映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第93弾の今回は、「映画に登場したジャガールクルトの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://www.jaeger-lecoultre.com/

アントワーヌ・ルクルトによる1833年の創業以来、430以上の特許1300種類にも上るキャリバーを開発し、スイス時計業界きっての「技術屋」と呼ばれるジャガールクルト。かつてはパテックフィリップ、オーデマピゲ、ヴァシュロンコンスタンタンなど、名だたる腕時計ブランドにもムーブメントを供給していた時代もあったことからわかる通り、その精度や信頼性は折り紙付きと言っていいでしょう。

2000年にはヴァシュロンコンスタンタンやカルティエなどと同じ「リシュモングループ」傘下のブランドとなり、「レベルソ」「ポラリス」「メモボックス」などの名機をモダンにアップデートしたモデルを積極的にリリース。現代では腕時計の歴史を現代に受け継ぐ役割も果たしています。

今回の「Actor’s Watch」は、そんなジャガールクルトの時計が登場する映画に迫っていきたいと思います。

トーマス・クラウン・アフェアー

THE THOMAS CROWN AFFAIR(1999)

*出典元:https://m.imdb.com/

ニューヨークで投資会社を経営する富豪、トーマス・クラウン(ピアーズ・ブロスナン)の正体は、美術品を専門とする窃盗犯。ある日、美術館からモネの名画が盗まれる事件が発生。保険会社の敏腕調査員キャサリン・バニング(レネ・ルッソ)は、トーマス・クラウンが真犯人と睨む。

手柄とキャリアの為、名画窃盗の証拠を挙げようと大胆に近づいていくキャサリンと、彼女の挑戦を受けて立つトーマスだが、お互いの実力を認め合うに従い、次第に惹かれていく二人。盗まれた名画と恋の行方は、、、?

*出典元:https://www.reddit.com/

スリルを求めて危ない仕事に手を染める大富豪、トーマス・クラウンの活躍を描いたスタイリッシュな犯罪映画『トーマス・クラウン・アフェアー』(1999)は、1968年に公開されたステーィブ・マックイーン主演作『華麗なる賭け』のリメイク作。

本作でトーマス・クラウンを演じたピアース・ブロスナンは、劇中ではジャガールクルト レベルソ デュオ(Ref.270.1.54)を着用しています。ちなみにオリジナルの『華麗なる賭け』では、スティーブ・マックイーンはカルティエ タンク サントレを着用しており、これらはいずれもエレガントなレクタンギュラーケース(長方形ケース)の腕時計。

成功したビジネスマンでありながら、危険な魅力も兼ね備えたトーマス・クラウン。優美さと個性を兼ね備えたレベルソやタンクが、彼のキャラクターを上手く表現しています。

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イースタン・プロミス

EASTERN PROMISES(2007)

*出典元:https://www.truemythmedia.com/

クリスマスを目前に控えたある夜、病院に勤める助産婦アンナ(ナオミ・ワッツ)の元に、身元不明の臨月の少女が運び込まれてくる。女の子を生んだ後に息を引き取った少女の所持品は、ロシア語で書かれた日記と、そこに挟まったロシア料理店のショップカード。

アンナの親戚のロシア人が日記を読むと、そこにはロシアンマフィアが関わる人身売買の詳細が記されていることがわかった。生まれた子供の為、なんとか少女の身元を割り出そうとするアンナは、ショップカードを頼りにマフィアに接触。日記と引き換えに少女の身元を教えるよう取引を持ち掛ける。取引の場に現れたマフィアの運転手ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)は、アンナに事件から手を引くよう忠告するが、アンナはミステリアスで時折優しさを見せるニコライに次第に惹かれていく。

*出典元:https://bamfstyle.com/

スキャナーズ』(1981)や『ザ・フライ』(1986)といった名作ホラー映画で知られるデヴィッド・クローネンバーグ監督が贈る、ミステリアスなバイオレンス映画『イースタン・プロミス』(2007)。

クローネンバーグ監督らしい皮膚感覚や身体性表現に溢れた本作では、謎めいたロシアンマフィアのニコライを演じるヴィゴ・モーテンセンが、ジャガールクルト マスターコントロール(Ref .Q1398120)を着用しています。

