映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第75弾の今回は、「メル・ギブソンの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://www.hollywoodreporter.com/

幼い頃に家族で移住したオーストラリアで演技を学び、23歳で主演したオーストラリア映画『マッドマックス』(1979)の世界的大ヒットによって瞬く間にスターの座へと駆け上ったメル・ギブソン。以降、アクションスターとして数々の大ヒットを飛ばしながら、自らのルーツであるスコットランドの独立を描いた『ブレイブハート』(1995)ではアカデミー監督賞を受賞し、俳優だけでなく映画製作者としても大きな成功を収めます。

今回の「Actor’s Watch」は、60歳を過ぎた現在も映画界に影響を与え続ける、メル・ギブソンが着用した腕時計に注目したいと思います。

リーサル・ウェポン

LETHAL WEAPON(1987)

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旧友の娘の飛び降り自殺を調査していたロス市警のマータフ刑事(ダニー・グローヴァー)の元に、新たな相棒となるリッグス刑事(メル・ギブソン)が異動してくる。ベトナム戦争に特殊部隊員として従軍した経験により人並外れた射撃や格闘能力を誇るリッグスだが、妻を事故で亡くしたことで自暴自棄となり、今では警察本部内で「リーサル・ウェポン(殺傷兵器)」と呼ばれるトラブルメーカーになっていた。

リッグス刑事の暴力的な捜査に初めは困惑するが、それが強い正義感によるものであることを知ったマータフ刑事。調査していた娘の自殺の裏に大きな事件が隠されていることを確信した二人の刑事は、お互いを相棒と認め合い、危険な敵に立ち向かっていく。

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メル・ギブソン演じる不器用な暴力刑事リッグスと、ダニー・グローヴァー演じる家族想いで温厚なマータフ刑事という「凸凹刑事コンビ」が人気を博し、全4作のシリーズ化となった『リーサル・ウェポン』の第1作。

この作品でメル・ギブソンが着用しているのは、タグホイヤー フォーミュラ1(Ref.383.513/1)。カーレースの最高峰「F1」からインスパイアを受けた、1986年発表のクォーツのコレクションです。ガンアクションや格闘シーンの多いハードなアクション映画だけに、暴力刑事の腕に堅牢性の高いクォーツウォッチは非常にしっくり来ます。

ちなみに本作の公開当時は、アイルトン・セナアラン・プロストの全盛期で、世界的な「F1」ブームの真っ只中。タグホイヤーもマクラーレンのスポンサーとして高い知名度を誇っていました。そんなことも思い出させる腕時計です。

エア★アメリカ

AIR AMERICA(1990)

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ベトナム戦争真っ只中のラオス。アメリカ中央情報局(CIA)はラオス市内に極秘裏に航空会社「エア・アメリカ」を設立し、職員たちは軍事物資や難民輸送などの危険な任務を遂行していた。そしてある日、撃墜され殉職したパイロットの代わりとなる新人、ビリー(ロバート・ダウニーJr)がエア・アメリカにやってくる。

実はその頃、エア・アメリカ社を使ってラオスで麻薬の密輸に関わっていたCIA。ビリーはその隠蔽のために濡れ衣を着せられ、CIAに殺されかけるが、何とか逃走。イカれた先輩パイロットのジーン(メル・ギブソン)となぜか一緒に逃亡するハメになる。

*出典元:https://www.rolexmagazine.com/

ベトナム戦争当時に起きた現実の事件を、少しドタバタチックなサスペンスコメディとして描いた『エア★アメリカ』。この映画でメル・ギブソン演じるベテランパイロット、ジーンが着けているのはロレックス GMTマスター。物語の舞台となる1960年代末でリューズガードありとなれば「Ref.1675」ということになるでしょう。

ただし、時代背景としては「Ref.1675」が順当ですが、劇中で使われた腕時計も同じく「Ref.1675」かどうかまでは確認できませんでした。写真で見る限りブレスレットが非常にしっかりしており、リベットや巻きブレスなど年代を感じさせるモノのようには見えないので、もしかしたらハードブレスの「Ref.16750」など、劇中の時代背景とは異なる、後年のモデルが撮影に用いられているかもしれません。

サイン

SIGNS(2002)

*出典元:https://viaplay.no/
ペンシルバニアに住む元牧師のグラハム(メル・ギブソン)は、妻の死をきっかけに神への信仰をやめ、2人の子供と、義弟で元野球選手のメリル(ホアキン・フェニックス)と共に農場を経営していた。ある朝、姿が見えなくなった子供たちを探しに農場に向かうと、そこには子供たちと、巨大なミステリーサークルが姿を現していた。

