みなさま、こんばんは!

今週も新連載の今さら聞けないシリーズをお届けしていきたいと思います。この新企画では、高級腕時計にあまり詳しくない方、これから勉強していきたい方へ向けて「今さら聞けないよ!」といった、高級腕時計の基本的な事をわかりやすくお伝えしていきます。

第15回目となる今回は

高級腕時計入門編】:トゥールビヨン

『トゥールビヨン』とは、世界三大複雑機構の一つに挙げられ、天才時計師「アブラアン=ルイ・ブレゲ」によって発明されました。その見た目の美しさから注目を集めることが多い機構ですが、実際にどのような機構か詳しく知らないという方もいらっしゃるかと思います。

そこで今回は『トゥールビヨン』はそもそもどのような機構なのか?なぜ作られたのか?など基本となることを、分かり易くご紹介していきたいと思います。

『トゥールビヨン』とは?

トゥールビヨン』=『重力の影響を減らすための機構

『トゥールビヨン』は、長期間カレンダー調整の必要がない『パーペチュアルカレンダー』、ゴングなどで時刻を知らせる『ミニッツリピーター』とともに、世界三大複雑機構の一つとされる機構です。

時計の歴史を200年早めたとして知られる「アブラアン=ルイ・ブレゲ」によって発明されたこの機構は、懐中時計が主流であった当時、携帯しているうちに時計の向きが変わり、精度がずれてしまうデメリットを克服するために開発され、時計の動力でもあるゼンマイにかかる重力の影響を減らす仕組みを備えています。それは、姿勢差の影響を受けにくく、向きや姿勢が変わっても高い精度を保てる画期的な機構となっているのです。

『トゥールビヨン』の仕組み

『トゥールビヨン』の仕組みを簡単に説明すると、時計の精度を司る部品を一つにまとめ、それを回転させることで、重力の影響を受けないようにする機構のことです。

通常のムーブメントでは、ゼンマイがほどけることによって、
香箱⇨2番車⇨3番車⇨4番車⇨脱進調速機
と順番に動力が伝わります。

一方『トゥールビヨン』では、
脱進機と調速機をまるごと”キャリッジ”と呼ばれる”カゴ”に格納し、
“キャリッジ”ごと回転させることで、重力の影響を分散させています。

“キャリッジ”と固定された4番車とガンギ車が噛み合って自公転することで、全体が回転する仕組みになっており、”キャリッジ”が回転する様子が「渦」のようであることから、フランス語で「渦巻き」を意味する『トゥールビヨン』と名付けられました。

現代の『トゥールビヨン』の必要性

『トゥールビヨン』は、もともと懐中時計を想定して作られた機構です。腕時計の場合、懐中時計ほど姿勢差や重力による精度のずれは起こりづらいとされています。そのため、現代の高精度な腕時計のムーブメントには、『トゥールビヨン』は必ずしも必要とはいえません。

しかし、機構そのものの素晴らしさはもちろん、その動作や見た目の美しさから、精度を維持するための実用的な面よりも、美しさやステータス性として採用されることも多く、現在でも多くのブランドから展開され、時計愛好家たちに愛されております。

『トゥールビヨン』の種類

一口に『トゥールビヨン』と言っても、複数の種類があります。ここでは3種類の『トゥールビヨン』について解説します。

❶【トゥールビヨン(ノーマル)】

「アブラアン=ルイ・ブレゲ」が開発した懐中時計向けの機構を、そのまま腕時計に転用しています。誕生した当時は、”世界でも限られた職人しか作ることができない”と言われていましたが、近年の技術の進歩によって、現在は量産化が可能となっています。

代表モデル


リシャールミル
トゥールビヨン ラファエルナダル

❷【フライングトゥールビヨン】

通常の『トゥールビヨン』は、表と裏の両側にブリッジを備えていますが、『フライングトゥールビヨン』は、ブリッジを裏側だけで支えています。表からみると”キャリッジ”が浮いているように見えることから、この名前が付けられました。『トゥールビヨン』の肝である”キャリッジ”をダイレクトに鑑賞できるため、特にマニアの方からの人気が高いです。

代表モデル

オーデマピゲ
ロイヤルオーク フライングトゥールビヨン

❸【ジャイロトゥールビヨン(3D球体トゥールビヨン)】

【ジャガー・ルクルト】が開発した3D球体型の『トゥールビヨン』です。”キャリッジ”が球体となっており、重力を最小限に抑えることができます。見た目の美しさと技術の難易度から、非常に高い評価を得ています。

代表モデル

ジャガールクルト
マスター・グランド・トラディション・ジャイロトゥールビヨン・
ウエストミンスター・パーペチュアル

まとめ

『トゥールビヨン』の仕組みや種類について解説しましたが、いかがでしたでしょうか。

世界三大複雑機構に挙げられる『トゥールビヨン』は、重力による精度のブレを防ぐために開発されましたが、現在ではその見た目の美しさと時計のステータス性が重視され搭載されているモデルも多いです。

同じ『トゥールビヨン』でも、ブランドやモデルによって様々なデザインがございますので、是非とも皆さんの好きな『トゥールビヨン』を探してみてください。

今回もこの記事をご覧頂いたことで、高級腕時計に興味を持っていただければ幸いです!

ではまた!

コミットtv 八木コラム