皆さん、こんにちは。

以前のコラムで、今月上旬(2022年5月)にスイス:ジュネーブで開催された“世界三大オークションハウス”PHILLIPS(フィリップス)、CHRISTIE’S(クリスティーズ)、Sotheby’s(サザビーズ)の注目時計を取り上げました。

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今回は、2022年5月9日に開催された【CHRISTIE’S(クリスティーズ)】”Rare Watches : Featuring The Kairos Collection Part I”の結果から、予想落札金額と実売金額との差(上昇率)が大きかったモデルの上位TOP10をランキング形式でご紹介したいと思います。一体どのモデルがランクインしたのでしょうか?是非最後までお楽しみください!

*価格については、オークションの落札価格に手数料(26%)が入った金額となっております。
*日本円につきましては、オークション開催直近レートを参照しております。
*CHF(スイス・フラン)=133.30円換算
*画像は全てCHRISTIE’Sを参照しています

【※文中に出てくる用語について】
*LOT(ロット):オークション出品物に付けられた番号。競売はこのロット番号の順に行われる。
*Estimate(エスティメート):各オークション会社が想定している『落札予想価格』。

【Rare Watches : Featuring The Kairos Collection Part I】予想落札金額越え!TOP10ランキング


第10位 ■LOT.11
【Rolex】
『DAYTONA』「Ref.116500LN」

Point
2016年に発表された現行モデルの『デイトナ』「Ref.116500LN」。クリスティーズに出品された実績がある個体という点を加味しても、まさかエスティメートから277%も高額での落札となるとは、、、それだけ完成されたデザイン、機能を備えた人気モデルだという証ですね。2023年のディスコン期待も含んでの高額落札だったのかもしれません。

Estimate : CHF 15,000 – 25,000
SOLD:CHF 69,300(JPY 9,237,690)
上昇率:277%

【出典】クリスティーズ

第9位 ■LOT.134
【JAEGER-LECOULTRE】
『REVERSO RÉPÉTITION MINUTE REPEATER』「Ref.270.2.73」

Point
1991年レベルソ生誕60周年を記念して、【ジャガー ルクルト】は各500本限定でピンクゴールド製のシリーズを発売し始めました。そのうちの一本がこちらの『ミニッツリピーター』で、1994年にリリースされたシリーズ三番目のモデルとなります。長方形の口径で『ミニッツリピーター』を製作することは容易ではなく【ジャガールクルト】の技術力の高さが伺えます。また、他の金無垢素材と響きが異なり、美しい音色にする為にピンクゴールドを採用。是非とも実際に音色を聴いてみたいですね。『レベルソ』といえば反転ケースが特徴ですが、このモデルの裏面はダイヤルレスとなっています。

Estimate : CHF 12,000 – 18,000
SOLD:CHF 50,400(JPY 6,718,320)
上昇率:280%

【出典】クリスティーズ

第8位 ■LOT.14
【ROLEX】
『DAYTONA “CHRYSOPRASE”』「Ref.116509」

Point
『デイトナ』でも人気のビーチシリーズ。このシリーズは「ターコイズ」「ピンクシェル」「イエローシェル」そして今回高額で落札された「クリソプレーズ」の四つの天然ダイヤルが存在します。本来、『デイトナ』ビーチはアリゲーターストラップ仕様のみですので、こちらは【ロレックス】でダイヤル交換された個体です。「LOT.15」にも交換ダイヤルの「ターコイズ」が出品されていましたが、そちらよりも高額落札されたことに驚きを持たれた方も多いのではないでしょうか。

Estimate : CHF 50,000 – 70,000
SOLD:CHF 201,600(JPY 26,873,280)
上昇率:288%

【出典】クリスティーズ

第7位 ■LOT.133
【CARTIER】
『CRASH “LONDON”』

Point
1967年に【カルティエ】ロンドンで誕生したこちらは、カルティエの顧客から「事故で変形した時計を修理して欲しい」との依頼を受けたことで誕生しました。サルバトール ダリによる「記憶の固執」など、溶けた時計の絵画から影響を受けたとも言われ、当時の経営者「ジャック カルティエ」がインスピレーションを得て『クラッシュ』を形にしたそうです。それにしても”LONDON”表記のダイヤルとはいえ、ここまでの高額落札になるのは驚きですね。

Estimate : CHF 180,000 – 280,000
SOLD:CHF 819,000(JPY 109,172,700)
上昇率:292%

【出典】クリスティーズ

第6位 ■LOT.94
【PATEK PHILIPPE】
『AQUANAUT TRAVEL TIME “ADVANCED RESEARCH”』「Ref.5650G-001」

Point
2017年に世界限定500本で発売されたこちらは、【パテック フィリップ】の”ティアリースターン”社長が、父である”フィリップスターン”会長から与えられた命題《トゥールビヨン機構を使わずにそれに匹敵する精度の時計を作ること》を実現したことにより誕生しました。基本的にオープンワークを作らない【パテック フィリップ】ですので、やはり9時位置のオープンワークに目を奪われる方も多いのではないでしょうか。デザイン性、機能性、希少性と全てにおいて高額落札となったことが納得できる、唯一無二のモデルですね。