圧倒的な不気味さと強さを感じさせながら、なぜか目立たぬよう、自分を押し殺すように立ち振る舞う謎の男ニコライ。個性ではなく、スタンダードで実直な印象を演出するマスターコントロールが、彼の正体を知るヒントになるかもしれません。

マラヴィータ

THE FAMILY(2013)

*出典元:https://neilsentertainmentpicks.com/

フランスはノルマンディーの田舎町に、アメリカ人のフレッド・ブレイク(ロバート・デ・ニーロ)とその一家が引っ越してくる。彼らの正体は、FBIの証人保護プログラムにより新しい名前と経歴を得て足を洗った元マフィアだった。引っ越す先々で住民とトラブルを起こし、世界各地を転々とする彼らに、保護を担当するFBI捜査官、スタンフィールド(トミー・リー・ジョーンズ)は心底ウンザリ。

そんな中、かつてフレッドの裏切りによって刑務所にブチ込まれた犯罪者ルケージ(スタン・カープ)が差し向けた殺し屋たちが、ブレイク一家を襲撃するためノルマンディーに集まりつつあった。

*出典元:https://www.spotern.com/

レオン』(1994)や『フィフス・エレメント』(1997)のリュック・ベッソン監督が贈るクラム・コメディ映画『マラヴィータ』(2013)。

FBIに保護してもらっている身にも関わらず、気に入らない相手(アメリカ人に偏見を持つフランス人など)がいれば、容赦なくボコボコにしてしまうハチャメチャ一家を描いた本作では、一家の長たる父親フレッドを演じるロバート・デニーロが、ジャガールクルト メモボックスを着用しています。

2022年の現在でもジャガールクルトの現行コレクションに存在する、世界初の自動巻機械式アラームウォッチ「メモボックス」ですが、本作に登場するのは1960年代頃のヴィンテージと思われます。

ジャッジ 裁かれる判事

THE JUDGE(2014)

*出典元:https://thehoya.com/

依頼人の為ならダーティな手法も厭わないヤリ手弁護士、ハンク・パーマー(ロバート・ダウニーJr)は、母が亡くなった知らせを受けて故郷を訪れる。地元で判事を務め、人々の信用を集めていた父ジョセフ(ロバート・デュヴァル)とは折合いが悪く、ほとんど絶縁状態だったハンクは、母の葬儀が終わると早々に飛行機で帰るが、その機上で父が殺人容疑で逮捕されたことを知る。

かつて少女を殺害して20年の実刑判決を受け、近ごろ出所したばかりの男を自動車で轢き殺した容疑で起訴された父は、過去にその男が関わる刑事裁判で判事を務めていた。ハンクは末期がん治療の副作用で記憶障害を起こしている父の弁護を引き受け、父の過去に迫っていく。

*出典元:https://www.lofficielmalaysia.com/

アイアンマン』(2008)のトニー・スターク役でお馴染み、ロバート・ダウニーJrがヤリ手弁護士を演じた法廷サスペンス『ジャッジ 裁かれる判事』(2014)。親子の確執を乗り越えるため、末期がんの父親の弁護を担当する彼の腕には、ジャガールクルト ディープシー マスター コンプレッサー(Ref.Q207857J)が着けられています。

ドレッシーな腕時計だと「真面目」「人権派」といった雰囲気となり、彼のキャラクターとは差異が感じられてしまいますが、伝統あるジャガールクルトの程よくスポーティなモデルを着用することで、お堅いだけではない、スパイスの効いたパーソナリティが演出されているように思えます。

ドクター・ストレンジ

DR.STRANGE(2016)

*出典元:https://www.denofgeek.com/

ニューヨークの病院で働く天才外科医、スティーブ・ストレンジ(ベネディクト・カンバーバッチ)は交通事故に遭い、両手に麻痺が残る大怪我を負う。外科医として致命的な障害を負ったストレンジは世界中のあらゆる治療法を試すが麻痺は良くならず、最後に訪れたカトマンズで謎の修行場「カマー・タージ」に辿り着く。

