映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第84弾の今回は、「映画に登場したブレゲの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://www.breguet.com/

永久カレンダー、ミニッツリピーター、トゥールビヨンなど、数々の革新的な機構を発明し、「時計の歴史を200年早めた」と謳われる天才時計師アブラアム=ルイ・ブレゲ。彼が1775年に創業した【ブレゲ】は、ナポレオン・ボナパルトマリー・アントワネットといった歴史上の有名人たちを顧客としていた、由緒ある時計ブランドとして知られています。

1800年代後半に時計ブランドとしては休眠状態となったブレゲですが、1999年にオメガやブランパンを擁する「スウォッチグループ」の手により復活。現在は、アブラアム=ルイ・ブレゲのスピリットを現代に継承するブランドとして、腕時計愛好家からの高い人気と信頼を獲得しています。

今回の「Actor’s Watch」は、そんなブレゲの時計が登場する映画に迫っていきたいと思います。

リミットレス

LIMITLESS(2011)

*出典元:https://www.cdcun.com/

スランプに陥った作家、エディ(ブラッドリー・クーパー)が、脳の休眠している部位を活性化させる新薬「NZT」を手に入れる。脳を覚醒させたエディは一晩で傑作小説を書き上げる能力を得るが、それだけでは物足りずビジネス界にも進出。株取引や投資でも大成功を収め、瞬く間に財界の頂点へと駆け上がる。世界から注目を集めることとなったエディだが、成功の行く末には、恐るべき副作用と罠が待ち受けていた。

*出典元:https://bamfstyle.com/

「人間の脳の大部分は使われていない」という医学的な迷信をベースに、「薬物による超人化」を望むことの危うさを描いたサイエンススリラー『リミットレス』(2011)。

この映画では、主人公のエディに巨額の投資話をもちかける大物投資家役を演じるロバート・デ・ニーロの腕にブレゲ クラシック(Ref.5197)が着けられています。高級腕時計でありながら、シックで控え目なたたずまいを見せるこの時計。常に冷静さを必要とする大物投資家の役回りを演出する上で、最適な腕時計と言えるでしょう。

☞#30 名優ロバート・デ・ニーロの腕時計 を読む

バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

BATMAN V SUPERMAN:DAWN OF JUSTICE(2016)

*出典元:https://www.esquire.com

スーパーマンとゾッド将軍の激しい戦いにより、甚大な被害を受けたメトロポリス。バットマンの正体である大富豪、ブルース・ウェインベン・アフレック)が経営するウェイン社のビルも損壊し、社員の多くが巻き添えとなった。人類の危機を幾度も救ったスーパーマンだが、バットマンは彼の強大すぎる力を危険視するようになる。

スーパーマンとバットマンの間に生じた軋轢。世界征服を企む悪の天才科学者レックス・ルーサーは、それを利用して彼らを戦わせようと画策する。

*出典元:https://www.montres-de-luxe.com/

DCコミックスの劇中世界で繰り広げられるヒーローたちの戦いを描く「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズ。その第二作である『バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生』(2016)は、強大すぎる力を持ったスーパーマンと、彼を人類の脅威と考えるバットマンの戦いを描いた異色のヒーロー映画となっています。

本作でベン・アフレックが演じているのは、ウェイン・エンタープライズの総裁であり、財界人でもある大富豪、ブルース・ウェイン(バットマン)。彼が身に着けている腕時計は ブレゲ トラディション 7047 プラチナ トゥールビヨン フュゼシリシオン (Ref.7047PT/11/9ZU)と思われます。

「バットマン」は、オリジナルに敬意を払いつつ、リブートによって現代的にアップデートを重ねていくアメコミ映画の象徴的存在。これはブレゲ トラディションのテーマ「原点回帰」と「未来への展望」とも重なるように思えます。

☞#36 俳優と監督の二刀流 ベン・アフレックの腕時計 を読む

ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男

DARKEST HOUR(2017)

