映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第56弾の今回は「ベニチオ・デル・トロの腕時計」をお送りします。
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私がこの俳優の存在を知ったのは、ブライアン・シンガー監督の『ユージュアル・サスペクツ』(1995)にて。ポスターのド真ん中に主役のごとく立っておりますが、物語からは早々にご退場されて衝撃を受けた記憶があります。今は無き銀座一丁目の「銀座テアトルシネマ」で観たハズ。懐かしい思い出です。
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その後は『トラフィック』(2000)で麻薬組織が絡む汚職を追うメキシコ人捜査官を演じてアカデミー助演男優賞に輝き、名優の仲間入りを果たしますが、『ユージュアル・サスペクツ』での細身のチンピラ役とは全くルックスが変わっており、両作品を観ていながら同じ役者であることに気づいていない方も多いのではないでしょうか(数年前の私です)。
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先日公開された『フレンチ・ディスパッチ』(2022)では画商に目を付けられたサイコパスな囚人画家を演じ、作品にほどよい緊張感を与えておりました。
それではさっそく、そんなベニチオ・デル・トロの腕元に迫って参りましょう。
ラスベガスをやっつけろ
FEAR AND LOATHING IN LAS VEGAS(1998)
1970年代初頭、主観や感情を交えた体験記風の記事を書くスタイルで知られるジャーナリスト、ラウル・デューク(ジョニー・デップ)と、顧問弁護士のドクター・ゴンゾー(ベニチオ・デル・トロ)は、車にドラッグを詰め込んで、ラスベガスで行われるバイクレースの取材に向かうが、道中から早々にドラック漬けとなり、現実と幻覚の区別もつかなくなってしまう。現地に着いても原稿書きは全く進まず、ホテルの部屋の破壊やナンパに明け暮れ、やがて金が底をついて無一文になっても二人の自分勝手な行動は留まることを知らない、、、
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ヘルズエンジェルズやローリング・ストーンズを取材し、主観や感情を交えた体験記に仕立てるスタイルを確立した伝説のジャーナリスト、ハンター・S・トンプソン。この映画は彼の自由奔放かつ破壊的な取材記『ラスベガス☆71』を原作とする、破天荒な70年代を表現した幻想的なヒッピー映画となっています。ジョニー・デップはトンプソンに似せるため、髪を剃って禿頭に。ベニチオ・デル・トロはナンパばかりしている自堕落な弁護士を演じるため、体重を20kgも増やして撮影に臨みました。
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この映画でベニチオ・デル・トロが着けているのは、70年代のヴィンテージ タイメックス。似たようなモデルが山ほど売られていた時代ですので、画像からモデルの特定は困難ですが、物語の舞台となった1971年は機械式とクォーツ式の端境期であり、もしかしたらこの時代に短期間のみ存在した「電磁テンプ」(電池駆動の機械式時計)の腕時計かもしれません。
チェ 28歳の革命 / 39歳 別れの手紙
CHE(2008)
1940年、クーデターによりキューバ大統領に就任したフルヘンシオ・バティスタは、独裁政権を築き上げた後、アメリカ政府や企業と手を組んで私腹を肥やし、民衆を苦しめ続けていた。この状況を受けて立ち上がった元弁護士のフィデル・カストロは武装勢力を組織し、1950年代半ばからゲリラ戦を開始。そのころ、反政府ゲリラのひとりチェ・ゲバラ(ベニチオ・デル・トロ)は志願の上、負傷した仲間たちを移送する危険な任務に就いていた。この任務で仲間からの信頼を得たゲバラは、カストロからも「革命後のキューバに必要な人物」と目され、重要な任務を任されていく、、、
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1958年のキューバ革命においてゲリラ戦の実行部隊を率いた革命家、エルネスト・チェ・ゲバラの生涯を描いた4時間半にも及ぶ二部作映画。主役のゲバラを演じると共に、共同プロデューサーにも名を連ねるベニチオ・デル・トロは、7年もの歳月を費やして彼の遺族やゲリラ仲間への取材を敢行。ゲバラの素顔や人となりを徹底的に研究して役に臨んだ結果、第61回カンヌ映画祭では、この作品で男優賞の栄誉に輝きます。
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この映画で彼の腕に着けられているのはロレックス GMTマスター(Ref.1675) ペプシベゼル。チェ・ゲバラは実際に同モデルの腕時計を愛用していました。キューバ革命の前後、同盟共産国への往来が多くなったゲバラは、キューバとモスクワの時間を同時に把握するなど複数時間帯を確認する機会が増えたことで、GMT機能を重用していたそうです。
ボーダーライン: ソルジャーズ・デイ
SICARIO:DAY OF THE SOLDADO(2018)
アメリカとメキシコの国境付近で密入国者による自爆テロが発生。メキシコの麻薬カルテルによる犯行と睨んだ米国土安全保障省は、CIA特別捜査官マット・グレイヴァー(ジョシュ・ブローリン)に麻薬カルテル殲滅を命じる。殲滅作戦を開始したマットは、かつて手を組んだことのあるコロンビア人の殺し屋、アレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に捜査協力を要請。マットとアレハンドロは複数の麻薬カルテルの内紛や同士討ちを誘発する作戦に打って出る。
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CIA捜査官と殺し屋が手を組んで麻薬組織と戦う『ボーダーライン』シリーズの第二作。麻薬を巡る争いで妻子を殺され、復讐のためだけに生きる冷徹な殺し屋アレハンドロを、一作目に引き続きベニチオ・デル・トロが演じています。
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この映画で彼の腕に着けられているのは、カシオ G-SHOCK(Ref.DW9052-1B)。凹凸の多いフォルムがタフネス感を演出する一本です。そういえばロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの共演が話題となった『ヒート』(1995)でも、デ・ニーロ演じる強盗団のリーダーがタイメックスのタフなデジタル時計を身に着けておりました。犯罪のプロフェッショナルが腕時計に求めるものは、ステイタスでも美しさでもなく「正確さと頑丈さ」であるというハリウッド映画の小道具のトレンドが見て取れる腕時計のチョイスですね。
まとめ
*出典元:https://therake.com/
過去のインタビューでは「どのような人物であっても背景を与える」 「役作りは靴から」などと発言しているだけあり、腕時計のチョイスにも時代背景や性格との一致など、随所にこだわりをみせるベニチオ・デル・トロ。今後も演じる人物の性格や背景、人生まで感じさせる腕時計をしっかりと選んで着けてくれるはずですので、時計好きの方は、彼の腕元は要チェックです。私もなるべく劇場に観に行って参ります!
ではまた!