Estimate : CHF 150,000 – 250,000
SOLD:CHF 756,000(JPY 100,774,800)
上昇率:302%

【出典】クリスティーズ

第5位 ■LOT.142
【AUDEMARS PIGUET】
『ROYAL OAK “TROPICAL DIAL”』「Ref.14790ST」

Point
ケース径36mmという、後継機「Ref.15300」とは異なるサイズが特徴の『ロイヤルオーク』「Ref.14790ST」。こちらは、ダイヤルが経年劣化で変色した、通称「トロピカル」と呼ばれている珍しい個体です。トロピカルダイヤルの流通量自体少ないのですが、ここまで均一に綺麗に変化しているのは非常に珍しく、予想を超える高額落札となったものと思われます。

Estimate : CHF 15,000 – 30,000
SOLD:CHF 110,880(JPY 14,780,304)
上昇率:370%

【出典】クリスティーズ

第4位 ■LOT.35
【ROLEX】
『CELLINI “KING MIDAS”』「Ref.4915」

Point
1960年代から1970年代の【ロレックス】販売店で売られていた時計の中で、群を抜いて高価なモデルだったと言われる『ミダス』。 『ミダス』とは、ギリシャ神話に由来する「手に触れるものを金に変える力を与えられたフリギアの王」の意を持ちます。ケースサイドに”KING MIDAS”の刻印がされていますが、1970年代からダイヤル表記をギリシャ語の『ミダス』から『チェリーニ』に変更したようです。トリドールを彷彿とさせるストライプのコンビネーション、アシンメトリックなケース形状を持つこちらは”ジェラルドジェンタ氏”がデザインしたと言われています。そして皆さま!お気づきになられたかもしれませんが、こちらの『チェリーニ』は、今話題のレフトハンド仕様となっています。国内外探してもなかなか見つからない極めて希少なモデルということもあり、高額落札となりましたね。

Estimate : CHF 6,000 – 10,000
SOLD:CHF 47,880(JPY 6,382,404)
上昇率:479%

【出典】クリスティーズ

第3位 ■LOT.132
【CARTIER】
『TANK CINTRÉE』

Point
『サントレ』はフランス語で「湾曲」を意味し、正面から見ると直線的なフォルム、サイドから見ると手首に馴染むような湾曲フォルムとなっているモデルです。2021年で100周年を迎えた『サントレ』は、「Ref.WGTA0057」を世界限定150本で発表しましたが、全て発売前に予約完売したほどの人気を誇ります。こちらは1928年11月8日、ロンドンの「THE EMPIRE THEATRE」のオープニングの際に、「メトロ ゴールドウィン メイヤー(米国の映画スタジオ)の仲間により、ハリー ポートマン(エンパイアシアターのディレクター)に贈られました」とケースバックに刻印されている個体。1928年頃の製造個体でありながら、保存状態が良かったことも高額落札の理由となったと思われます。

Estimate : CHF 12,000 – 18,000
SOLD:CHF 88,200(JPY 11,757,060)
上昇率:490%

【出典】クリスティーズ

第2位 ■LOT.131
【CARTIER】
『CLOCHE』

Point
1920年に誕生した、非対称ケースが特徴の『クロシュ ドゥ カルティエ』。『クロシュ』とは「鐘」の意味で、時計を水平に置いた時に「卓上ベル」を思わせるデザインから名付けられました。こちらは、1990年頃に限定200本で販売された個体です。流通量も少なく極めてレアな点が評価され、高額落札に繋がったようです。

Estimate : CHF 8,000 – 12,000
SOLD:CHF 69,300(JPY 9,237,690)
上昇率:577%

【出典】クリスティーズ

第1位 ■LOT.1
【Rolex】
『OYSTER PERPETUAL “TURQUOISE”』「Ref.124300」

Point
2021年の年末に【パテックフィリップ】×【ティファニー】の『ノーチラス』が発売され人気が爆発した”ターコイズカラー”。それまでも【ロレックス】『オイスターパーペチュアル』のカラーダイヤル(特にターコイズ)自体が高い水準で推移していましたが、2021年末を境に実勢相場が一気に上昇しました。今回落札された「Ref.124300」は、2022年にディスコンになった41mmのケースサイズ。直後のオークションであったことで高値がついたものと思われます。今回の”Rare Watches : Featuring The Kairos Collection Part I”で、エスティメートからの上昇率が一番高かったことに、数字を集計して驚いたというのが本音です。

Estimate : CHF 6,000 – CHF 10,000
SOLD:CHF 69,300(JPY 9,237,690)
上昇率:693%

【出典】クリスティーズ

まとめ

いかがでしたでしょうか。

極めてレアなモデルから現行モデル、順当なモデルからダークホース的なモデルまで、面白い結果になったと思います。また、今回の”世界三大オークションハウス”のオークション結果の中で、【CHRISTIE’S(クリスティーズ)】の結果が最も現在の時計情勢を反映しているようにも感じました。

引き続き、同時期に開催されたSotheby’s(サザビーズ)の結果についても記事にしていきますので、是非お楽しみにお待ちください。

ではまた!

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