映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第91弾の今回は、「ラッセル・クロウの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://www.cinematographe.it/

アカデミー作品賞にノミネートされた『L.A.コンフィデンシャル』(1997)で、正義感溢れる熱血刑事を演じて注目されたラッセル・クロウ。その後、アカデミー主演男優賞に輝く『グラディエーター』(2000)で演じたマキシマスの雄姿が記憶に残っている方も多いのではないでしょうか。

いかついルックス通り、男臭さや力強さだけでなく、繊細さをも兼ね備えた「哀愁を感じさせるパワー系俳優」という、それまでの俳優には無いスター性を確立したラッセル・クロウ。今回は、彼が劇中で着用した腕時計に注目してまいります。

アメリカン・ギャングスター

AMERICAN GANGSTER(2007)

*出典元:https://www.filmlinc.org/

キング牧師暗殺事件に世間が震撼した1968年。汚職がはびこる警察組織の中で、実直に職務を続ける堅物刑事のリッチー(ラッセル・クロウ)。真面目な職務態度が評価され、彼は麻薬取締局にスカウトされる。一方その頃、亡くなった麻薬密売組織のボスの跡目を継いだフランク(デンゼル・ワシントン)は、独自の麻薬シンジケートを開拓し、大きな成功を収めていた。

リッチーは優秀で正義感に溢れるメンバーを選出し、特別麻薬捜査班を設立。懸命の捜査により、質の高い麻薬を大量に売りさばき巨額の利益を得ていたフランクが捜査線上に浮かび上がってきたものの、警察上層部ですらフランクに買収され、犯罪の証拠は全て握りつぶされていた、、、

*出典元:https://www.vaultofculture.com/

1960年代末。麻薬ビジネスで勢力を伸ばす新興ギャングのボスと、癒着や汚職がはびこる司法当局の中で正義を貫き通す麻薬捜査官の戦いを描いた実録犯罪サスペンス『アメリカン・ギャングスタ―』(2007)。本作では、正義感溢れる「アンタッチャブル」な捜査官を演じるラッセル・クロウの腕に、ヴァシュロンコンスタンタン ジュビリー1755(Ref.85250/000G-9141)が着けられています。

ヴァシュロンコンスタンタンの創業250周年記念モデルとして、2005年に発売された限定モデル「ジュビリー1755」は、麻薬捜査官が着けるにはエレガントかつデリケート過ぎる腕時計に思えますが、休眠期間なき世界最古の腕時計ブランドの周年記念モデルという「ブランドの実直さ」がキャラクターと合致、、、というのは深読みのし過ぎでしょうか。

ナイスガイズ!

THE NICE GUYS(2016)

*出典元:https://fashionpost.jp/

酒浸りでシングルファーザーの冴えない私立探偵 ホランド(ライアン・ゴズリング)と、腕力でトラブルを解決する示談交渉屋のヒーリー(ラッセル・クロウ)。行方不明になった謎の女性 アメリアの捜索を依頼された二人は、探偵の娘ホリーを加えた三人でその行方を探すことになった。

突如現れた謎の殺し屋に追われながら捜索を続ける三人は、アメリアが関わった環境保護団体やポルノ映画会社に辿り着き、捜索は少しずつ進んでいく。やがて三人は、殺し屋の襲撃を受けて命からがら逃げてきたアメリアとの接触に成功するが、彼女が語る事件の真相の裏には、国家を揺るがす大きな陰謀が存在していた、、、

*出典元:https://omegaforums.net/

1970年代を舞台にした、ドタバタ犯罪アクションコメディ『ナイスガイズ!』(2016)。本作では、腕っぷしで全てを解決しようとする「力こそパワー」な示談交渉屋を演じるラッセル・クロウが、ヴィンテージ感のあるオメガ スピードマスター 5th(Ref.145.022-69を着用しています。

