皆さん、こんにちは。
早いもので桜の花も散り、葉桜となってしまいましたね。今年のゴールデンウィークは帰省だけでなく、行楽へ出かける方も少なくないと聞いております。くれぐれも体調には気を付けながら、連休を楽しんでいただければと思います。
さて、今回は【カルティエ】の中でも時計愛好家からの評価が急上昇している『コレクション プリヴェ カルティエ パリ(CPCP)』について、掘り下げていこうと思います。
高級ジュエリーだけではなく、腕時計にも定評がある【カルティエ】ですが、2022年にアメリカの金融機関グループ「Morgan Stanley」とスイスの時計産業専門コンサルティング会社「Luxe Consult」から発表されたレポートによれば、【カルティエ】は2021年の時計業界の売上高で【ロレックス】に次ぐ第2位の売上を上げています。長らく業界第2位の売上を誇っていた【オメガ】を抜いたことに、驚きを覚えた方も多いはずです。
【出典】LuxeConsult & Morgan Stanley Research
『コレクション プリヴェ カルティエ パリ』(以下:『CPCP』)という言葉は耳慣れないかもしれないですが、時計好きの方であれば『CPCP』という呼称を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思います。ご存知でない方はこのコラムを読んでいただき、興味を持っていただけたら幸いです。是非最後までお楽しみください。
- ◆ 『CPCP』の特徴
- ◆ 『CPCP』の代表的なモデル
- ◆ まとめ
『CPCP』の特徴
Ⅰ.「由来」
「プリヴェ」はフランス語で「プライベート」を意味し、「カルティエ パリのプライベートコレクション」という和訳になります。当時、ジュエリーのイメージが強かったことやその独特なデザインも相まって【カルティエ】の腕時計は女性客から支持されることが多かったようです。そこで【カルティエ】は男性客を取り込むためにテコ入れを行いました。その戦略の中で、1998年から2008年まで展開されていたコレクションラインが『CPCP』です。
2009年からは『オート オルロジュリー』(※仏語で高級時計の意)コレクションが展開。
Ⅱ.「デザイン」
【カルティエ】は『CPCP』を展開するにあたって、過去の名作と呼ばれたデザインを多く取り入れました。『タンク』『サントス』『トーチュ』『トノー』『パシャ』など、パッとモデル名が頭に浮かぶアイコンウォッチが非常に多く、腕時計史に残る芸術的なデザインに回帰をしつつ、巧みなマーケティングを駆使し、現代に蘇らせたのが『CPCP』というわけです。
有名な話ですが、1985年に『パシャ』をデザインしたのは【オーデマピゲ】『ロイヤルオーク』や【パテックフィリップ】『ノーチラス』を手掛けた天才時計デザイナーの『ジェラルド ジェンタ』です。
Ⅲ.「素材」
『CPCP』は、高級素材であるイエローゴールド、ホワイトゴールド、ピンクゴールド、プラチナのみで展開されており、ステンレスモデルは存在していません。素材へのこだわりと最上級ラインとしての位置づけを明確にすることで差別化を図っております。
Ⅳ.「ムーブメント」
【ピアジェ】【フレデリックピゲ】【ジラールペルゴ】製などの洗練された高級手巻きムーブメントを導入したことも特徴です。また、多くのモデルでシースルーバックを採用し、ムーブメントを眺めることが出来る点も男性(機械式時計好き)を意識していることが窺えますね。
Ⅴ.「ダイヤル」
通常であればダイヤル6時位置に「SWISS MADE」「SWISS」と表記されるのみですが、『CPCP』には「CARTIER PARIS」という表記が原則的に使われています。この通常とは異なる“PARIS”表記=特別感を演出したことは、男性の心を掴んだ要因のひとつでもあります。
『CPCP』の代表的なモデル
『CPCP』としてリリースされた代表的なモデルを、誕生順に紹介いたします。
①『トノー』 誕生年:1906年
■特徴
・「樽」をモチーフにしたエレガントな曲線のケース。
・リューズに配された「サファイアカボション」を初採用。
