映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第87弾の今回は、「韓国映画に登場した腕時計」をお送りします。

*出典元:https://thecorvidreview.com/

いま若い人の間では『梨泰院クラス』(2020)のパク・ソジュンなど、イケメン韓流スターが大人気となっておりますが、今回の「Actor’s Watch」では、私が愛して止まない韓国映画に登場する素敵なイケメンたちと、彼らが着用した腕時計をご紹介していきたいと思います。

もしかしたら少し暑苦しいかもしれませんが、これから徐々に涼しくなってくる秋の夜長にでもお付き合いいただけましたら幸いです。

悪いやつら

NAMELESS GANGSTER: RULES OF TIME(2012)

*出典元:https://www.koreanfilm.or.kr/

税関職員という立場を利用し、賄賂や密輸品の横流しで私腹を肥やすイクヒョン(チェ・ミンシク)。ある日、不正が発覚し解雇の危機に陥ったイクヒョンは、輸入品の見分中に発見した麻薬を着服し、それを売りさばく為に若き裏社会のボス、ヒョンベ(ハ・ジョンウ)に接近する。ヒョンベが遠い親戚であることを知ったイクヒョンは、持ち前のずる賢さと人心掌握術、コネを駆使して彼に深く取り入り、裏社会でのし上がっていこうとする。

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裏社会に地位を築いていこうとする役人上がりの悪党を描いた『悪いやつら』(2012)。韓国ノワールの傑作、『オールドボーイ』(2004)で復讐に燃える主人公を演じたチェ・ミンシクが体重を10kgも増量し、脂ぎったオヤジ感溢れるヤクザ者のイクヒョンを演じています。

本作で彼が着用しているのは、ロレックス デイデイト。フラットなサファイアクリスタル風防に、厚みを感じさせるカマボコケースが特徴の「Ref.18038」ではないかと思われます。民主化から間もない1980年代後半から1990年代初頭の韓国。当時の一般人が持ち得ないであろう金無垢のロレックスが、イクヒョンの裏社会における地位や存在感を演出していますね。

タクシー運転手 約束は海を越えて

A TAXI DRIVER(2017)

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1980年5月。ソウルのしがないタクシー運転手、マンソプ(ソン・ガンホ)は、10万ウォンという高額なチップに惹かれ、ドイツ人記者のピーター(トーマス・クレッチマン)を乗せて、韓国民主化運動の真っ只中にある光州市に向かう。

光州市に入った一行は、民主化を求める市民や学生たちと、彼らを鎮圧しようとする軍との衝突現場に遭遇。兵士による市民への銃撃を撮影したピーターは、その事実を全世界に発信するためフィルムを通信社に持ち帰ろうとするが、韓国軍部はフィルムを没収しようと企む。初めは高額なチップにしか興味が無く、金を受け取ったら1人でソウルに帰るつもりだったマンソプ。しかし、兵士に殺されていく市民や学生の姿を目の当たりにした彼は、ピーターとフィルムを命がけでソウルに送り届けようと決意する。

*出典元:https://www.thethings.com/

韓国民主化運動の分岐点となった1980年の「光州事件」において、事件を撮影したドイツ人の報道特派員ヒンツペーターと、彼と行動を共にしたタクシー運転手、キム・サボク。『タクシー運転手 約束は海を越えて』(2017)は、二人の勇気ある決断と行動を描いた、実話に基づく政治ドラマの傑作です。

韓国の歴史を変えたタクシー運転手を演じるのは、『殺人の追憶』(2003)、『パラサイト 半地下の家族』(2019)などの大ヒット作で主演を務め、日本でも高い人気を誇る韓国の国民的俳優、ソン・ガンホ。本作で彼が着用しているのは、今はなきスイスの腕時計ブランド「DUX」の腕時計(モデル/型番不明)と思われます。細幅のベゼルにドルフィン針という組み合わせは、当時の高級品であるセイコー ロードマーベルによく似ており、おそらくは「セイコーよりも安く手に入る、セイコーみたいな腕時計」という腕時計だったのではないでしょうか。経済的に恵まれていたとは言えない彼が見栄を張って着けていた、なんていう想像をするとシックリくる一本です。

