映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第128弾の今回は、「ハビエル・バルデムの腕時計」をお送りします。

名匠コーエン兄弟のサスペンス映画『ノーカントリー』(2007)に登場する、屠殺用の圧縮空気銃を武器にする不気味な殺し屋、アントン・シガー役を怪演したハビエル・バルデム。この一作で映画ファンの心を掴んだ彼は、本作でスペイン人俳優として初めてアカデミー賞助演男優賞を獲得し、国際的なスター俳優の仲間入りを果たします。

*出典元:https://therake.com/

憑依型の演技派俳優として、文芸作品やヒューマンドラマへの出演で高い評価を受けながら、『007 スカイフォール』(2012)や、『パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊』(2017)といった大作アクション映画等にも出演し、幅広い層からの人気と知名度を獲得しているハビエル・バルデム。

今回は、そんな彼が劇中で着用した腕時計に迫ってまいりたいと思います。

ライブ・フレッシュ

LIVE FLESH(1997)

*出典元:https://m.imdb.com/

1970年冬のマドリード。ひとりの妊娠した娼婦がバスの中で男の子を出産する。20年後、ビクトルと名付けられた子供は立派な青年(リベルト・ラバル)に育っていた。ある日ビクトルは、クラブで知り合ったエレナ(フランチェスカ・ネリ)に一目惚れし、彼女の家に押しかけていくが、ドラッグ中毒のエレナは銃を向けて彼を追い返そうとする。やがて通報を受けた警官ダビド(ハビエル・バルデム)が現場に駆け付けると、ピストルが暴発してダビドに命中。ダビドは下半身不随となり、ビクトルは刑務所に入れられる。

数年後、警官を辞めて車椅子バスケットボールの人気選手となったダビドは、事件をきっかけにエレナと結婚し、幸せな家庭を築いていた。しかし彼は、刑期を終えて出獄したビクトルが、自分を刑務所に入れた彼への復讐を計画していることを、まだ知らなかった、、、

*出典元:https://images-na.ssl-images-amazon.com/

スペイン映画界の鬼才ペドロ・アルモドバルが描く、銃の暴発事件をきっかけに始まる5人の男女の群像劇『ライブ・フレッシュ』(1997)。下半身不随となった元警官の車椅子バスケットボール選手を演じたハビエル・バルデムが本作で着用している腕時計は、オメガ スピードマスター マーク40(Ref.3513.53と思われます。

本機はスピードマスター誕生40周年記念モデルとして1997年に発売された複数のモデルのひとつ。限定品ではなく、通常のコレクションとして10年ほど製造されていた為、現在でも中古品が市場に数多く出回っており、非常に入手しやすい腕時計です。スピードマスターの中でも、クロノグラフ針やインダイヤルスケールの「赤」がヴィヴィッドなことで知られるこちらは、衣装の赤と合わせて選ばれたのか?それともこれが「情熱の国」スペインらしさなのか?

食べて、祈って、恋をして

EAT,PRAY,LOVE(2010)

*出典元:https://m.imdb.com/

ライターのリズ(ジュリア・ロバーツ)は、旅行先のバリ島で占い師から「生涯に2回結婚する」「短期間で全てを失うが、全てを取り戻せる」と言われ、スレ違いが増えてきた夫との離婚を決意する。帰国後に家を出たリズは協議離婚を進める中、ハンサムな俳優デヴィッド(ジェームズ・フランコ)と出遭い、彼のアパートに住み始める。しかし「夫を忘れる為の恋」は長く続かず、やがて彼女はデヴィッドのアパートを飛び出し、自分を見つめ直すため世界を巡る旅に出る。

まず始めにイタリアを訪れたリズ。太ることを気にしてダイエットばかりしていた彼女は、パスタやピザに舌鼓を打ち「食べる喜び」を思い出す。次に訪れたインドではヨガと瞑想にふけることで心に余裕が生まれ、デヴィッドとの生活に思いを馳せる。最後に再びバリ島を訪れた彼女は、離婚したトラウマで新しい恋に踏み出せない男、フェリペ(ハビエル・バルデム)と出遭い、恋に落ちていく。

