映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’sWatch」。
第25弾の今回は、ダスティン・ホフマンの腕時計に注目していきたいと思います。
*出典元:https://www.tcm.com/
アカデミー主演男優賞ノミネート6回、オスカー受賞に輝くこと2回。
ハリウッドを代表する「演技派の名優」と呼ぶことに異論ある映画ファンはいないでしょう。
彼がその名声を確固たるものにした70年代の出演作にて、同じ時計を何度も繰り返し着用していたことを皆さんはご存知でしょうか?今回はそちらの時計にフォーカスして参りたいと思います。
- ◆ わらの犬
- ◆ マラソンマン
- ◆ クレイマー、クレイマー
- ◆ まとめ
わらの犬
STRAWDOGS(1971)
『ワイルドバンチ』や『ゲッタウェイ』など、バイオレンスアクション映画の巨匠として有名なサム・ペキンパー監督の現代劇。平和で落ち着いた生活を求めて田舎町に引っ越してきた都会の夫婦が、閉鎖的な地元民の理不尽な嫌がらせに遭い、次第に暴力性を目覚めさせられていきます。
*出典元:https://www.criterion.com/
執拗な嫌がらせにストレスを募らせていく夫、デイヴィットを演じるダスティン・ホフマン。映画前半の臆病な演技と、怒りを爆発させていく後半との「温度差」は必見です。
スローモーションを多用した容赦ない暴力や流血表現は、後にクエンティン・タランティーノやジョン・ウーなど、次世代の映画監督たちにも大きな影響を与えたと言われています。
*出典元:https://www.rolexmagazine.com/
さて、この映画でダスティン・ホフマンが身に着けているのは、革ベルトに付け替えられたロレックス GMTマスター(Ref.1675)、青赤の「ペプシ」ベゼル。人間なら誰しもが持っている理性と暴力性を、GMTの二色ベゼル(昼と夜)であらわしている…なんていうのは、少し考えすぎでしょうか。
マラソンマン
MARATHON MAN(1976)
ユダヤ人から奪った宝石や貴金属を秘密裏に管理するナチスの残党と、ナチスの隠し資金を追うアメリカ政府の工作員。その謀略にマラソンが趣味の大学生、デーブ(ダスティン・ホフマン)が巻き込まれていくサスペンススリラー『マラソンマン』。
*出典元:https://www.rolexmagazine.com
アメリカ政府の工作員という素性の兄を持つデーブは、工作員の行動を知る人物として、ナチスの残党に監禁され、拷問を受けます。その方法はなんと「麻酔をかけずに歯を削る」というもの。しかし兄を実業家だと思っていたデーブは何も答えることができず、気絶するまで歯を削られ続けるという、歯医者が苦手な人にはトラウマになること必至の拷問シーンが有名です。
*出典元:https://www.telegraph.co.uk/
*出典元:https://www.rolexmagazine.com
この映画でも、ダスティン・ホフマンは『わらの犬』と同じくロレックスGMTマスター(Ref.1675)の「ペプシ」ベゼルを着用しています。『わらの犬』では革ベルトでしたが、本作ではジュビリーブレスに付け替えられています。大学生が着けるにしては少々値段の張る時計ですが、デイブ演じるダスティン・ホフマンは当時30代後半(!)ということで、大目に見てあげてください。
クレイマー、クレイマー
Kramervs.Kramer(1979)
仕事命で家庭を顧みず、家事や育児を押し付けるだけのテッド(ダスティン・ホフマン)に、妻は愛想をつかして家を出て行く。父子ふたりきりの生活になり、息子との絆は深まっていくものの、離婚や子供の大ケガで仕事に身が入らなくなったテッドは失業し、親権を巡る裁判でも元妻に敗訴。養育権を失ったテッドは、子供を元妻に引き渡す日を迎えてしまう。
*出典元:https://www.hollywoodreporter.com/
当時アメリカで社会問題化していた、離婚や親権を巡る裁判を題材とした社会派ドラマ。全く家事をしてこなかったテッドが、子供のためにぎこちない手つきでフレンチトーストを作るシーンが心に染みます。この映画でダスティン・ホフマンはアカデミー主演男優賞を獲得。名実ともに名優の仲間入りを果たしました。
*出典元:https://www.rolexmagazine.com/
さてこの映画でも、ダスティン・ホフマンは愛用のロレックスGMTマスター(Ref.1675)を着用…と言いたいところですが、GMTマスターは劇中には一切登場いたしません。上記のように着用している写真も多く残されているのですが、これらは宣材写真で、実際にダスティン・ホフマンが劇中で着用しているのは、PVD加工された黒いクロノグラフ。
*出典元:http://filmfanatic.org/
この時計はフランスのブランド「ルジュール」のクロノグラフと思われます。当時パートナーシップを結んでいたタグホイヤーが、自社の「Ref.12」にルジュールのロゴを付けて販売したものではないかとも言われておりますが、真相は定かではありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
愛用の時計を劇中で着けるだけにとどまらず、劇中で着けていない映画でも、宣材写真やオフショットでの着用は欠かさないダスティン・ホフマン。サヴァン症候群の障害者を演じ、二度目のアカデミー主演男優賞に輝いた『レインマン』でも、劇中では時計を着けていませんでしたが、アカデミー賞の授賞式ではいつものGMTマスターを着用していたそうです。
時に制作陣との軋轢を生んでしまうほど、完璧な演技を追求するダスティン・ホフマン。
愛用の時計に対するこだわりも、そのような「完璧主義」に繋がっているのかもしれません。
80歳を過ぎ、近年はスクリーンで見る機会の減ったダスティン・ホフマンですが、またいつか、お気に入りのGMTマスターを着けて演技をする姿を見せて欲しいものです。
ではまた!!