犯罪都市

THE OUTLAWS(2017)

*出典元:https://www.koreatimes.co.kr/

貸した金を回収する為、ソウルに現れたチャイニーズマフィア「黒龍組」の3人。返済を渋る地元組織のボスを殺して組を乗っ取り、チャイナタウンを拠点に勢力を拡大しはじめた彼らは、韓国の裏社会の支配を狙い、ソウル最大の暴力組織との抗争を開始する。

一方、チャイナタウンを管轄するマ・ソクト刑事(マ・ドンソク)は、チャイニーズマフィアと地元組織の抗争を利用し、「黒龍組」の一斉検挙を計画。ソウルの街は、チャイニーズマフィア、地元組織、警察が入り乱れる修羅場と化す。

*出典元:https://www.youtube.com/

2004年に実際に起きた「HEUKSAPA事件」を基にして、地元組織、外国組織、警察の三つ巴の抗争を描くサスペンスアクション映画『犯罪都市』(2017)。腕っぷしが強く怖い物知らずだが、心優しく、少しトボけたところのある剛腕刑事を、韓国内では「マブリー」の愛称で知られるマッチョ俳優、マ・ドンソクが演じています。

本作で彼が着用している腕時計はロレックス デイトジャスト(型番不明)。逃げる組員を捕らえ、掌底一発で昏倒させるシーンで一瞬だけ確認できますのでお見逃しなく。そういえば、本作と同じく暴力団と刑事の抗争を描いた日本映画『孤狼の血』(2018)でも、刑事役を演じていた役所広司さんがデイトジャストを着用しておりましたが、「暴力団担当の刑事はデイトジャストを着ける」というのは、フィクションとしての演出なのか、はたまたリアルなチョイスなのか、気になるところです。

番外編


*出典元:https://www.harpersbazaar.co.kr/

チェ・ミンシク、ソン・ガンホ、マ・ドンソクという韓国三大「暑苦しい俳優」が並んでしまったので、ここで一服の清涼剤を。ポン・ジュノ監督作『吠える犬は噛まない』(2000)、山下敦弘監督作『リンダリンダリンダ』(2005)、是枝裕和監督作『空気人形』(2009)などへの出演で知られる韓国女優、ペ・ドゥナさんにご登場いただきましょう。

さて皆さんは、韓国で「ペ・ドゥナ ウォッチ」と呼ばれている腕時計があることをご存知でしょうか?

*出典元:https://huskdoll.tistory.com/

ペ・ドゥナさんが『リンダリンダリンダ』で共演した前田亜季さんと思しき女性と撮ったツーショット写真。そこで彼女が着けていたのがシチズン アナデジテンプ(Ref.8988-S073057だった為、この腕時計が「ペ・ドゥナ ウォッチ」と呼ばれるようになったそうです。

1980年代に登場し、当時のレトロな雰囲気そのままに現在も新作がリリースされ続けている、アナログ時計&デジタルウォッチを組み合わせた「アナデジ」の名機。「BEAMS」や「スターウォーズ」などとのコラボも人気のモデルです。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
パラサイト 半地下の家族』(2019)が米アカデミー作品賞に輝くなど、世界のエンタメ界を席巻している韓国映画。その躍進を支えているのは、『パラサイト 半地下の家族』でも主演を務めたソン・ガンホを始めとする名優たちの、一度見たら忘れられない「押しの強い」顔立ちなのではないかと、個人的に思っています。

*出典元:https://www.theatlantic.com/

今後も韓国映画が世界中でヒットを続ければ、韓国映画と腕時計ブランドのタイアップなども今以上に増えてくることでしょう。ソン・ガンホオメガマ・ドンソクタグホイヤーなど、新鮮な組み合わせがスクリーンで見られるようになるかもしれません。

彼らの押しの強い顔立ちに合う腕時計は何なのか?韓国映画を観る楽しみがひとつ増えたような気がします。

ではまた!

Actor's watch