*出典元:https://images-na.ssl-images-amazon.com/

全世界で1500万部を売り上げた、作家エリザベス・ギルバートの自伝的エッセイを原作とする恋愛映画『食べて、祈って、恋をして』(2010)。本作でジュリア・ロバーツ演じる女性作家と恋に落ちるバツイチ男を演じるハビエル・バルデムは、オメガ シーマスターアクアテラ(Ref.2503.30と思われる腕時計を着用しています。

画像で見る限り、文字盤に「デッキコンセプト」と呼ばれる水平線の彫りが見られませんので、文字盤がフラットな2002年頃に登場した初代アクアテラではないかと思われます。彼がヒロインと恋に落ちる舞台となるのはバリ島。恋愛映画に相応しいドレッシーさと、リゾートアイランドに相応しい防水性を兼ね備えた腕時計となれば、シーマスター アクアテラを置いて他にはありません。

悪の法則

THE COUNSELOR(2013)

*出典元:https://www.indiewire.com/

恋人のローラ(ペネロペ・クルス)との結婚を決意した有能弁護士、通称「カウンセラー」(マイケル・ファスビンダー)は、手広くビジネスを手掛ける友人のライナー(ハビエル・バルデム)の誘いで、利益率4000%という触れ込みの麻薬取引に一回だけ手を出そうとしていた。

ライナーから裏社会の麻薬ディーラーを紹介され、さっそく「仕事」にとりかかったカウンセラーだが、メキシコでの麻薬取引の最中、ドラッグの運び屋が何者かに殺されるというアクシデントに見舞われる。殺された運び屋の母親が、偶然にもカウンセラーが保釈手続きを担当していた囚人だったことから、彼は疑いと警戒の目を向けられ、麻薬組織から追い詰められていく、、、

*出典元:https://variety.com/

地位も収入もある弁護士が、軽い気持ちで足を踏み入れた「悪の世界」。それをきっかけに彼が人生を大きく狂わせていく姿を描いた『悪の法則』(2013)。キャメロン・ディアスブラッド・ピットといった大物俳優が脇を固める中、ハビエル・バルデムは主人公を悪の道に誘う派手好きな実業家を演じています。

レイバンのサングラスに、ヴェルサーチの蝶のシャツ、青いパンツに白ベルトというカオスの極みのようなファッションに身を包んだ彼が着用しているのは、これまたド派手なブルガリ ディアゴノ プロフェッショナル GMT(Ref.DP42G GMT。デザイン要素が詰め込まれたラグジュアリーブランドの金無垢時計が、いかにも「やり手」の実業家らしい雰囲気を醸し出しています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

イケメンから変人まで巧みに演じ分けるハビエル・バルデム(変人率高し)。ベーシックな人気モデルからド派手な金無垢モデルまで、役柄にフィットした腕時計を、こちらも巧みに着けこなしております。

*出典元:https://www.fortressofsolitude.co.za/

ノーカントリー』は、アントン・シガーの活躍(?)を楽しむため、年に数回は観返してしまう個人的に大好きな作品。しかし、アントン・シガー役がハビエル・バルデムでなかったら、ここまでの傑作になっていただろうか、などと考えてしまいます。

腕時計の世界でも、レアピースヴィンテージロレックスとの出会いは一期一会。その一本の購入が人生を変える、なんてことも少なくありません。「これぞ!」という一本があれば、チャンスを逃さず、すかさず手に入れたいもの。経験の長い時計店スタッフほど「あの時、あの時計を買っておけば、、、」と、数多くの後悔を積み重ねております。

もうそんな後悔はしたくない!しかし先立つものがない!
ホントにもう、、、世の中ままなりませんわ、、、

ではまた!

Actor's watch