映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第83弾の今回は「時間テーマのSF映画に登場した腕時計」をお送りします。

*出典元:https://mytvtogo.net/

時間に沿って物語が進むかと思えば、時に過去の映像が挟み込まれたり、時にスローモーションになったりする「映画」という芸術形式。時間の流れをコントロールすることで視覚的な効果を生み出すことから、映画は「時間芸術」とも呼ばれています。

そんな「時間芸術」の中でも、特に「時間」というものについて観客に衝撃や感動を与えてくれるジャンルは何か?それは「時間そのものをテーマとするSF映画」ではないでしょうか?

今回の「Actor’s Watch」は、そんな「時間テーマのSF映画」に登場した腕時計に迫ってみたいと思います。

バック・トゥ・ザ・フューチャー

BACK TO THE FUTURE(1985)

*出典元:https://time.com/

1985年のある日、高校生のマーティ(マイケル・J・フォックス)は、親友である老科学者、ドク(クリストファー・ロイド)が発明したタイムマシンの実験に付き合うことに。デロリアンの乗用車を改造したタイムマシンで、みごと30年前の1955年にタイムスリップしたマーティ。しかしそこでエネルギー切れとなり、彼は元の時代に戻ることができなくなる。

助けを求めるため、30年前の若きドクが住む家に向かったマーティだが、その道中、彼は若き日の母に出会い、彼女からひとめ惚れされてしまう。このままでは母と父は結ばれず、自分の存在が消えてしまうことに気づいたマーティは、両親のキューピッド役を務めながら、1985年に戻るために奔走する。

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1950年代の古き良きアメリカ、チャック・ベリーの『ジョニー・B・グッド』(ロックン・ロール)、ラブロマンスなどのポップカルチャーを散りばめ、数あるタイムトラベル映画の中で最大のヒット作となった『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)。

本作の主人公マーティが着用している腕時計は カシオ CA-50。電卓やストップウォッチ機能を有したカリキュレーターシリーズの一本です。1970年代には300g(iphoneの約2倍)以上もの重さだった電卓が、1980年代には半導体技術の進歩により腕時計サイズにまで小型化。未来を感じさせる科学技術の粋を集めた多機能デジタル腕時計は、当時の高校生の憧れのアイテムでした。「未来は自分で切り開いていくもの」という、この映画のテーマを象徴する腕時計と言えるでしょう。

ミッション: 8ミニッツ

SOURCE CODE(2011)

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シカゴ行きの通勤電車内で発生した爆破テロ。それは、アメリカ陸軍パイロットのスティーブンス大尉(ジェイク・ギレンホール)が電車内で目を覚ました8分後に起きた出来事だった。爆発後に再びスティーブンスが目覚めると、実はその体験はテロの被害者の脳に残っていた「最後の8分間」の記憶をスティーブンスの脳で再現したものであると上官に告げられる。何人もの「最後の8分間」を追体験することで、スティーブンスは爆弾テロの真相に近づいていく。

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同じ時間を繰り返す、いわゆる「タイムリープ」SF映画である『ミッション:8ミニッツ』(2011)。被害者の記憶の中でスティーブンス大尉が着けている腕時計は、ヴィクトリノックス スイスアーミー クロノクラシック(Ref.241300)のようです。マルチツールやサバイバルナイフの老舗メーカーとして知られる、スイスの「ヴィクトリノックス」の手による、アナログ針とデジタル表示を兼ね備えた堅牢な「アナデジ」腕時計。

最後の8分」が繰り返される映画だけに、ギレンホールはこの腕時計のタイマーを8分にセットし、劇中では繰り返し何度も何度も、残り時間を確認することになります。

メン・イン・ブラック3

MIB 3(2012)

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ボグロダイト星人の凶悪犯、ボリスが月面にある銀河系刑務所から脱獄する。ボリスはかつて片腕を失い、逮捕される原因となったエージェントK(トミー・リー・ジョーンズ)への復讐を果たす為に地球へと降り立ち、タイムマシーンを手に入れる。

ボリスの脱獄を知ったMIBのエージェントJ(ウィル・スミス)とKだが、その日からKは忽然と姿を消してしまう。さらにMIB本部に出勤したJは、職員の誰もがKのことを憶えていないことに混乱する。MIBのデータでKが40年前に死亡していることを知ったJは、ボリスによる歴史改編を疑い、Kを救うため、自らタイムマシーンで40年前の世界へと向かうのだった。

