映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第60弾の今回は、マイケル・ケインの腕時計をお送りします。
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イギリスを代表する御年89歳の「超」大御所俳優、マイケル・ケイン。
近年では『ダークナイト』(2008)のアルフレッド執事役や、『キングスマン』(2014)のスパイ組織のリーダー役などで重厚かつユーモア溢れる演技を見せ、ともすれば単なる荒唐無稽に陥りがちなヒーローものやスパイ映画に風格と説得力をもたらす役割を果たしています。
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アカデミー賞を始めとする多くの受賞歴を誇り、1993年にはエリザベス女王からナイトに叙され、Sir(サー)の称号を受けるなど、数々の栄冠に輝くマイケル・ケイン。詳細は控えますが、かつて「最低映画賞」にも輝いた某B級アクション映画に出演した際も、決して手を抜くことなく、スティーブン・セガールの敵役として真摯な演技を見せるなど、どのような役でも偉ぶることなく演じ切る度量の大きさが魅力の俳優でもあります。
今回はそんなマイケル・ケインの腕時計に注目して参ります。
- ◆ アルフィー
- ◆ 狙撃者
- ◆ ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ
- ◆ まとめ
アルフィー
ALFIE(1966)
お洒落なロンドン男のアルフィー(マイケル・ケイン)は、持ち前の色男っぷりで次々と女性を落としては、面倒になる前に別れることを繰り返すプレイボーイ。しかしある日、アルフィーは付き合っていた女性のひとり、ギルダから妊娠を告げられると「産むも産まないもお前の自由」と言って責任逃れをする。ギルダが出産すると、我が子への愛情を自覚しながらも、自分勝手な生き方を変えることができないアルフィー。やがてギルダは、赤ん坊を連れて別の男と結婚してしまう、、、。
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『アルフィー』はフェミニズムが台頭する直前の1960年代におけるプレイボーイの日常を描いた英国式ロマンティックコメディ。ストーリーだけ読んだら薄っぺらいメロドラマなのですが、そこに輝きをもたらしているのは、神秘的でクールな眼差しと、優しさを巧みに使い分けるアルフィーの「ミステリアスなツンデレ感」。これはマイケル・ケイン以外の俳優では成立し得なかった作品と言っても過言ではありません。
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この映画でマイケル・ケインが着用しているのは、IWC インヂュニア(Ref.666AD)と思われる腕時計。軟鉄ケースを用いて耐磁性を高め、エンジニアや放射線技師などに向けてリリースされたプロフェッショナルウォッチです。1976年に、ジェラルド・ジェンタによって個性的な一体型ブレスのスポーツモデルとしてリデザインされる前の、やや厚みある初代インヂュニア。洒落者の腕元に程よい存在感と抜け感を与えているのではないでしょうか。
狙撃者
GET CARTER(1971)
ロンドンの切れ者ギャングとして名を馳せるジャック・カーター(マイケル・ケイン)は、故郷のニューカッスルにいる兄、フランクが交通事故死したことを知らされる。兄の死に疑惑を抱くジャックは事故の真相を暴くため、故郷のニューカッスルを訪れる。知略を巡らす真相究明の果てに兄の死の真相を知ったジャックは、亡き兄の遺品のライフルを片手に復讐を開始する、、、。
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『狙撃手』は70年代らしい「セックス&バイオレンス」が炸裂するパワフルなギャングスタームービー。マフィアやギャングの愛人から情報を引き出す為、やたらベッドシーンが多いのは時代的にご愛敬という感じですが、映画全体を覆うハードボイルドでスタイリッシュな雰囲気が、後にクエンティン・タランティーノ監督やガイ・リッチー監督らの作品に大きな影響を与えたことは間違いないでしょう。
激しい暴力を振るうギャングでありながら、事件の真相を探る知的な「探偵」としての役割も担うジャック・カーター。この映画が名作揃いのギャング映画の歴史に名を刻んでいるのは、彼を演じるマイケル・ケインが知性と暴力性を兼ね備えたキャラクターに、クールで魅力的な人間性を与えているからにほかなりません。
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この映画でマイケル・ケインの腕元を飾るのは、ロレックス デイデイト(Ref.1803)と思われる腕時計。ドレッシーな中にも個性を感じさせる、シックで落ち着いたモザイクダイヤルの一本です。ネイビーの三つ揃えやトレンチコートをトラッドに隙なく着こなす、稼ぎもデカそうな切れ者ギャング、ジャック・カーターの腕元には、これ以上ない腕時計ではないでしょうか。
ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ
DIRTY ROTTEN SCOUNDRELS(1988)
大富豪の有閑マダムを相手に詐欺を働くベテラン詐欺師のローレンス(マイケル・ケイン)は、自分の縄張りである高級リゾート地、南仏リビエラでセコい詐欺を働くアメリカ人詐欺師のフレディ(スティーヴ・マーティン)に出会い、自分が詐欺師であることを知られてしまう。フレディを仕事の邪魔と考えたローレンスは、たまたまホテルに居合わせた一人の女性、ジャネットからどちらが先に5万ドルを巻き上げられるかという「ペテン勝負」をフレディに持ち掛け、彼を負かしてリビエラから追い出そうとするが…。
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『ペテン師とサギ師/だまされてリビエラ』は、長澤まさみさんが詐欺師を演じる人気ドラマ『コンフィデンスマンJP』の脚本家、古沢良太氏も大好きと公言するコン・ゲーム映画(騙し騙されの頭脳戦を描く映画)。マイケル・ケインは詐欺のターゲットだったはずのジャネットにだんだんと惹かれていくベテラン詐欺師、ローレンスをダンディーに演じています(ダンディーに見せる為の地道な練習シーンもあり)。
英米スター俳優による「胡散臭いイギリス人詐欺師」と「胡散臭いアメリカ人詐欺師」の掛け合いや騙し合いが漫才のように爆笑を誘う、個人的にもオススメの一本です。
*出典元:https://oracleoftime.com/
この映画でベテラン詐欺師ローレンスが身に着けている腕時計は、ロレックス デイデイト オイスタークォーツ(Ref.19018)と思われる腕時計。詐欺師たる者、金持ちを騙すには、まず自分が金持ちを演じられなければならないという詐欺師の美学がヒシヒシと感じられる腕時計です。
そういえば、映画『オーシャンズ12』(2004)でも、詐欺師一味のブラッド・ピットがロレックス デイデイトを着用しており、詐欺師の「相手からの信用を得る」というミッションにおいて、デイデイトの効果は絶大であると言えましょう(あくまで映画の中での話、ですが)。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
初代インヂュニアにデイデイトのモザイク&クォーツという、ドレッシーな中にも個性を感じさせる3本がラインアップに並んだと言えるのではないでしょうか。シックでトラッドな雰囲気の英国紳士を数々演じながらも、実は労働者階級出身というマイケル・ケインらしい、反骨精神がピリッと効いたチョイスのように思います。
さて、マイケル・ケインの着用腕時計を調べている最中、こんな画像を見つけました。
これはイギリスの国民保険サービスによる、新型コロナウィルスワクチン接種キャンペーンCMに登場したマイケル・ケインの姿。手首に着けられている丸みを帯びたレクタングルケースは、Apple Watchではないでしょうか。
御年89歳にして新しいデジタルデバイスを使いこなす姿からは、トラッドでありながらも、伝統や様式に囚われることのない、オリジナリティに溢れた役作りを続けてきた一人の英国人俳優の哲学や矜持が垣間見られるように思えます。このことを頭の片隅においてマイケル・ケインの旧作を見直せば、また違った発見があるかもしれませんね。
ではまた!