映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第70弾の今回は、「レイ・リオッタの腕時計」をお送りします。

*出典元:https://www.tcm.com/

2022年5月26日、悲しいニュースが飛び込んで来ました。『グッドフェローズ』(1990)や『ハンニバル』(2001)などの出演作で知られる俳優、レイ・リオッタが67歳で亡くなりました。大好きな俳優のひとりでもあったので、いまだショックが抜け切れずという感じです。

「心の奥底に何かを隠しているコワモテ」を演じさせたらピカイチで、『アンフォゲタブル』(1996)、『アイデンティティー』(2003)、『NARC』(2002)といった、彼が2000年前後に出演した「クセが強い」サスペンススリラーの数々が個人的には特にお気に入りです。

今回は追悼の意を込め、レイ・リオッタが着用した腕時計を追っていきたいと思います。

グッドフェローズ

GOODFELLAS(1990)

幼い頃からマフィアに憧れていたヘンリー(レイ・リオッタ)は、地元マフィアのボスのもとで働き始める。金儲けのセンスを認められたヘンリーは、街で最も恐れられている男、ジミー(ロバート・デ・ニーロ)を紹介され、弟分であるトミー(ジョー・ペシ)とコンビを組むことになる。やがて盗品売買で警察に捕まったヘンリーだが、取り調べでも決して口を割らず、組織を守ったことで一人前の男と認められ、出所後には大きな「仕事」が次々と舞い込んでくる。結婚し、やがて組織の後ろ盾で自分の店を持ったヘンリーだが、その店で出所祝いをしていた大物マフィアをトミーが殺してしまったことで、彼の人生の歯車は少しずつ狂い始める。

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本作『グッドフェローズ』は、実在のマフィア、ヘンリー・ヒルの生涯を描いた実話小説『ワイズガイ』を原作とした、マーティン・スコセッシ監督の犯罪伝記映画。1991年の第63回アカデミー賞では、作品賞を始めとする4部門にノミネート、トニー役のジョー・ペシが助演男優賞に輝いたマフィア映画の名作です。ヘンリー・ヒル役のレイ・リオッタは、裏社会で大きく成り上がりつつも、やがて司法に追い詰められていく、温厚で人間味のあるマフィアを好演。彼の出世作となりました。

*出典元:https://www.wristenthusiast.com/

*出典元:https://www.rolexmagazine.com/

この映画でレイ・リオッタが着けている腕時計は、セイコークォーツSQ(Ref.7813-8019)と、ロレックス デイデイトの2本。いかにもマフィアが好んで着けそうな「金ピカ」の腕時計ですが、映画内の一人のキャラクターが着けた腕時計として、ここまで価格差のある2本が選ばれることは、なかなかに珍しいのではないでしょうか。撮影時期からすると、デイデイトはRef.18038(70年代後半~80年代後半)か、Ref.18238(1988年~2000年)と思われます。どちらかと言えば、ケースに厚みがあるように見え、かつ、劇中の時代とも合うRef.18038が有力に思えますが、いかがでしょうか?

ダンボドロップ大作戦

OPERATION DUMBO DROP(1995)

ベトナム戦争真っ只中の1968年。アメリカ軍のドイル大尉(レイ・リオッタ)は、北ベトナム軍の輸送経路を監視するため、南ベトナムの山奥にある小さな村に赴任してきた。村人たちの流儀を重んじ、彼らの信頼を得ていた前任者のケイヒル大尉(ダニー・グローヴァー)は、村人との協力関係の大切さをドイルに説くが、任務遂行を第一に考える彼は、あまり乗り気ではなかった。そんな中、北ベトナム軍の攻撃を受け、村人たちが守り神として崇める象が殺されてしまう。このままでは村人からの信頼を失ってしまうと考えたケイヒルは、ドイルや象の世話役の子供と共に、村祭りの日までに新しい象を手に入れるための作戦を立てるのだった。

