皆さん、こんばんは。

以前のコラムで、今月上旬(2022年5月)にスイス:ジュネーブで開催された”世界三大オークションハウス”PHILLIPS(フィリップス)、CHRISTIE’S(クリスティーズ)、Sotheby’s(サザビーズ)の注目時計を取り上げました。

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今回は2022年5月10日に開催された【Sotheby’s(サザビーズ)】”Important Watches: Part I”の結果から、予想落札金額と実売金額との差(上昇率)が大きかったモデルの上位TOP10をランキング形式でご紹介したいと思います。一体どのモデルがランクインしたのでしょうか?是非最後までお楽しみください!

*価格については、オークションの落札価格に手数料(26%)が入った金額となっております。
*日本円につきましては、オークション開催直近レートを参照しております。
*CHF(スイス・フラン)=133.30円換算
*画像は全てSotheby’sを参照しています。

【※文中に出てくる用語について】
*LOT(ロット):オークション出品物に付けられた番号。競売はこのロット番号の順に行われる。
*Estimate(エスティメート):各オークション会社が想定している『落札予想価格』。

【Important Watches: Part I】予想落札金額越え!TOP10ランキング

第10位 ■LOT.83
【Patek Philippe】
『Nautilus』「Ref.3800/1J」

Point
1982年から2005年頃まで製造されていた『ノーチラス』「Ref.3800」。38mmという使い勝手の良いサイズは、腕馴染みが良く、日本国内の方にも人気があります。カレンダーディスクを見るとお判りいただけますが、こちらは初期仕様の「黒背景に白文字仕様(後期は白背景に黒文字仕様)」の個体です。また、バックルも年代により仕様が異なるのですが、初期のプレートシングルクラスプ(中期は穴空きシングルクラスプ、後期は観音開きクラスプ)です。初期仕様、且つ個体数が少ない金無垢モデルということも評価され、1000万円を超える落札価格となったのではないでしょうか。

Estimate : CHF 30,000 – 50,000
SOLD:CHF 88,200(JPY 11,757,060)
上昇率:176%

【出典】サザビーズ

第9位 ■LOT.99
【Patek Philippe】
『Nautilus』「Ref.5712/1A-001」

Point
2005年から2006年まで生産されていた前モデル「Ref.3712」に代わり、2006年に『ノーチラス』誕生30周年記念モデルとして発売されたプチコンプリケーション「Ref.5712」。人気の三針モデルである「Ref.5711」に比べ、相対的にプレミアム感がやや低く、お得感があること、デザイン面・機能面が優れている点や個体の状態なども評価されたものと思われます。

Estimate : CHF 70,000 – 90,000
SOLD:CHF 163,800(JPY 21,834,540)
上昇率:182%

【出典】サザビーズ

第8位 ■LOT.101
【Patek Philippe】
『Nautilus』「Ref.5711/1A-010」

Point
2006年に『ノーチラス』誕生30周年記念モデルとして登場した「Ref.5711」。残念ながら、2021年にディスコンとなってしまいました。供給量が少ないのはもちろん、こちらはギャランティーが2020年と高年式で、そちらの影響もあり高値での落札となりました。

Estimate : CHF 70,000 – 100,000
SOLD:CHF 182,700(JPY 24,353,910)
上昇率:183%

【出典】サザビーズ

第7位 ■LOT.85
【Patek Philippe】
『Nautilus』「Ref.3800/1A」

Point
1982年から2005年頃まで製造されていた『ノーチラス』「Ref.3800」。第10位で18KYGの「Ref.3800」をご紹介しましたが、同モデルのステンレス製の個体になります。こちらも初期仕様のカレンダーディスク「黒背景に白文字仕様」、バックルも「初期のプレートシングルクラスプ」です。「Ref.5711」の価格高騰も起因していると思いますが、初期仕様の根強い人気が伺えますね。

Estimate : CHF 20,000 – 40,000
SOLD:CHF 75,600(JPY 10,077,480)
上昇率:189%

【出典】サザビーズ

第6位 ■LOT.84
【Patek Philippe】
『Nautilus』「Ref.3800/1J」

Point
第6位にして、すでに三本目の『ノーチラス』「Ref.3800」。こちらはシャンパンダイヤルで同じく「カレンダーディスク」「クラスプ」ともに初期の仕様です。しかしながら、お気づきの通り、ダイヤル6時位置に「GUBELIN(ギュブラン)」の印字がある、ダブルネームの個体です。スイスのルツェルンに本社を構える名門の高級宝飾店「ギュブラン」。【パテックフィリップ】や【オーデマピゲ】とのダブルネームを出すことを許された数少ないジュエラーで、その希少性から高額落札となりました。

Estimate : CHF 30,000 – 50,000
SOLD:CHF 113,400(JPY 15,116,220)
上昇率:227%

【出典】サザビーズ

第5位 ■LOT.35
【Piaget】
『Gouverneur Grande Sonnerie』

Point
こちらは天才時計技師と言われる”フランソワ ポール ジュルヌ”が、自身のブランドを立ち上げる以前に【ピアジェ】の依頼を受け、製作した『グーヴェルヌール グラン ソヌリ』。大きな特徴として消音機能がついており、消音とチャイム音の二つのモードで時計を動作させることができます。彼はこのモデルの製作によって得た資金で、自身のブランドを立ち上げたと言われており、歴史的に重要なモデルと言えるでしょう。

