第10話:その“ブレス伸び”、どこまで許される?

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賢治
店主!見てください!
このブレス、手首に馴染むです!
柔らかくて最高じゃないですか!?
店主
それは“しなやか”じゃなくて、
伸びてる可能性が高いね。
賢治
えっ。
僕ずっと、腕にしっくりくる柔らかいブレスが最高だと思ってました。
店主
(“膝の出たジャージ”を“こなれ感”と言い張るタイプか…)
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① まず“ブレス伸び”って何? それ実は金属の疲労です

店主
ブレス伸びは、コマ同士をつなぐピンやリベット、穴の摩耗で、各パーツの遊びが大きくなっている状態なんだ。
ブレス伸びの正体
  • ピンの摩耗:軸が痩せる
  • コマ穴の摩耗:連結部が広がる
  • 長年の荷重:重みで下方向にクセがつく
  • 汗・汚れ・摩擦:摩耗を進めやすい

※見た目はただ垂れているだけでも、中では少しずつ消耗が進んでいることがあります。

賢治
なるほど…。
“やわらかい革ジャン”じゃなくて、
蝶番がヘタったドアみたいな話ですか。
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② なぜ価格に響く? “着け心地”ではなく“消耗度”だから

店主
伸びたブレスは、着けた瞬間はラクに感じることもある。
でも査定では、「どれだけ部材が消耗しているか」を見る。

つまり“快適”に見えても、内部的にはお疲れ状態なんだ。
ここが誤解ポイント:
必ずしも「ブレスがよくしなる = 味」ではありません。
ヴィンテージらしい雰囲気として受け止められることはあっても、摩耗が進んでいる事実は別です。
賢治
うわ…。
僕、ソファのへたりを“座りやすい”って褒める人みたいになってました。
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③ 見極めの基本:横から垂らすと“疲労感”が出る

店主
見るときは、時計を持ってブレスを自然に垂らす。
その時に弧が不自然に深いとか、
コマの連なりがクネッと折れると要注意だね。
店主の観察ポイント
  • 横から見た垂れ方:自然か、不自然にだれるか
  • コマの間隔:一部だけ開きすぎていないか
  • 連結部の黒ずみ:汚れと摩耗の蓄積サイン
  • バックル付近:使用頻度が高く、疲労が出やすい

※モデルによって元々のしなり方は違うので、同系統個体との比較が有効です。

賢治
じゃあ、ただ“ぶらーん”としてるだけじゃなくて、
折れ方や角度も見ないとダメなんですね。
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④ “味”で済む場合もある? ある。でも全部が免罪符ではない

賢治
でも店主、ヴィンテージって、
ちょっと伸びてるくらいが“味”って聞くことありますよ?
店主
そこは確かにある。
年代感やオリジナル性を重視する世界では、
多少の伸びを含めて評価されることもある。

でもね、“味”と“疲労困憊”は別物
膝が少し出たデニムは味でも、
膝が完全にこんにちはしてたら、それはもう傷みだよ。
賢治
その例え、急に服がかわいそうですけど、
すごくわかります。
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⑤ 今日から使える:「ブレス伸びありますか?」で終わらせない質問テンプレ

賢治
じゃあ、買う前や査定前って、
どう聞けば浅くならないですか?
店主
これでいい。

「ブレスの伸びはどの程度ありますか?
横向きに垂らした写真、バックル付近、コマの連結部アップはありますか?
ピンやリベットの緩み、修理歴、交換歴が分かれば教えてください。」


これだけで、より実査定に近い金額が分かるよ。
質問で拾いたい情報
  • 全体写真だけでなく横姿
  • バックル周辺のアップ
  • 連結部の摩耗感
  • 修理・交換歴の有無
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⑥ リスクと懸念:放置すると何が起きる?

店主
伸びたブレスを放置すると、
見た目のだらしなさだけじゃない。

・連結部の負担増
・一部コマだけ摩耗が進む
・修理コストが重くなる
・査定時にマイナスが広がる

“今ちょっと気になる”が、後でしっかり痛手になる可能性がある。
注意:
ブレスの状態は写真だけだと過小評価しやすいです。
特に強い照明や正面写真だけでは、伸びや遊びの大きさが見えにくいことがあります。
賢治
つまり僕、
“ちょっとズボンの裾がほつれてるだけ”と思ってたら、
気づいたら全部バラける前夜だった可能性があるんですね。
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結論:ブレス伸びは“味”にもなるが、“消耗”でもある。言い訳は査定額を救わない

店主
覚え方はこれ。

着け心地は主観、伸びは状態。
そして状態は、価格に反映される。

“柔らかいから良い”で片付けず、
ちゃんと疲労のサインとして見よう。
賢治
今日から僕、
“しなやかですね〜”じゃなくて、
“どの程度伸びていますか?”って聞きます。
今日からできる:ブレス伸びで失敗しない3つ
  • 正面写真だけで判断しない(横から垂らした状態を見る)
  • “味”と“摩耗”を分けて考える
  • 連結部アップ・修理歴まで確認する

※ヴィンテージ・年式・構造によって評価のされ方は変わります。写真のみでは判断しきれないため、できれば実物確認や追加写真取得が安全です。

NEXT EPISODE
第11話:その“文字盤交換”、どこまで許される?
〜“綺麗だからOK”では終わらない。オリジナル文字盤の重みを知る回〜
  • 交換文字盤はなぜ評価が割れる? “綺麗”と“本物感”のズレ
  • 夜光・フォント・印字バランスの見どころ
  • 店主の例え「引っ越したのに表札だけ別人」理論
次回、盤、替わってたら空気も変わるゥ
※次回予告は演出です(でも査定の現場はだいたいこんな温度感)。

監修者のプロフィール

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コミット銀座

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