神秘的な力を操る指導者ワン(ティルダ・スウィントン)の元で過酷な修行を始め、やがて絶大な力を持つ魔術師として生まれ変わったストレンジ。やがて彼の前に魔術で世界を滅ぼそうとする闇の魔術師カエシリウス(マッツ・ミケルセン)が現れる。今まさに人類の存亡を賭けた戦いが始まろうとしていた。

*出典元:https://fansvoice.jp/

マーベルコミックのアメリカンヒーローが活躍する「マーベル・シネマティック・ユニバース」の第14作に当たる『ドクター・ストレンジ』(2016)。過去に名探偵シャーロック・ホームズや天才数学者アラン・チューリングを演じた経験のあるベネディクト・カンバーバッチが、元天才外科医という知性的なニューヒーローに扮しています。

愛用のジャガールクルト マスター ウルトラスリム パーペチュアル(Ref.130842J)を着け、ランボルギーニを運転している時に交通事故に遭った彼は、ヒーローになった後も、風防にヒビが入り、止まったままのこの腕時計を身に着けます。

キングスマン ファーストエージェント

THE KING’S MAN(2021)

*出典元:https://en.janbharattimes.com/

1914年のサラエボ事件に端を発する第一次世界大戦の勃発と終戦の裏には、世界に混乱を巻き起こそうとする謎の組織「闇の狂団」の暗躍と、狂団の野望を阻止せんとする名門貴族、オックスフォード公(レイフ・ファインズ)の活躍が存在した。

人命より国家の利益を優先する英国軍に嫌気が差して退役し、赤十字の活動を行なっていたオックスフォード公は、国家権力に頼らない国際諜報網の構築で世界平和を守ろうと考えていた。「闇の狂団」が引き起こした第一次世界大戦で息子を失った彼は、執事たちと共に世界中の諜報ネットワークを駆使して戦争を終結させ、「闇の狂団」の本拠地へと乗り込んでいく。

*出典元:https://quillandpad.com/

新時代のスパイ映画として大ヒットした『キングスマン』(2014)のシリーズ三作目。諜報組織「キングスマン」の設立を描いた本作では、キングスマン創設者のオックスフォード公を演じたレイフ・ファインズが、ジャガールクルト マスター ウルトラスリム キングスマン ナイフ(Ref.3402393)を着用しています。

この腕時計は、ジャガールクルトが1907年に開発した薄型キャリバーの懐中時計「クトー」(フランス語でナイフの意味)のデザインを踏襲したもの。ケースサイドがナイフのようにシャープなエッジを持っていた為、このように名づけられました。映画の舞台となる年代では、腕時計ではなく懐中時計を用いるのが正解なのですが、それを腕時計のデザインに落とし込んで着けるというのは、心憎い使い方と言えるのではないでしょうか。

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まとめ

いかがでしたでしょうか。
ジャガールクルトといえば、誰もが「レベルソ」を思い浮かべると思いますが、映画においてはレベルソだけでなく、ラウンドケースのモデルも多く見つけることができました。

オメガなら「スピードマスター」、オーデマピゲなら「ロイヤルオーク」、パネライなら「ルミノールマリーナ」、など、映画に登場する高級腕時計は、そのブランドを代表するアイコニックなモデルに偏ることがほとんどです。このように幅広いモデルが選ばれるのは、ロレックスジャガールクルトくらいではないでしょうか?

*出典元:https://www.jaeger-lecoultre.com/

ひとつひとつのモデルに歴史性があり、「技術屋」と呼ばれた機能性の高さやバリエーションが、その腕時計を着ける者の「意図」や「目的」を如実に表現する。それでいて優美さとエレガンスを兼ね備えており、スクリーンにアップで写れば実に「映える」ジャガールクルトの腕時計。

歴史があり、機能性が高く、エレガントで、着用者の内面が表現される」となれば、映画製作者の目に留まるのも当然の事。これが続く限り、ジャガールクルトの腕時計をスクリーンで目にする機会は、まだまだ増えることでしょう。

俳優が着けるべき腕時計ジャガールクルト。次にこのブランドを選ぶ俳優は誰なのか?
今後もスクリーンを注意深く見ていきたいと思います。

ではまた!

Actor's watch