Estimate : CHF 40,000 – 80,000
SOLD:CHF 226,800(JPY 30,232,440)
上昇率:284%

【出典】サザビーズ

第4位 ■LOT.115
【Audemars Piguet】
『Royal Oak”New York Boutique Edition”』「Ref.26014SN.OO.D002CR.01」

Point
2003年にニューヨークの東57番街40番地に初の旗艦店をオープンしたことを記念して販売されたモデル「Ref.26014SN.OO.D002CR.01」。ブラックPVD加工が施されたケースとラバーストラップの組み合わせが目を引きますね。ケースバックにはニューヨークブティックの外観と住所が刻印されています。ブラックPVD加工&150本限定という希少性が評価され、高額落札に至ったと思われます。

Estimate : CHF 12,000 – 18,000
SOLD:CHF 63,000(JPY 8,397,900)
上昇率:350%

【出典】サザビーズ

第3位 ■LOT.17
【Rolex】
『Oyster Royal”Eastern Arabic numerals”』「Ref.6444」

Point
シリアの国民主義者であり外交官、サウジアラビア大使、歴史家、詩人として幅広く活躍した”ハイルッディーン・ズィリクリー(Khayr al-Dīn al-Ziriklī)”。こちらの『オイスターロイヤル』は彼が所有していたもので、親族がオークションに出品したようです。『オイスターロイヤル』は1933年頃に発売開始。この個体は1958年製造のもので、「Stern Freres」によって作られた美しいエナメルダイヤルが特徴です。ちなみに、この「Stern Freres」は【ロレックス】の『サブマリーナー』のダイヤルでもお馴染みの「スターン」であり、【パテックフィリップ】の現オーナー一族の名前でもあります。希少性もさることながら、エナメルダイヤルの状態も良好だったようで、その点も高額落札に繋がったポイントだと思われます。

Estimate : CHF 20,000 – 30,000
SOLD:CHF 126,000(JPY 16,795,800)
上昇率:420%

【出典】サザビーズ

第2位 ■LOT.72
【Audemars Piguet】
『Royal Oak”Jumbo”』「Ref.5402 」

Point
こちらは、天才時計デザイナー”ジェラルド ジェンタ”が唯一所有していた『ロイヤルオーク』。【オーデマピゲ】のアーカイブによれば、この時計が1978年5月15日に、彼本人が購入した記録が残っているようです。また、写真を見てお気づきになられた方もいるかもしれませんが、コンビ仕様にも関わらず、ブレスレットのセンターリンクに18Kイエローゴールドが使用されておらず、ベゼルのみが金無垢となっています。愛妻である”イヴリン ジェンタ”によると、”ジェラルド ジェンタ”自身がベゼルをアトリエで製作し、この時計に取り付けたそうです。2022年に50周年を迎えた『ロイヤルオーク』。その変遷を辿れば、この個体がいかに貴重で、いかに歴史的に重要な意味を持つか、お判りいただけるかと思います。

Estimate : CHF 300,000 – 500,000
SOLD:CHF 2,107,000(JPY 280,863,100)
上昇率:421%

【出典】サザビーズ

第1位 ■LOT.32
【Rolex】
『Daytona “FIFA World Cup 2010 – Netherlands Edition”』「Ref.116509H」

Point
2010年のサッカーワールドカップ(南アフリカ大会)に出場したオランダ代表のために製作された『デイトナ』「Ref.116509H」。オランダ代表は、アムステルダムの【ロレックス】正規店「ガッサン ジュエラーズ」を通して、30本の記念ウォッチの製作を依頼したようです。【ロレックス】はこれを受け入れ、オランダ代表のユニフォームに使用されているオレンジをダイヤルの差し色に使った、18KWG(ホワイトゴールド)製の『デイトナ』を製作しました。制作内訳は、ブレスレット仕様が15本、レザーストラップ仕様が15本の計30本で、出場した選手とスタッフに贈られたとのことです。ケースバックには各選手の名前と背番号が刻まれており、この個体がどの選手の刻印なのか気になるところですね。

Estimate : CHF 60,000 – 100,000
SOLD:CHF 441,000(JPY 58,785,300)
上昇率:441%

【出典】サザビーズ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

結果を見る限り【パテックフィリップ】『ノーチラス』の根強い人気を感じるとともに、高騰している現行モデルを購入するより、ディスコンになっている同モデルに目を向ける方が増えてきていることを実感しました。また、ブランドやモデル、歴史的意義を持つ個体に付加価値を見出した方が多かったようにも思います。

今後も“世界三大オークションハウス”、【PHILLIPS(フィリップス)】【CHRISTIE’S(クリスティーズ)】【Sotheby’s(サザビーズ)】のオークション結果を適宜ご紹介していきますので、是非楽しみにお待ちいただければと思います。

ではまた!

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