*出典元:https://mashable.com/

本作はベトナム戦争を舞台としておりますが、ディズニー映画だけに戦死者は出てきませんのでご安心を。「実話をもとにした」と言われておりますが、本当に象にパラシュートを着けて降下させたのか、真実は誰にもわかりません(笑)。戦争映画というよりも、ベトナムを舞台にした、軍人と子供と象が織り成すハートウォーミングストーリーと言った方がいいでしょう。見どころは、何といっても「善人役を演じるレイ・リオッタ」。彼のパブリックイメージとは異なる一面が味わえる作品となっています。

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本作で任務第一の軍人を演じるレイ・リオッタが着用しているのは、ペプシカラーのベゼルが色鮮やかな、ロレックス GMTマスターと思われる腕時計。画像ではフラットなサファイアクリスタル風防のように見えますので、撮影時期を考えるとGMTマスター(Ref.16700)あるいはGMTマスターⅡ(Ref.16710)ではないかと思われます。

ベトナム戦争を舞台とする映画でGMTマスターと言えば、『地獄の黙示録』(1979)でカーツ大佐役を演じたマーロン・ブランドの「ベゼルを外したRef.1675」が有名ですが、もしかしたらそのオマージュとしてこの腕時計が選ばれたのかもしれません。

マリッジ・ストーリー

MARRIAGE STORY(2019)

舞台演出を手掛ける劇団主催者のチャーリー(アダム・ドライバー)と、彼の妻で女優のニコール(スカーレット・ヨハンソン)は、ニューヨークで息子と暮らす3人家族。夫を愛しながらもスレ違いが重なり、「自分らしく生きたい」と思い始めた妻のニコールは離婚を決意する。話し合いの結果、円満な協議離婚をしようと考えたチャーリーとニコールだが、それまでの不満や感情がぶつかり合い、やがてお互いに弁護士(レイ・リオッタ/アラン・アルダ)を立てた離婚裁判へと発展してしまう、、、

*出典元:https://m.imdb.com/

ノア・バームバック監督が、自身の離婚裁判体験をもとに監督・脚本・製作を務めた『マリッジ・ストーリー』。愛し合いながらも夫婦関係を終わらせようとする家族を描いた本作は、「現代版『クレイマー、クレイマー』(1980)」とも称され、高い評価を得ています。

本作では、チャーリー側につく好戦的な弁護士、ジェイ・マロッタ役を演じるレイ・リオッタ。ロマンスグレーの「渋オジ」ながら、コワモテで押しの強いキャラクターは、多くのファンが望んでいた「これからのレイ・リオッタの姿と演技」だったはず。67歳での早すぎる逝去が本当に惜しまれます。

*出典元:https://www.heraldscotland.com/

本作でやり手の弁護士を演じるレイ・リオッタが着けているのは、カルティエ タンクフランセーズ。アップにすると4時・8時・12時のインデックスが欠けて見えるので、この位置にクロノグラフの積算計とカレンダーが配置されたクロノリフレックス(Ref.W51001Q3と思われます。実はレイ・リオッタは左利きで、劇中でも腕時計を右手首に着用している事がほとんど。リューズ側が見えない画像が多く、今回はモデルの特定が大変でした(笑)

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ご紹介した3本は、腕時計繋がりの偶然とは言え、奇しくも全て実話をもとにした映画が並ぶ結果となりました。

これはレイ・リオッタが、目鼻立ちのクッキリとした、いかにもスクリーン映えする「映画的なコワモテ」であったにも関わらず、実話の持つリアリティを壊さない確かな演技力を併せ持っていたことの証明であると、いちファンとして強く思う次第です。

*出典元:https://www.looper.com/

報道によると、新作映画の撮影の為に滞在していたドミニカ共和国で、睡眠中に亡くなったとのことで、ファンの誰しもが「これから先、まだまだレイ・リオッタの新作が楽しめる」と思っていた中での悲しい知らせでした。もう彼の新作を観ることは叶わないかもしれませんが、しばらくは過去作を観て、彼の偉大さを再確認したいと思います。

R.I.P. レイ・リオッタ。
素晴しい演技で楽しませてくれて、本当にありがとうございました。

ではまた!

Actor's watch