映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第148弾の今回は、「『インファナル・アフェア』に登場した腕時計」をお送りします。
潜入捜査の為にマフィアの一員となった刑事ヤン(トニー・レオン)と、捜査情報を組織に内通する為に警官となったマフィアのラウ(アンディ・ラウ)。組織からの命令により、敵対組織の一員になることを余儀なくされた二人の数奇な運命を描く『インファナル・アフェア』シリーズ(2003-2005)。
*出典元:https://www.primevideo.com/
香港では『ハリーポッターと秘密の部屋』(2002)などの大作映画を興収で上回り、ハリウッドでのリメイク作『ディパーテッド』(2006)は、リメイク映画として初めてアカデミー作品賞を獲得するなど、その物語と世界観は全世界の映画ファンを魅了。日本にも多くのファンがおり、日本公開20周年にあたる今年、その4Kバージョンのリバイバル公開が11月3日より全国の映画館で行われています。
今回は、そんな香港ノワールの傑作『インファナル・アフェア』シリーズの劇中で着用された腕時計に迫ってまいりたいと思います。
インファナル・アフェアのあらすじ
*出典元:https://www.fareastfilm.com/
2002年の香港。上司であるウォン警視(アンソニー・ウォン)から能力を見込まれ、刑事としての身分を抹消してマフィア構成員となり、潜入捜査を行なっているヤン(トニー・レオン)。危険な捜査の連続で精神を病んだ彼は、一日も早く元の刑事に戻れる日を待ち望んでいた。
一方、裏社会のボス、サム(エリック・ツァン)の命令で身分を隠して警官となり、捜査情報を組織に流すスパイとなっていたマフィアのラウ(アンディ・ラウ)は、警察内で順調に出世を重ねていた。
ある日、大きな麻薬取引が警察の手入れにより失敗に終わるが、マフィアたちも警察の裏をかいて逃亡に成功する。ヤンとラウは、この一件からお互いの組織にスパイがいることを確信し、その正体を暴くための調査を開始する、、、
トニー・レオンのクロノスイス トラ
*出典元:https://www.intofilm.org/
*出典元:https://theclock.fandom.com/
善と悪の狭間で精神を病み、精神科医(ケリー・チャン)のカウンセリングが欠かせない潜入捜査官ヤンを演じるのは、『恋する惑星』(1995)、『レッドクリフ』(2008)などで知られる名優トニー・レオン。
本作で彼が着用しているのは、彼が潜入捜査官であることを知る上司、ウォン警視(アンソニー・ウォン)から誕生日のプレゼントとして贈られたクロノスイス トラ タイムゾーン(Ref.CH1323)。ドイツ発祥ながらスイスの名を冠したクロノスイスの腕時計が「マフィアを名乗る警官」を表現しているのではないか、というファンの考察もあるようですが、製作者の意図は果たして、、、
アンディ・ラウのクロノスイス デルフィス
*出典元:https://www.fareastfilm.com/
*出典元:https://www.goode-china.com/
ボスの命令で警察の内通者になったものの、過去を捨て、本物のエリート警官として生きる道を模索し始めるマフィア、ラウを演じているのは、『欲望の翼』(1992)、『グレートウォール』(2016)で知られる香港映画界のトップスター、アンディ・ラウ。
彼が劇中で着用している腕時計は、クロノスイス デルフィス(Ref.CH1423)。ギョーシェ文字盤にジャンピングアワーとレトログラード分針を備えた、エレガントかつ個性的な一本。こちらもトニー・レオンと同じく、腕時計が「警官を名乗るマフィア」を表現しているのかもしれません。
エディソン・チャンのロレックス エアキング
*出典元:https://www.fareastfilm.com/
*出典元:https://theclock.fandom.com/
ヤンとラウが、それぞれ潜入捜査官と警察の内通者になるまでを描いたシリーズ2作目『インファナル・アフェア 無間序曲』(2004)。若き日のラウを演じているのは、本作と同じアンドリュー・ラウ監督作『頭文字[イニシャル]D THE MOVIE』(2005)の高橋涼介役で知られるエディソン・チャン。
警察学校に潜入する前、上役の妻の依頼で当時のボスを暗殺したラウが、逃走資金として渡された大金で真っ先に購入したものは、以前から憧れていたであろうロレックス エアキング(Ref.14000)。高級腕時計がラウの上昇志向を上手く表現する小道具になっています。
カリーナ・ラウのロンジン ドルチェヴィータ
*出典元:https://m.imdb.com/
*出典元:https://kknews.cc/
『インファナル・アフェア 無間序曲』(2004)で、ラウが密かに思いを寄せるボスの妻、マリーを演じるカリーナ・ラウ。実生活では、主役のヤンを演じるトニー・レオンの妻としても知られています。
ラウに当時のボスの暗殺を依頼し、物語が大きく動くきっかけを作った彼女が劇中で着用している腕時計は、ロンジン ドルチェヴィータ(Ref.L5.155.7.16.6)。ロンジンは中国で最も広く親しまれている高級腕時計ブランドであり、また、中国での売上の半分がレディースモデルと言われるほどに中国の女性に愛されている腕時計でもあります。経済的に余裕のあるマフィアの妻という役柄を、金無垢のロンジンが表現してます。
レオン・ライのクロノスイス カイロス ルナ
*出典元:https://www.canalplus.com/
*出典元:https://m.media-amazon.com/
物語の完結編となるシリーズ三作目『インファナル・アフェアIII 終極無間 』(2005)。マフィアとしての前歴を抹消し、真っ当な警官として生きる道を選んだラウ。彼が「自分以外にも警察に潜入したマフィアがいるかもしれない」と考え、その疑いの目を向けるキャリア警官、ヨンを演じるのは、香港の人気歌手でもある俳優、レオン・ライ。
彼が劇中で着用しているのは、こちらもヤンやラウと同じ、クロノスイス カイロス ルナ トリプルデイト(Ref.CH9323)。この腕時計が「警官を名乗るマフィア」を表現しているのか、それともミスリードなのかは、映画を観てのお楽しみとしておきましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
世界中の映画ファンが香港ノワールの歴史的作品として愛する『インファナル・アフェア』シリーズ。本シリーズには多くの高級腕時計が登場し、キャラクターの魅力を引き出す為の小道具として使われていることがお分かりいただけたかと思います。まさに「腕時計は人をあらわす」です。
*出典元:https://expresselevatortohell.com/
香港返還により、『インファナル・アフェア』のようなバイオレンスタッチの香港ノワールは、もう作れなくなるのではないかとも言われておりました。しかし近年、トニー・レオン主演の実在の汚職警官を描くクライムサスペンス『風再起時』(2023)が多くの賞を受賞するなど、香港ノワール復活の兆しが少しずつ見え始めているのは、このジャンルのファンとしては嬉しい限り。
『インファナル・アフェア』を超える香港ノワール作品がいつの日か観られる事を期待して、昔のように、再び香港映画を追いかけていきたいと思います。
ではまた!