*出典元:https://magazine.bulangandsons.com/

人気のSFアクションコメディシリーズ3作目『MIB 3』(2012)。この映画でウィル・スミスが着用しているのは、ハミルトン ベンチュラ クロノ(Ref.H24412732)。世界初の電池式腕時計としても知られるベンチュラは、アシンメトリーな三角形のケースが最大の特徴。電気で動く腕時計であることのアピールとして、文字盤に波形の模様が描かれているモデルも存在するなど、科学的なイメージをまとった腕時計。

タイムマシーンなどなくても、これだけで時間を操れそうなSFガジェット感が堪らない一本です(操れませんが)。

アベンジャーズ/エンドゲーム

AVENGERS ENDGAME(2019)

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タイタン星人サノスが起こした「デシメーション(インフィニティストーンの力を使った大量殺戮)」により、全宇宙の生命の半分が消し去られてから5年。世界は一応の平穏を取り戻していた。そんな中、量子世界から抜け出したアントマンがアベンジャーズに接触。量子力学を用いたタイムトラベルによる事態の打開を提案する。

タイムトラベル装置を作り、サノスがインフィニティストーンを手に入れる前にアベンジャーズがそれを手に入れれば、消し去られた者たちがこの世に舞い戻り、サノスを倒すこともできる。愛する者を失なって自暴自棄となっていたアベンジャーズの面々は一縷の望みを賭け、ストーンを集めるために過去の世界へと向かう。

*出典元:https://www.wristenthusiast.com/

アイアンマンやマイティ・ソーなど、マーベルコミックスのヒーローたちが総出演する「MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)」。アベンジャーズと宿敵サノスの戦いの最終章となる本作『アベンジャーズ・エンドゲーム』(2019)では、アイアンマン(トニー・スターク)を演じるロバート・ダウニー・ジュニアウルベルク UR-105 CT IRON を着用しています。

1997年創業の「ウルベルク」は、時計師一家に生まれ育ったウォッチメイカー、フェリックス・バウムガルトナーと、アート界出身のデザイナー、マーティン・フレイによって立ち上げられた新興ブランド。そのデザインや機能性には、アイアンマンを創り出したスターク・インダストリアルと相通ずる独創性が強く感じられます。

テネット

TENET(2020)

*出典元:https://www.indiewire.com/

時間移動が可能となった未来の人類と戦い、第三次世界大戦の勃発を防ぐために創設された組織「TENET(テネット)」にスカウトされたCIA工作員(ジョン・デヴィッド・ワシントン)。未来人が作り出した時間を逆行させる装置「アルゴリズム」を確保するため、彼は物理学者でもあるエージェントのニール(ロバート・パティンソン)と共に、「時間」の流れの中を縦横無尽に駆け巡る。

*出典元:https://productplacementblog.com/

順行する時間と逆行する時間が交差しながら複雑に絡み合う時間構造となっており、一度観ただけでは物語の全貌の把握が難しい『テネット』(2020)。名匠クリストファー・ノーラン監督の手による、逆行した時間上の激しいアクションシーンは見ごたえ十分です。本作に登場するのは、クリストファー・ノーラン監督作の常連とも言える腕時計ブランド、ハミルトン カーキネイビー ビロウゼロ(Ref.H78505330)。潜水艦にインスパイアされた、46mmのビッグサイズなダイバーズウォッチです。劇中では文字盤にデジタル表示が見られますが、これは映画内だけのギミックで、残念ながら実物にはデジタル表示機能はありません。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
このように並べてみると、実に多彩で個性的な腕時計が並ぶ結果となりました。

本来なら前に進むしかないハズの「時間」を、過去に戻したり、逆行させたりする「時間」テーマのSF映画において、腕時計は「通常とは異なる時間の流れ」を表現する重要な小道具のひとつでもあり、主人公が時間を確認するシーンなどでアップとなることも少なくありません。

そのようなシーンで観客に「時間」を印象付けるためには、シンプル過ぎず、それなりに目を惹く個性的な腕時計が適しているのかもしれませんね。

腕時計が物語のキーアイテムになることも少なくない「時間」テーマのSF映画。探せばまだまだ色々な腕時計が見つかるような気がしますので、これからも深堀していきたいと思います。

ではまた!

Actor's watch