映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第78弾の今回は、「映画に登場したロレックス デイデイト」をお送りします。

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1945年のデイトジャスト誕生から11年後、1956年に産声をあげたデイデイト。当時のアメリカ大統領だったアイゼンハワーに贈られたことから、デイデイトが「プレジデント」と呼ばれるようになったとも言われています。

日付とフルスペルの曜日表示を持つ世界初の腕時計ロレックス デイデイトは、ゴールドやプラチナなどのレアマテリアルのみで展開されるロレックスの最上級モデルであり、リンドン・ジョンソンジェラルド・フォードビル・クリントンドナルド・トランプらアメリカの歴代大統領たちや、世界一の投資家と呼ばれるウォーレン・バフェット氏など、政財界の錚々たる面々に愛用される腕時計として知られています。

今回の「Actor’s Watch」は、この「デイデイト」に注目して参ります。

1980年代の映画に登場したデイデイト

『マイアミ・バイス』のドン・ジョンソン

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フェラーリに乗り、犯罪者から押収したアルマーニやヴェルサーチをカジュアルに着こなし、遊び人を装って麻薬組織を追う、マイアミ警察特捜班の囮捜査官ソニー・クロケット(ドン・ジョンソン)。彼は麻薬組織に兄弟を殺されたニューヨーク市警のリカルド・タブス刑事を相棒に、マイアミを取り仕切る犯罪組織との戦いを繰り広げていく。

高級ブランド品を全身にまとう色男の捜査官を主役に置きながら、IPSC(国際実用射撃連盟)が監修・指導したリアルな銃撃戦などのアクションシーンが人気を呼び、1980年代に全米で大ヒットを飛ばした刑事ドラマ『マイアミ・バイス』(1984-1989)。

本作でロレックス デイデイトを着用しているのは、主役であるソニー・クロケット捜査官を演じたドン・ジョンソン。年代的に「Ref.18038」あたりのモデルではないかと思われます。麻薬の売人を誘い出す為の「金持ちの遊び人」を演じるには、最適の小道具と言えるでしょう。

『ペテン師と詐欺師/だまされてリビエラ』のマイケル・ケイン

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大富豪の有閑マダムを相手に詐欺を働くイギリス人詐欺師のローレンス(マイケル・ケイン)。南仏リビエラでアメリカ人詐欺師フレディ(スティーヴ・マーティン)に正体を気づかれたローレンスは、たまたまホテルに居合わせた女性からどちらが先に5万ドルを巻き上げられるかという「ペテン勝負」をフレディに持ち掛け、彼を負かせてリビエラから追い出そうと企むが、、、

騙し騙されの頭脳戦を描く「コンゲーム」映画の傑作として知られる『ペテン師と詐欺師/だまされてリビエラ』(1988)。本作ではイギリスを代表する大御所俳優、ベテラン詐欺師のローレンスを演じたマイケル・ケインがロレックス デイデイト オイスタークォーツ(Ref.19018)を着用しています。この腕時計はマイケル・ケインが愛用していた私物を劇中でも着用したものですが「金持ちを演じる色男」の腕にピッタリの腕時計と言えるでしょう。

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『レインマン』のトム・クルーズ

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高級外車ディーラーのチャーリー(トム・クルーズ)は、絶縁状態だった父親の訃報を知り、遺産を目当てに実家に帰省するが、存在すら覚えていなかった自閉症の兄、レイモンド(ダスティン・ホフマン)が300万ドルの遺産の全てを相続することになっていた。遺産を手に入れようと画策したチャーリーは、兄を病院から連れ出してロスの自宅に連れ帰ろうとするが、その途中、兄の人並外れた記憶力に気づき、幼い頃に彼と遊んだ日々を思い出す。

離れ離れに暮らしていた兄弟の再会と絆を描いた『レインマン』(1988)でロレックス デイデイト(Ref.18238と思われる)を着用していたのは、遺産目当ての見栄っ張りな弟、チャーリーを演じたトム・クルーズ。初めは金づるとしか見ていなかった兄と自分の子供時代を思い出していく中で、チャーリーの「心の変化」を表現するための小道具として、デイデイトが効果的に使われています。

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1990年代の映画に登場したデイデイト

『グッドフェローズ』のレイ・リオッタ

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幼い頃からマフィアに憧れていたヘンリー(レイ・リオッタ)は、地元のマフィアのボスのもとで働くうちに金儲けのセンスを認められ、街で最も恐れられている男ジミー(ロバート・デ・ニーロ)とトミー(ジョー・ペシ)とコンビを組むことになる。マフィアの後ろ盾を得て自分の店を持ったヘンリーだが、その店でトミーが人を殺してしまったことで、彼の人生は少しずつ狂い始める、、、

実在のマフィア、ヘンリー・ヒルの生涯を描いた『グッドフェローズ』(1990)では、主役のヘンリーを演じたレイ・リオッタがロレックス デイデイトを着用。撮影時期からすると、Ref.18038(70年代後半~80年代後半)か、Ref.18238(1988年~2000年)のいずれかと思われます。

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『摩天楼を夢見て』のアレック・ボールドウィン

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ニューヨークの大手不動産会社のセールス部門に対し、本社の若手幹部ブレイク(アレック・ボールドウィン)が「営業成績3位以下はクビにする」と宣告。背水の陣を敷かれた営業マンたちがしのぎを削って契約をもぎ取る中、結果が出ないスタッフは捨て鉢な計画を立て始める。

