイ(Ref.RM 26-02)。敢えて不吉な題材が選ばれたのは、リシャールミルの「メメント・モリ(死を忘れるな=今を生きろ)」というスピリットを表現するため。

グランフーエナメル技法を何度も繰り返して表現された、忌まわしくも繊細な「眼」と燃え盛る「炎」を携えた最先端のトゥールビヨンウォッチは、いわば「テクノロジーとスピリチュアルの一体化」を具現したものであり、最新技術を駆使して人間の心を表現する「映画芸術」との共通点も強く感じさせる一本です。

参考定価:66,000,000円(税込)

RM 19-02 トゥールビヨン フルール

*出典元:https://www.everythingzoomer.com/

フランス語で「花」を意味する名が付けられた、リシャールミル トゥールビヨン フルール(Ref.RM 19-02)は、ブランド初のオートマタ・フライングトゥールビヨン。マグノリアの花が五分おきに開閉し、花弁に包まれたフライングトゥールビヨンがせり出してくる仕組みとなっています。

装飾を手掛けたのは、ヴァンクリーフ&アーペルや、カルティエ、ヴァシュロンコンスタンタンなどとのコラボレーションで知られる彫金界の雄オリビエ・ボーシェ。数々の高級腕時計ブランドとのコラボで培った彫金やエナメル技法が惜しげもなく使われており、イブニングドレス姿のミシェル・ヨーをより一層エレガントに見せてくれています。

参考定価:115,500,000円(税込)

RM 051 トゥールビヨン フェニックス ミシェル・ヨー

*出典元:https://www.terra.com.br/

中国の歴史において皇后を象徴するフェニックス(鳳凰)をモチーフにするなど、ミシェル・ヨーのアイデアがふんだんに反映された、世界18本限定のシグネイチャーモデル リシャールミル トゥールビヨン フェニックス ミシェル・ヨー(Ref.RM 051)。古来より中国では「洞察力」や「インスピレーション」の源と言われているブラックオニキスを地板に用いることで、華やかさと共に、女性が持つ生命力と聡明さをも表現しています。

ただ強いだけでなく、知性や信念に溢れた女闘士を演じ続けてきた女優、ミシェル・ヨーのアイデンティティをこれ以上なく表現した、まさに「ミシェル・ヨーの、ミシェル・ヨーによる、ミシェル・ヨーのための腕時計」と言っていいでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

映画界に入る前にはバレエや振付を学んでいただけあり、アクションの所作にもエレガンスを感じさせるミシェル・ヨー。歳と共に雰囲気も柔らかくなってきた近年の演技では、その強さや美しさにチャーミングさが加味され、女優としての進化をみせています。

彼女がガチのアクション女優だった『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』(1997)『グリーン・ディスティニー』(2000)の頃には、こんなにもチャーミングな魅力を感じさせる女優になるなんて、思ってもみませんでした。

*出典元:https://www.backstage.com/

そして還暦を過ぎた今、期待の新作『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』(2022)でコメディエンヌとしての才能も大きく開花。今後も数多くの映画で、新しく魅力的なミシェル・ヨーの演技を見せてくれることは間違いないでしょう。

強く、美しく、エレガントで、常に新しい自分に生まれ変わっていく「フェニックス」女優ミシェル・ヨー。早くから彼女と強い絆を結んできたリシャールミルの慧眼は、さすがと言わざるを得ません。

さて、ミシェル・ヨーのオスカー獲得が期待される第95回アカデミー賞授賞式は3月12日(現地時間)。彼女は見事オスカーの栄冠に輝くのか!?今から期待して待ちたいと思います。

ではまた!

Actor's watch