皆さまこんばんは。

高級腕時計ブランドには、【ロレックス】や【オーデマピゲ】、【パテックフィリップ】など時計好きなら誰もが憧れるブランドから、知る人ぞ知る通好みのブランドまで、さまざまなブランドが存在しています。そのなかには、長年経営を続けてきた老舗ブランドもあれば、変動が激しい時代の中、単独での経営を維持することが難しく、巨大資本グループの傘下に入ることで、技術の開発や販売の面で協力し合い、経営を維持しているブランドも多く存在します。

そこで今回は、各ブランドがどのグループに位置するのかを『高級腕時計ブランドの相関図』と題してご紹介していきたいと思います。【前編】では、高級時計業界でも有数のブランドが所属している《世界三大グループ》を解説していきますので、ぜひ楽しんでご覧ください。

2022年現在の高級腕時計ブランドの相関図

時計業界を形成するグループは、複数ブランドが所属する「世界三大グループ」と「独立ブランド」、企業に属さずに時計製造を行う時計師の「独立時計師アカデミー(AHCI)」の、大きく3つに分けることができます。それぞれのブランドはもちろん、グループにも特徴や傾向が見られますので、詳しく解説していきたいと思います。

世界三大グループ

スウォッチグループ

『スウォッチグループ』は、【ブレゲ】や【オメガ】、【ブランパン】をはじめとした高級腕時計ブランドを統括する、時計業界最大のグループです。『リシュモングループ』や『LVMHグループ』と比べて歴史が長く、スイスの時計産業の伝統に根ざした時計製造や販売にフォーカスしているところが特徴です。

◆グループ形成までの歴史

1929年に起こった世界恐慌によってダメージを受けたスイスの時計産業が、それぞれ生き残りをかけていくつかのグループを結成しました。1930年にスイス銀行協会や【オメガ】による「SSIH」、1931年にはスイス銀行連盟や【ロンジン】による「ASUAG」などがこれにあたります。

1969年には【セイコー】が発売したクォーツ式時計による、いわゆる「クォーツショック」で、「SSIH」と「ASUAG」は1983年に合併することとなります。更に、エボーシュSAを統合している「ETA」と【スウォッチ】も合併し、1998年には『スウォッチグループ』として結成されることになりました。

さまざまな時計ブランドが傘下にある『スウォッチグループ』では、価格帯や購買層によって4レンジに分類されています。下記は4レンジの分類とブランドの一部になります。

★プレステージ&ラグジュアリーレンジ
【ブレゲ】/【ブランパン】/【ハリー・ウィンストン】/【オメガ】…

★ハイレンジ
【ロンジン】/【ラドー】…

★ミドルレンジ
【ティソ】/【ミドー】/【ハミルトン】…

★ベーシックレンジ
【スウォッチ】…

上記の通り、『スウォッチグループ』は低価格帯から高価格帯までバランス良く構成されています。そして世界最大級のムーブメントメーカーである「ETA社」が傘下にいることは『スウォッチグループ』としては、大きな強みの一つと言えるでしょう。

ETA社」は安価で高性能なムーブメントを製造するメーカーとして、数多くの時計ブランドにムーブメントを供給しています。もちろん、他グループへの供給もしており、ムーブメントにおける地位を確立していると言えるでしょう。そして現在「ETA社」ムーブメント供給問題が発生しており、『スウォッチグループ』以外で「ETA社」を使用しているブランドが問題を抱えております。詳しくは【後編】でお話ししますので、ぜひ併せてご覧ください。

2021年の売上高は、731000万スイスフラン(約9,707億円)で、新型コロナウイルスの影響で赤字だった前年から30%増となり、黒字転換しています。

リシュモングループ

1988年に設立し、ラグジュアリーブランドを数多く傘下に持つ『リシュモングループ』。【カルティエ】や【ピアジェ】など宝飾に強みを持つブランドを中心に、【ヴァシュロンコンスタンタン】や、【ランゲ&ゾーネ】、【ジャガールクルト】など、高級腕時計業界でも歴史あるブランドが傘下にいます。