一家の周りには、動物の異常行動や謎の人影など、奇妙な「サイン」が出現し始め、やがて世界中でUFOの目撃が相次いでいることがテレビニュースで報道されるようになる。宇宙人の地球侵略を確信したグラハムは、家にこもって何とかソレをやりすごそうと考えるが、、、

*出典元:https://m.imdb.com/

シックスセンス』(1999)や『ヴィレッジ』(2004)など、驚愕のどんでん返しで観客を魅了する、M・ナイト・シャマラン監督のSFミステリー『サイン』。メル・ギブソン演じる元牧師が、宇宙人の侵略に右往左往しながらも「家族」や「信仰」とは何かに気づき始めるヒューマンドラマでもあります。

この映画でメル・ギブソンが着けているのは、ロンジン ドルチェヴィータ クロノグラフと思われる腕時計。タグホイヤーのモナコや、カルティエのタンクではないかとも思ったのですが、それらは細部の形状が一致せず、消去法で明らかな不一致の無いロンジンが残りました。しかし、情報が劇中の画像しかなく断定には至っておりませんので、こちらは引き続き調査を続けたいと思います。

エクスペンダブルズ3 ワールドミッション

THE EXPENDABLES 3(2014)

*出典元:https://www.goodfon.com/

バーニー・ロス(シルヴェスター・スタローン)率いる命知らずの傭兵チーム「エクスペンダブルズ」は、アフリカで武器密売の阻止と、密売組織のリーダーの抹殺を依頼される。チームの活躍により作戦は成功と思われたが、密売組織のリーダーと対峙したバーニーは、その男が過去に殺したはずの「エクスペンダブルズ」初期メンバー、コンラッド(メル・ギブソン)であることを知る。

コンラッドが率いる組織の反撃によって作戦は失敗するが、CIAの指揮官(ハリソン・フォード)は逃走したコンラッドの抹殺指示を継続する。しかし、チームの手の内を知るコンラッドとの戦いで「エクスペンダブルズ」の現メンバーを失うことを恐れたバーニーはチームの解散を宣言。若手の傭兵たちを集めて捨て身の作戦に打って出ようとするが、、、

*出典元:https://www.spotern.com/

シルヴェスター・スタローンアーノルド・シュワルツェネッガーはもちろん、ドルフ・ラングレンジャン・クロード・ヴァンダムチャック・ノリスなど、1980年代のアクションスターが総出演することで話題&人気の『エクスペンダブルズ』。メル・ギブソンはシリーズ3作目となる本作で、悪役のリーダー、コンラッドを演じています。

彼が腕に着けている腕時計は、ブライトリング アベンジャー(Ref.E73360。パイロットウォッチを多く製造しているブライトリングの中でも、特に堅牢性や防水性能に優れた「アベンジャー」コレクションの一本です。

そして「復讐者」を意味する「アベンジャー(AVENGER)」がコンラッドの腕時計として選ばれたのは、もしかしたら「かつて自分を殺そうとしたバーニー・ロスへの復讐」を匂わせているのかもしれません。そんな「勘繰り」も、映画に登場する腕時計の愉しみ方のひとつと言えるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
タグホイヤーロレックスロンジンブライトリングという、一般的には高級時計として扱われるブランドが並びました。「Actor’s Watch」では毎週、多くの俳優が着用した腕時計のリサーチを行なっておりますが、セイコーやカシオ、タイメックスなどの低価格帯の着用が見つからなかったのは、『エクスペンダブルズ3』でも共演したシルヴェスター・スタローンの腕時計について調べた時以来かもしれません。

*出典元:https://mutantreviewersmovies.com/

これは思うに、メル・ギブソンやシルヴェスター・スタローンが、そのような腕時計を着用する「どこにでもいる一般人」を演じる機会が少なく、刑事や特殊部隊員など「ワイルドなスペシャリストに相応しい腕時計」が似合う役柄を演じていることが多いから、という気がいたします。

いまだ『マッドマックス』の頃から変わらぬ狂犬ぶりをスクリーン上で披露し続けているメル・ギブソン。これからも丸くなることなく「狂犬の如きシニア」役を演じ続けてくれることを、ファンとして熱望したいと思います。

ではまた!

Actor's watch