本作の時代背景は、1969年のアポロ11号による月面着陸の少し後。月面に降り立ったアームストロング船長の姿に全世界が熱狂し、スピードマスターが「ムーンウォッチ」として人気を博していた頃の話です。時代を象徴する腕時計を小道具に用いることで、物語の舞台背景が上手く表現されております。

ザ・ラウデスト・ボイス-アメリカを分断した男-

THE LOUDEST VOICE(2019)

*出典元:https://www.goldderby.com/

ニュース専門テレビ局「FOXニュース」の初代CEOに就任したロジャー・エイルズ(ラッセル・クロウ)。強硬な保守派で知られる彼は、偏向放送やフェイクニュース、左翼政治家を中傷するデマを流すWEBサイトなどを利用し、ナショナリズムを扇動していた。ブッシュ政権のイラク戦争を賛美し、オバマ政権には執拗な攻撃を加えるFOXニュース。2015年にはドナルド・トランプに大統領選への出馬を進言する。

大統領選にすら大きな影響を与える巨大メディアとなったFOXニュースと、メディア王としてテレビ報道のトップに君臨し、権力を振りかざすエイルズ。そんな彼を権力の座から引きずり下ろしたのは、局内で巻き起こったハラスメント告発だった。

*出典元:https://www.facebook.com/

FOXニュースのCEOに就任した1995年から、セクシャルハラスメントで失脚する2016年までの間、メディアを駆使してナショナリズムを煽り立て、アメリカ国内の左右分断に拍車をかけた実在の米メディア王、ロジャー・エイルズの姿に迫る実録テレビドラマ『ザ・ラウデスト・ボイス-アメリカを分断した男-』(2019)。

特殊メイクに身を包んでエイルズを演じるラッセル・クロウの腕には、いかにも権力者らしい、押し出しの強い金無垢のロレックス サブマリーナー(Ref.16618LBが着けられています。

*出典元:https://www.watchuseek.com/

そして実際にロジャー・エイルズが着用していた腕時計も、ブルーのロレックス サブマリーナー(Ref.16613。ただし、ドラマ内のロジャー・エイルズが金無垢の青サブマリーナーを着けていたのに対し、実際には少し控えめな印象のコンビモデルを愛用していたようです。

強大な権力を持っていたメディア王というイメージに合わせ、ドラマではカジュアルな雰囲気を感じさせない、より高価な金無垢モデルが小道具として選ばれたのかもしれません。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ヴァシュロンコンスタンタンのエレガントなドレスウォッチに、オメガロレックスのスポーツモデルと、いかにも腕時計好きが選びそうな、シーンやキャラクターに応じて使い分けしやすい3本が並んだように思えます。

グラディエーター』(2000)では筋肉隆々の剣闘士、『ビューティフル・マインド』(2001)では統合失調症に苦しむ天才数学者と、わずか一年の間に真逆の役柄を演じ、いずれの演技も高い評価を得た彼のフレキシブルさが、劇中で着ける腕時計のバランスの良さにも現れていると言えるのではないでしょうか。

*出典元:https://www.insider.com/

さて、最近はめっきり肉付きもよくなり、「くまのプーさん」のような柔和なキャラクターが板につきつつあったラッセル・クロウ。今後は「優しいお祖父ちゃん」みたいな役柄ばかりになるのかと思っていましたが、昨年公開された『アオラレ』(2021)では、母子が乗った車に執拗に煽り運転を繰り返すヒグマのような凶暴男に扮しており、彼が演じる「筋脳キャラ」もこれから先、まだまだ楽しめそうな雰囲気で安心いたしました。

気になるラッセル・クロウの次回作は、マーベルのスーパーヒーロー映画との事。個人的には、彼のガッチリ体系に似合いそうな、パネライ ルミノールマリーナオーデマピゲ ロイヤルオーク オフショアなどの、力強さを感じさせる腕時計の着用を期待して続報を待ちたいと思います。

ではまた!

Actor's watch