映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第104弾の今回は、「コリン・ファレルの腕時計」をお送りします。
*出典元:https://www.rottentomatoes.com/
先日行われた第95回アカデミー賞ノミネート作の発表で、作品賞、監督賞、主演男優賞、助演男優賞、助演女優賞、脚本賞、作曲賞、編集賞と、堂々の8部門ノミネートとなったマーティン・マクドナー監督の最新作『イニシェリン島の精霊』(2023)。本作で名演を見せたコリン・ファレルも、見事にアカデミー主演男優賞へのノミネートを果たしました。
個人的にマーティン・マクドナー監督のファンとして『イニシェリン島の精霊』の公開が待ちきれない私。そんなワケで今回の「Actor’s Watch」は、彼らのオスカーノミネートを祝してコリン・ファレルが着用した腕時計に注目して参ります。
ジャスティス
HART’S WAR(2002)
*出典元:https://www.diezminutos.es/
第二次世界大戦下のドイツ。捕虜となった連合国軍のトミー・ハート中尉(コリン・ファレル)は、アメリカ人のマクナマラ大佐(ブルース・ウィリス)が捕虜たちを取り仕切るムースブルグ捕虜収容所に送られる。
ある日、人種差別主義者のアメリカ人捕虜が収容所内で死体となって発見された。殺人の容疑者となったのは黒人将校のスコット少尉(テレンス・ハワード)。彼は軍法会議にかけられることなったが、大学で法律を学んでいたハート中尉が彼の弁護を買って出る。事件を調査するうちに、彼はマクナマラ大佐が何かを隠していることに気づき始める、、、
*出典元:https://www.icollector.com/
ブルース・ウィリスとコリン・ファレルの共演で贈る、第二次世界大戦中の捕虜収容所を舞台とした法廷サスペンス『ジャスティス』(2002)。上院議員の息子で前線に出たことのない「お坊ちゃま中尉」を演じたコリン・ファレルが本作で身に着けているのは、1940~50年代頃のヴィンテージ ロンジン(Ref.不明)。
当時、ロンジンのミリタリーウォッチは世界各国の軍で支給されていましたが、本作に登場するのは、エレガントな装飾ラグを備えたピンクゴールドのドレスウォッチ。おそらく上院議員である父に買ってもらった時計なのでしょう。軍人らしからぬ、いかにも「お坊ちゃま中尉」に相応しい一本となっています。
リクルート
THE RECRUIT(2003)
*出典元:https://wall.alphacoders.com/
マサチューセッツ工科大学で学ぶジェイムズ(コリン・ファレル)は、誰もがIT業界での成功を疑わないほどの天才プログラマー。ある日、数年前に飛行機事故で消息不明となった父のことが気がかりとなっていた彼のもとに、CIAのリクルーターを名乗るウォルター(アル・パチーノ)という男が現れる。彼はジェイムズの父親の過去について話すと、自分の電話番号を残して去っていく。
事故の真相と父親の消息を知る為、IT企業からの高額オファーを蹴ってCIAの採用試験を受けることを決意したジェイムズ。試験を突破し「ファーム」と呼ばれる巨大な訓練施設にやってきた彼を待ち受けていたのは、自分をCIAに誘った男、ウォルターだった。ウォルター教官のもと、厳しい訓練を受ける候補生たちは、やがてライバルを出し抜くための騙し合いを繰り広げていくが、そこにはCIAの機密情報を盗もうとする他国の二重スパイも紛れ込んでいた、、、
*出典元:https://www.primevideo.com/
父の背中を追いCIAへの入局を目指す天才プログラマーが、諜報員としての訓練の中で陰謀に巻き込まれていくスパイ映画『リクルート』(2003)。本作では、アル・パチーノ演じるヘッドハンターに誘われてCIAの採用試験に挑む若者を演じたコリン・ファレルが、タグホイヤー キリウム F1(Ref.CL111C.FT)を着用しています。
ヴァシュロンコンスタンタンの「222」や、ブレゲの「マリーン」をデザインしたことで知られるヨルグ・イゼック。彼が1990年代後期に手掛けた近未来的デザインのデジアナクォーツ「キリウム」が、「2003年頃のIT青年」というキャラクターに説得力を与えています。
TRUE DETECTIVE 2nd
TRUE DETECTIVE 2nd(2015)
*出典元:https://movietvtechgeeks.com/
カリフォルニア州ヴィンチ。市警のレイ・ヴェルコロ刑事(コリン・ファレル)は、裏稼業から実業家に転身した腐れ縁のフランク(ヴィンス・ヴォーン)から、行方不明となっている市政管理官のキャスパーを探すよう依頼を受ける。だが間もなく、キャスパーは道路脇で死体となって発見される。