・アールデコの影響を受けており、直線と弧線の組み合わせが美しいデザイン。
【出典】フィリップス
➁『サントス』 誕生年:1911年
■特徴
・1904年にプロトタイプが生まれ、市販化されたのは1911年頃。
・創業者「ルイ カルティエ」が友人のブラジル人飛行家「アルベルト サントス=デュモン」のために作ったとされている【カルティエ】を代表するモデル。
・幾何学的なフォルムとビスモチーフ、リューズに配されたカボション。
・『サントス デュモン』『サントス ドゥ カルティエ』『サントス 100』『サントス ガルベ』など、多彩なラインアップ。
【出典】サザビーズ
➂『トーチュ』 誕生年:1912年
■特徴
・亀の甲羅の形がモチーフ。
・『トーチュ』とはフランス語で「亀」。
・ラウンド型の時計が大半であった時代に滑らかな曲線の革新的なデザインが話題に。
・ブルースチールの「ブレゲ針」。
【出典】フィリップス
➃『タンク アビス』 誕生年:1916年
■特徴
・第一次世界大戦中に戦車のキャタピラから着想を得て製作。
・ベゼルに施されたビスと、丸みを帯びたスクエアケース。
・ムーブメントもスクエア型。
【出典】サザビーズ
⑤『クロシュ ドゥ カルティエ』 誕生年:1920年
■特徴
・変則的な非対称ケース。
・『クロシュ』とは「鐘」の意。
・時計を水平に置いた時に「卓上ベル」を思わせるデザインから由来。
【出典】サザビーズ
⑥『タンク サントレ』 誕生年:1921年
■特徴
・『サントレ』はフランス語で「湾曲」。
・正面から見ると、直線的なフォルム。
・サイドから見ると、手首に馴染むような湾曲フォルム。
【出典】サザビーズ
⑦『タンク ルイ カルティエ』 誕生年:1922年
■特徴
・時計部門を創設した3代目 「ルイ カルティエ」の名を冠するモデル。
・デザイン性に優れたシンプルな正統派レクタンギュラ―の原点。
【出典】サザビーズ
⑧『タンク シノワ』 誕生年:1922年
■特徴
・中国にある寺院の玄関の建築様式から着想を得て制作。
・ケースの縦枠に対し、横枠が突出した形状。
【出典】サザビーズ
⑨『タンク アギシェ』 誕生年:1928年
■特徴
・ジャンピングアワー機構を搭載。
・デジタル時計であるかのようなデザイン。
・時分針がなく、時分表示はディスク表示。
【出典】サザビーズ
⑩『タンク バスキュラント』 誕生年:1932年
■特徴
・ポロなどの競技中に時計のガラスを衝撃から保護する目的で制作。
・12時位置のリューズ、6時位置の長円形のサファイヤカボション。
・12時位置のキャッチを押すと縦方向に360度回転。(表⇔裏)
【出典】サザビーズ
⑪『タンク アシンメトリック』 誕生年:1936年
■特徴
・時間の確認を容易にするため、あえて軸をずらしたダイヤルデザイン。
・手首を上げるとひし形ケースの12時表記部分が一番上に。
・『アシンメトリック』はひし形を意味。別名『ロザンジュ』。
【出典】サザビーズ
⑫『クラッシュ』 誕生年:1967年
■特徴
・ロンドンで誕生。
・自動車事故の熱によってケースとダイヤルが溶けた時計にインスピレーション。
・サルバトール ダリによる「記憶の固執」など、溶けた時計を描いた絵画からも影響。
・ダイヤルに”London”の文字がプリントされているが、”PARIS”表記も存在。
【出典】クリスティーズ
⑬『タンク アメリカン』 誕生年:1988年
■特徴
・『タンク サントレ』を元にデザイン。
・旧【カルティエ】のNYブティックをイメージした、”アメリカ版のタンク”。
・手首に沿ってカーブする縦長フォルム。
・フラットに近いケースバック。
【出典】サザビーズ
まとめ
いかがでしたでしょうか。
【カルティエ】の時計コレクションは非常に豊富で、全てを網羅しきれておりませんが、革新的でありながらも、色褪せず現代人に受け入れられるデザインに、少しは触れていただけたかなと思っております。
近年、ラグジュアリースポーツウォッチの相場上昇に伴い、ドレスウォッチに注目される方も増えてきております。知名度、デザイン性ともに抜群である【カルティエ】の時計。フォーマルな場で着用する一本として、コレクションに加えるのも良いかもしれませんね。
ではまた!