*出典元:https://filmschoolrejects.com/

1940年5月9日、ヒトラー率いるドイツ軍は東欧と北欧を占領。イギリスにとって海を挟んだ隣国、フランスとベルギー侵攻も間近に迫っていた。英国議会では、対ドイツ政策を誤ったチェンバレン政権が退陣を余儀なくされ、後任としてウィンストン・チャーチルゲイリー・オールドマン)に白羽の矢が立てられる。

和平交渉を望む議会に対し、チャーチルはナチスへの徹底抗戦を呼びかける。初めは誰にも相手にされなかったチャーチルだが、その強い意志と決断力は、やがて英国王室を動かし、ヒトラーをも追い詰めていく。

*出典元:https://ihr.org/

第二次世界大戦においてヒトラーを相手に戦い抜き、アメリカを巻き込むことでナチスドイツの侵攻を打ち砕いた英国首相チャーチルの英断を描いた『ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男』(2017)。この映画に登場するのはチャーチルが実際に愛用した、ブレゲ ポケットウォッチ「No.765」、、、と言いたいところですが、本作では残念ながらスクリーンに映るのは時計に繋がれた金の鎖のみ。それでも懐中で存在感を放っているかのように感じられるのは私だけでしょうか?ちなみに「No.765」の実物は、ロンドンの帝国戦争博物館で公開されているそうです。

ハウス・オブ・グッチ

HOUSE OF GUCCI(2021)

*出典元:https://m.imdb.com/

貧しい家庭出身だが野心的なパトリツィア・レッジャーニ(レディー・ガガ)は、イタリアで最も裕福なファッションブランド創業者、グッチ家の後継者の一人であるマウリツィオ・グッチ(アダム・ドライバー)をその知性と美貌で魅了し、妻の座へと収まる。やがて彼女は一族の権力争いを利用して、次第にブランドの経営を支配していく。しかし、順風満帆だったふたりの結婚生活に陰りが見え始めた時、パトリツィアは破滅的な結果を招く危険な道を歩み始める、、、

*出典元:https://oracleoftime.com/

ファッションブランド「グッチ」創業者一家の三代目、マウリツィオ・グッチ暗殺事件の真相に迫り、グッチ家からの批判も巻き起こった問題作『ハウス・オブ・グッチ』(2021)。本作では、創業者の次男であり、グッチを世界的なブランドへと成長させた立役者、アルド・グッチを演じるアル・パチーノが、ブレゲ クラシック パワーリザーブ ムーンフェイズ(Ref.7137)を着用しています。

ただし、この腕時計は2000年代に入ってから発売されたモデルの為、映画の舞台となる1990年代には存在しておりません。ファッションブランド界の重鎮たるグッチ家、そのやり手の二代目という個性を演出する為に、エレガントさと複雑さを兼ね備えたこの腕時計が、時代性を無視して選ばれたように思えます。

☞#20 アル・パチーノが選ぶ腕時計 を読む

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ブランドの復興が1999年ということもあり、その後10年が経ち、ブランド再評価の機運が高まった2010年頃から、ブレゲの時計はスクリーンに多数登場し始めているようです。

*出典元:https://www.timeandwatches.com/

18世紀にアブラアム=ルイ・ブレゲが創造した、現代にも通ずる時計の機構や意匠。その精神を受け継ぐブレゲの腕時計は、映画やドラマにおいて、時代性伝統的なバックボーンを持つエレガントなキャラクターを演出する小道具として、最良の選択肢になることは間違いないでしょう。

しかし残念なことに、私がよく観るゾンビ宇宙人人食い鮫モンゴリアン・デス・ワームなどが出てくる映画には、ブレゲが似合う登場人物はあまり出てこないんですよね。小洒落た映画でブレゲの腕時計を発見された方は、ぜひYouTubeのコメント欄にてご報告ください!

ではまた!

Actor's watch