フランクの金を持ち逃げしていたキャスパーの死を巡り、州警察、郡保安部、市警の3つの警察組織による合同捜査が行われるが、浮かび上がってきたのは、土地の違法取引や組織売春、過去の強盗事件が複雑に絡み合った巨大な汚職事件だった。腐敗と裏切りが渦巻く市政の闇の中で多くを失ったヴェルコロとフランク。二人はお互いを唯一の協力者と認め、手を組んで事件の真相へと迫っていく。
*出典元:https://casiofanmag.com/
裏切りに次ぐ裏切りで誰も信じられなくなること必至。「悪人と悪徳刑事」の息詰まる対決を描いたテレビシリーズ『TRUE DETECTIVE 2nd』(2015)。本作において、司法当局の汚職や腐敗に慣れきってしまった悪徳刑事を演じるコリン・ファレルが身に着けている腕時計は、カシオ ベーシック デジタル(Ref.W-87H)。
かつては日本国内でも販売されていましたが、現在は海外でのみ販売されている「チープカシオ」の人気モデル「W-87H」。G-SHOCKに似たデザインながら、小ぶりで厚みも控えめなので、邪魔にならず気軽に使えるということで海外では愛好者の多いモデルです。危険で過酷な現場に踏み込む腕時計としては最適と言えるでしょう。
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
THE KILLING OF A SACRED DEER(2017)
*出典元:https://www.independent.ie/
美しい妻(ニコール・キッドマン)と2人の子供に囲まれ、裕福で幸せな暮らしを送っている心臓外科医のスティーブン(コリン・ファレル)。彼は、かつて自分が執刀した際に亡くなった患者の息子、マーティン(バリー・コーガン)と密会し、父親替わりとなって精神的なケアや金銭の援助を行ない、良好な関係を築いていた。
ある日、スティーブンは自宅にマーティンを招待し家族に紹介する。しかし、その日を境に、スティーブンの家族に奇妙な現象が次々と起き始める。原因不明の病で手足が麻痺した息子を入院させたスティーブン。そこに現れたマーティンが口にした、恐ろしい「予言」とは、、、
*出典元:https://www.watchuseek.com/
患者を死なせてしまった外科医が、謎の力を持つ患者の息子から究極の選択を迫られるサイコホラー映画『聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア』(2017)。戦争のために妻を欺き、我が子を犠牲にした王が受ける復讐劇、ギリシャ神話『アガメムノン』の物語。それを自信家の外科医の身に降りかかる災難として現代劇に再解釈した本作は、主役の外科医と同僚の腕時計談義から幕を開けます。
劇中でコリン・ファレル演じる外科医が防水性を気にしていた腕時計は、ブライトリング クロノマット44(Ref.AB011012)。腕時計デザイナー、エディ・ショッフルの手により、エレガンスと力強さを兼ね備えた色気溢れる腕時計として2009年に誕生した本機。ブライトリング初の完全自社開発ムーブメント「キャリバー01」を搭載した、いかにもスペックにこだわる腕時計愛好家が選びそうな一本となっています。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
アイドル的なイケメン俳優としてデビューしたコリン・ファレルですが、近年は個性と渋さを兼ね備えたナイスミドル俳優へとスムーズに転身を果たした感があります。それでも、劇中で着用する腕時計には若さや色気を感じさせるモデルが選ばれており、そこには、歳をとりながらも枯れきってはいない、いまだ情熱的な内面が表現されているように思えます。
*出典元:https://www.irishexaminer.com/
前作『スリー・ビルボード』(2017)でも多くのオスカーノミネートに輝いたマーティン・マクドナー監督。新作『イニシェリン島の精霊』(2023)も、既に全世界の映画賞レースで数々の栄誉に輝いており、2023年1月27日の公開を控えた今、私の心には期待しかない状態です。
『スリー・ビルボード』に登場した腕時計はコチラ。
☞#52 【一途なクセ者】『サム・ロックウェルの腕時計』を読む
『イニシェリン島の精霊』では、長年の親友から突然に絶交を言い渡され、途方に暮れる男を演じるコリン・ファレル。ブラックユーモア溢れる演出で複雑な人間関係を描くことに長けたマーティン・マクドナー監督のもと、どのような演技を見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ありません。1920年代のアイルランドの小さな島を舞台にした物語ということで、腕時計の登場はあまり期待できませんが、本作に限ってはその点は忘れて楽しみたいと思います。
ではまた!