過酷なビジネスの世界を描いた『摩天楼を夢見て』(1992)で、浮き沈みの激しいビジネスマンたちを演じるのは、ジャック・レモンアル・パチーノエド・ハリスといったベテランの実力派俳優たち。本作でロレックス デイデイト(モデル不明)を着用しているのは、若き幹部ブレイクを演じたアレック・ボールドウィン。「このような腕時計を着けたければ、営業成績を上げて見せろ」と言わんばかりに、自信に満ちた表情で腕元を見せつける姿が印象的です。

『ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア』のジェームズ・ガンドルフィーニ

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ゴミ収集会社の経営者アンソニー・ソプラノ、通称「トニー」(ジェームズ・ガンドルフィーニ)。彼の裏の顔は、ニュージャージーを仕切るマフィア「ソプラノ一家」の跡継ぎだった。しかし現代では裏社会も一般企業と同じく、優秀な部下はなかなか育たず、上の世代は時代遅れの価値観を押し付けてくる。中間管理職の苦悩やストレスに悩まされたトニーはストレスで昏倒。セラピーに通いながらマフィアのボスとしての仕事を続けることに、、、

絶対的な権力者ではなく、組織の管理職のような立場にならざるを得ない、現代的マフィアの苦悩やストレスを描いて人気となったTVドラマ『ザ・ソプラノズ』(1999-2007)。本作では暴力的ながら繊細さも持ち合わせた「トニー」役のジェームズ・ガンドルフィーニがロレックス デイデイト(Ref.18238を着用しています。

2000年以降の映画に登場したデイデイト

『オーシャンズ12』のブラッド・ピット

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ダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)率いる窃盗チームに出し抜かれ、莫大な大金と愛人を失ったラスベガスのカジノ王ベネディクト(アンディ・ガルシア)。彼はその復讐のため、オーシャンに盗んだ金の全額返済を要求。応じなければチーム全員の命は保証しないと脅しをかけてきた。奪った金を使い果たしていたオーシャンたちは、金を返すためにヨーロッパでの大仕事に取り掛かるが、別の窃盗グループに先手を取られてしまう。

詐欺師やスリ、金庫破り、運転のプロなど、得意技を持つ犯罪者がチームを組んでターゲットを陥落させる「ケイパー・ムーヴィー」の人気シリーズ第2作『オーシャンズ12』(2004)。本作では、チームリーダーであるオーシャンの右腕、スカウトや計画の実行役であるラスティ(ブラット・ピット)がロレックス デイデイト アイスブルーを着用しています。ベゼルはスムースではなく意匠が見られるので、バゲットダイヤがセッティングされた「Ref.118366」ではないかと思われます。

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『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語』のドミニク・クーパー

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イラクの独裁者サダム・フセインの長男であり、最高権力者の息子という立場を利用して蛮行や違法行為を繰り返し、国際社会に悪名を轟かせていたウダイ・フセインドミニク・クーパー)。そして彼に似ていたばかりに、無理やりに影武者をさせられることになった青年ラティフ。本能の赴くまま悪事を繰り返すウダイに怒りを覚える彼は、やがてウダイの愛人サラヴに惹かれていく。

実際にウダイ・フセインの影武者となったといわれる青年、ラティフ・ヤヒアの自伝本を原作とした政治サスペンス『デビルズ・ダブル -ある影武者の物語-』(2011)。本作でロレックス デイデイトを着用しているのは、権力に取り憑かれたウダイ・フセインを演じたドミニク・クーパー。撮影時期と時代背景を考えると「Ref.118238A」ではないかと思われます。

『バイス』のクリスチャン・ベール

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1960年代、大学を中退して電気工として働いていたディック・チェイニークリスチャン・ベール)は、後の妻となる恋人のリンに背中を押され政界を目指す。型破りな下院議員ラムズフェルドのもとで政治について学ぶうちに頭角を現し、大統領補佐官や国防長官などを歴任したチェイニーは、やがて2001年から始まるジョージ・W・ブッシュ政権において副大統領の地位にまで昇り詰めるが、その年の9月11日、同時多発テロがニューヨークを襲う。

「影の大統領」と評されるほどの影響力を発揮したディック・チェイニーの伝記映画『バイス』(2018)。本作でロレックス デイデイト(Ref.1803と思われる)を着用しているのは、体重を20kg近く増やし、髪を剃り、特殊メイクによってチェイニーの20代から60代までを一人で演じ分ける離れ業をやってのけたクリスチャン・ベール。外見だけでなく、ディック・チェイニー本人が実際に愛用していた腕時計も倣い、その人物を忠実に描き出しています。

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まとめ

いかがでしたでしょうか?

有権者に信任してもらう必要がある政治家、仲間からの信用を失えば裏切られるマフィア、信用してもらわなければ誰も騙せない詐欺師など、誰かに「信用」してもらうことが権力や富に繋がっていく映画の登場人物たちが、ロレックス デイデイトを着用していることがおわかりいただけたかと思います。

*出典元:https://www.rolexmagazine.com/

デイデイトを「権力や富を象徴する腕時計」と考える方も多いと思いますが、その権力や富を生み出すのは、その背後にある「信用」や「信頼」。つまり「ロレックス デイデイトが信用や信頼を生み出している」ということが表現されているということでもあります。

着ける腕時計が変われば、着用者を信用して集まってくる人も変わってくる。「何となく」ではなく、目的に合わせた腕時計をしっかりと選んで身に着けることで、繋がりたい人と繋がっていく、そんなことが映画からも読み取れるように思えます。

「選択」ってホントに大事、そういうことですね。
ではまた!

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