ロレックスの中でもダイバーズウオッチのサブマリーナ―は、とりわけ作りがタフだ。素材も選び抜かれ、たとえば現行モデルのSSケースには、904Lステンレスと呼ばれる耐腐食性に優れた特殊な高品質素材が使われている。加えて、凄まじい水圧に耐えるサブマリーナ―のケースに搭載されるのは、長時間使い続けることを前提にしたムーブメントだ。こうした経年劣化に対する強さと堅牢性ゆえに、ヴィンテージになっても実用時計として使える個体が多い。結果的に資産的な価値が目減りしにくいモデルと言える。
1985年、耐蝕性に優れた、宇宙産業レベルの「904Lステンレス」をケースに採用
一般的なステンレススチールに比べ、クロムの含有率が高く、モリブデンや銅を含む904Lスチールは、極めて加工が難しい。本来は高度な耐蝕性が求められる科学産業分野で用いられる素材だ。1985年、ロレックスはあえてこの難しい素材に挑戦した。
実際に歴代サブマリーナ―にどれほど904Lが使用されているのか
高級時計ブランドのほとんどが、SS素材に「316L」という耐アレルギー性に優れたステンレススチールを使用している。これはクロムの含有率が18%と多く、耐蝕性、耐アレルギー性、強度などに優れた高級素材だ。
ロレックスもかつては316Lスチールを使っていたが、1985年に時計界で初めて「904L」を使用したことを公表している。このSSは、クロム含有率が21%もあり、316Lよりも耐蝕性に優れ、非常に堅牢な素材。本来は航空宇宙業界やハイテク産業、化学工業などの分野で用いられることが多い。
では、実際に歴代サブマリーナ―にどれほど904Lが使用されているのか。ケースに関しては、1985年から製造を開始したRef.168000より904Lスチールへ変更されたていた。これはメーカーの公式アナウンスにも合致している。また、ブレスレットに関しては現行モデルから904Lスチールになったとされている。
ロレックスは海水等による耐蝕性を重視して加工の難しい904Lを採用した、といえる。また、Ref.168000は、Ref.16800とRef.16610の狭間に作られた謎多きリファレンスと呼ばれていたが、904Lスチール採用の有無という点では、両者は明確な違いがあったのだ。
まとめ
もちろんロレックスの場合、時計そのものの実用性のほかに、時計ブランドとして世界一の知名度が、時計の価値に加わる。通常なら使用年数が増えるほど下がるのが一般的だが、ロレックスは下がるどころか、時代を経るにしたがって逆に相場が上がるモデルも存在する。単なる工業製品ではなく、本格機械式時計が有する工芸品としての価値や希少性が、そのベースになってる。
サブマリーナ―の人気は日本だけではなく世界規模だ。デザインが頻繁に変わらないので、過去のモデルが陳腐化されることもない。また、他ブランドと違って、ロレックスはヴィンテージ市場が確立しているため、適正価格で買い取ってもらいやすいという事情もある。サブマリーナ―は思い切り使い倒しても高額査定が付く、極めてお得な時計なのだ。
これまで現行新品しか興味がなかった人も、ヴィンテージモデルもぜひ購入候補に入れていただきたい。