皆様こんばんは!

3月末から4月頭にかけて、《Watches and Wonders Geneva 2022》をはじめ、各ブランドの新作発表が続き、時計業界はその話題で持ち切りでしたね。コミット銀座(以下:当店)でもコラムやYouTubeでご紹介させていただき、沢山の反響を頂きました。

中でも、一際注目度が高かったブランドと言えば、やはり【ロレックス】ですね。今回はそんな【ロレックス】で一番の目玉となったモデル

『GMTマスターⅡ』
※新色のグリーン×ブラックベゼルに加え、レフトハンド仕様

こちらについて、改めて『GMTマスター』というモデルにフォーカスし、深堀していきたいと思います。Part1では『GMTマスター』、Part2では『GMTマスターⅡ』を、当店で『GMTマスター』を語ると言えばこの男!『ねもち』こと鑑定士【根本 翼】がご紹介していきます。

⇩⇩『ねもち』の『GMTマスター』愛が知りたい方は⇩⇩

『GMTマスター』とは

24時間針を使用し、異なるエリアの時間帯を瞬時に把握する事が出来る高性能モデル『GMTマスター』は、2ヶ所のタイムゾーンを把握でき、対して『GMTマスターⅡ』は3ヶ所のタイムゾーンを把握することができます。赤×青ベゼルを筆頭に、特徴的なツートーンカラーのベゼルが、他のモデルとは異なる非常に魅力溢れるモデルとして親しまれています。

『GMTマスター』の系譜

「Ref.6542」 製造期間1955年〜1959年

1950年代、世界中に路線網を広げていた「パン・アメリカン航空(パンナム航空)」。その国際線旅客機の運行を行うパイロットは、2つのタイムゾーンを把握することが可能な腕時計を求めていました。

そして、当時『エクスプローラー』や『サブマリーナー』を発表し注目を浴びていた【ロレックス】に、パイロットの為の腕時計を開発依頼したことで1955年に誕生したのが、こちらの初代『GMTマスター』「Ref.6542」です。

回転ベゼルに「時差」という今までにない発想を加えた事により、「24時間針」と「24時間ベゼル」を駆使することで、2つのタイムゾーンを把握できる仕組みを実現させました。また、海外旅行を楽しむ富裕層からの要望により、金無垢モデルの「Ref.6542/8」も展開され、そのステータス性も確立させていきます。

※1958年、「パン・アメリカン航空」の重役用に製造された「Ref.6542」の白文字盤

「Ref.6542」において最も特徴的なパーツ「ベイクライトベゼル」は耐久性に問題があり、後期製造の個体からは「アルミ素材」に変更になります。

「ベイクライトベゼル」が装着された「Ref.6542」は、製造期間が極端に少ないこともあり、現代において状態の良い個体を見つけるのは非常に困難で、希少価値が高まっています。

「Ref.1675」 製造期間1959年〜1979年

誕生から20年に渡り生産されたロングセラーモデル「Ref.1675」。前モデル「Ref.6542」との変更点は、ベゼルが完全にアルミ素材になったこと。リューズガードが備わり耐久性が強化されたことが挙げられます。

約20年間製造された中で様々なマイナーチェンジを繰り返し、初期ロットの個体に存在する「サークルミラーダイヤル」「ミラーダイヤル」「マットダイヤル」を筆頭に、針やベゼルも細分化されるなど、マニアたちはその細かな仕様に一喜一憂しております。

第一世代同様、金無垢モデル「Ref.1675/8」も存在。

※リューズガード無しの「Ref.1675/8」

ステンレスモデルの「Ref.1675」はリューズガードが付いておりますが、「Ref.1675/8」は初期製造分のみリューズガード無しのケースを採用していました。

後のマイナーチェンジにより、リューズガード付きとなりますが、前モデルの「Ref.6542/8」から基本的なデザインは受け継ぎ、「オイスターブレス(3連)」「ジュビリーブレス(5連)」の2種類のブレスタイプとなり、より高級感溢れるモデルとして人気を博しました。