『リシュモングループ』もそれぞれの分野にて特徴が分かれており、下記4つの部門で構成されています。

★ジュエリーメゾン
【カルティエ】/【ヴァンクリーフアーペル】…

★スペシャリストウォッチメーカーズ
【ヴァシュロンコンスタンタン】/【ランゲ&ゾーネ】/【ジャガールクルト】/【パネライ】/【IWC】…

★アパレル
【クロエ】/【ダンヒル】…

★オンラインディストリビューター
【ウォッチファインダー】…

ムーブメントメーカーは「ヴァンフリエ社」。『スウォッチグループ』の「ETA社」ほどのシェアはないため、『リシュモングループ』のブランドは、それぞれムーブメント開発を積極的に進めています。

宝飾品、時計、筆記具、服飾の4部門で構成されている『リシュモングループ』の中で、売上の約半分を占めるのが高級時計であることからも、同グループに所属する時計ブランドの実力が伺える形となっています。

2021年の売上高は、135450万スイスフラン(約17,481億円)で、前期比7.6%減となっていますが、アジア市場のジュエリー販売が牽引してV字回復を遂げています。

LVMHグループ

世界最大のブランドグループであり、時計ブランド以外にも【ルイヴィトン】や【ディオール】などファッションブランドが多く傘下にいる『LVMHグループ』。高級腕時計ブランドでは、【ウブロ】や【ゼニス】、【ショーメ】、【タグホイヤー】などが挙げられます。ファッションと時計の分野以外にも、ワインや香水事業などもあり、多彩なジャンルと傘下のブランドも最大級の企業グループと言えます。

『LVMHグループ』は6つの事業に分類されており、そのすべてがラグジュアリーブランドでございます。

★ファッション&レザーグッズ
【ルイ・ヴィトン】/【ディオール】/【フェンディ】/【ジバンシー】/【セリーヌ】/【ロロピアーナ】/【ロエベ】/【ベルルッティ】/【マークジェイコブス】…etc

★ウォッチ&ジュエリー
【ウブロ】/【ゼニス】/【タグホイヤー】/【ブルガリ】/【ショーメ】/【ティファニー】…etc

★ワイン&スピリッツ
【モエ・エ・シャンドン】/【ドン・ペリニヨン】/【ヘネシー】…etc

★パフューム&コスメティックス
【パルファン・クリスチャン・ディオール】/【パルファム・ジバンシイ】/【ベネフィット】…etc

★セレクティブ・リテーリング
【ボン・マルシェ】/【セフォラ】/【DFS】…etc

★その他
【ロイヤル・ヴァン・レント (Royal Van Lent) ※高級ヨット製造業者】/【レゼコー(Les Echos)※フランスの経済紙】…etc

2011年には【ブルガリ】を、2021年には【ティファニー】を傘下に収め、宝飾分野を強化しました。また、世界三大グループの中で唯一スマートウォッチの事業に力を入れている点で、差別化が見られます。

売上高は2021年で6421,500万ユーロ(約8兆2600億円)と、前年比44%増かつ2019年度比でも20%増と、世界三大グループの中でも突出した躍進を見せました。

まとめ

【前編】の世界三大グループの紹介はいかがでしたでしょうか。

『スウォッチグループ』は時計ブランド、『リシュモングループ』は宝飾・時計を扱うブランド、『LVMHグループ』にはファッションを扱うブランドが多く傘下に入っていることがわかり、各グループの特徴やブランドの立ち位置がお分かりいただけたかと思います。

この『高級腕時計ブランドの相関図』を頭に入れておけば、より時計のトピックも面白く感じることが出来るかと思います。【後編】では《独立ブランド》や《独立時計師アカデミー(AHCI)》のご紹介をメインに、時計業界の今後の市場動向についても少しお話ししていきますので、お見逃しなく!

今回もこの記事を見ていただいたことで、時計業界に少しでも興味を持っていただければ幸いです。

ではまた!!