1960年代後半には『GMTマスター』初となるコンビモデル「Ref.1675/3」が誕生します。

文字盤のラインアップは2種類あり、マットな質感のブラウンとブラックが存在します。中でもブラウンダイヤルはチョコレートカラーのような落ち着きのあるブラウンで、ベゼルのブラウン×ゴールドと非常にマッチしており、現在も高い人気を誇ります。

※「Ref.1675/3」黒文字盤

「Ref.16750」 製造期間1980年〜1988年

約8年間製造された第三世代の5桁モデル『GMTマスター』「Ref.16750」は、基本的なデザインは「Ref.1675」と変わりませんが、ムーブメントが「Cal.3075」に変更されます。前モデル「Ref.1675」に搭載されていた「Cal.1570」と比べ、ハイビート仕様で精度の向上が図られました。

更に特筆すべき点として、カレンダーのクイックチェンジ機構が備えられた事により、実用性が大幅に向上。その人気は確固たるものとなっていきます。


※「Ref.16753」フジツボインデックス

前モデルに引き続き、コンビモデル「Ref.16753」も文字盤の仕様がブラックとブラウンでラインアップされます。

初期個体に存在するインデックスがアップライド仕様の通称”フジツボ”は、このモデル以降登場する事は無くなり、現在はその流通量の少なさも相まって、需要が高まっています。

「Ref.16700」 製造期間1988年〜2000年

約12年間製造された『GMTマスター』の最終モデル「Ref.16700」は、基本的なデザインを継承しつつ、より現代的な腕時計として進化を果たしました。

風防がプラスチックからサファイアクリスタルになり、インデックスにはメタルフレームが付いたことで、見た目(外装面)でのアップデートもより際立ち、後期製造個体からはルミノバ夜光が採用されるなど、より実用面での向上も図られます。

また、前モデルまでは金無垢モデルやコンビモデルが存在しましたが、第四世代の『GMTマスター』は、唯一ステンレスモデルのみの展開。その理由は、既に『GMTマスターⅡ』が誕生しており、金無垢モデルやコンビモデルが移行していた為であったとされています。

★『GMTマスター』と「チャックイエーガー」

『GMTマスター』を語る上で欠かせない著名人「チャックイエーガー」。世界初の音速の壁を突破した偉大なパイロットです。

”XS-1”と呼ばれる戦闘機に乗り、9回目のチャレンジにしてマッハの世界に到達。彼がたたき出したマッハ1.06の記録は人類初の快挙であり、そのときに着用していた時計は、彼が自ら購入したという【ロレックス】『オイスターパーペチュアル』でした。

音速を超えた記念すべき日から50年後となる1997年10月14日、彼は再び音速の壁に挑戦。
この時【ロレックス】が敬意を表し製造した特注品、『GMTマスター』チャックイエーガーモデルが彼の腕に着けられていました。

その後「ザ・リアルマッコイズ社」によって、【ロレックス】×「チャックイエーガー」のダブルネームモデルが、本数限定で販売されました。(※ロレックスが正式に認めたものではないようです)

『GMTマスター』 「Ref.16700」赤/青ベゼル・黒/黒ベゼル 各50本
『GMTマスターII』「Ref.16710」黒/赤ベゼル 50本

1999年にはセカンドモデルとして、裏蓋の刻印が異なるなどのマイナーチェンジが加えられ、それぞれ150本製造・販売されました。現在では市場に出回ることが非常に少ない希少モデルとなっております。
※当店にも赤青ベゼルの「チャックイェーガー」を展示しております。ご興味のある方はご来店お待ちしております。

まとめ

『GMTマスター』について深堀りしてみましたがいかがでしたでしょうか?

1955年に登場し、2000年頃まで続いたロングセラーモデル『GMTマスター』は、その歴史も深く、掘れば掘るほど興味が湧いてくるモデルだったかと思います。次回は『GMTマスターⅡ』について深堀していきますので、是非お楽しみにお待ちください。

今回もこの記事を見ていただいたことで、”『GMTマスター』に興味を持った!”という方が一人でも多く増えて下されば幸いです。

ではまた!

コミットtv 八木コラム