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ホロコーストを生き延びてアメリカへ渡ったユダヤ人建築家、ラースロー・トートの数奇な運命を描き、アカデミー賞10部門にノミネートされている伝記映画『ブルータリスト』(2024)。本年度のアカデミー賞で最も有力視されている作品と言っても過言ではない本作で助演男優賞にノミネートされているのは、トートに礼拝堂の設計と建築を依頼する大富豪、ヴューレンを演じたガイ・ピアースです。
『ハート・ロッカー』(2009)や『英国王のスピーチ』(2010)など、アカデミー作品賞を獲得した作品への出演は多いものの、自身は今までノミネートすらなかったガイ・ピアース。本作で、ようやくその演技力が認められました。
映画やテレビなどで活躍する映画人の腕時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。第211弾の今回は、そんなガイ・ピアースが着用した腕時計をご紹介して参ります。
オメガ
スピードマスター '57【Ref.332.12.41.51.03.001】
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2025年1月、ロンドンで行われた『ブルータリスト』のプレミアに登場したガイ・ピアース。スタイリッシュなピンストライプのスーツに彼が合わせた腕時計は、オメガ スピードマスター ‘57(Ref. 332.12.41.51.03.001)でした。
本作の演技で自身初のオスカーノミネートを果たし、長いキャリアの中で、いま最も高い評価を得ているガイ・ピアース。本人は「正直、居心地が悪い」と言ってますが、その表情は晴れやか。爽やかなスピードマスターの青文字盤が、晴れの舞台に華を添えています。
タグホイヤー
グランド カレラ クロノグラフ キャリバー17 RS2【Ref.CAV518K.FC6268】
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続いては、ガイ・ピアースがスポーツジムのオーナーを演じたコメディ映画『リザルツ(原題)』(2015)の劇中から。役柄に相応しく鍛え上げられた彼の太い腕に着けられている腕時計は、タグホイヤー グランドカレラ クロノグラフ キャリバー17 RS2(Ref.CAV518K.FC6268)でした。
実はこの腕時計は、彼がプライベートで愛用している一本。本作の撮影現場に着用して行ったところ、監督から「役柄にピッタリだ」と言われ、そのまま撮影することになったのだとか。ガイ・ピアース本人も「いかにもマッチョな雰囲気の腕時計」とインタビューで語っており「会心のチョイス」だったことが窺えます。
ロレックス
バブルバック【1940年代】
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最後も彼の出演作から。オーストラリア出身の彼にとって初のハリウッド映画への出演となったのが、その年のアカデミー作品賞にもノミネートされた犯罪映画『L.A.コンフィデンシャル』(1997)。警察学校を首席で卒業したエリート刑事という役柄で、共演したケヴィン・スペイシーやラッセル・クロウといったオスカー俳優たちに引けを取らない堂々とした演技を見せたガイ・ピアース。本作で彼が着用していた腕時計は、物語の舞台となる1950年代頃のロレックス バブルバックでした。
自分が幼い頃に殉職した、ロス市警の伝説的な刑事である父の形見として劇中では描かれており、「融通の利かない、父親譲りの正義感に溢れた刑事」という彼のキャラクターを際立たせています。
ちなみにこの時計、アップになると秒針がステップ運針しているように見えるため、撮影用に作られた小道具のクォーツウォッチではないかと思われます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
演技プランへのこだわりが強く、監督や製作会社と衝突することも少なくないガイ・ピアース。彼がプライベートで愛用しているグランドカレラというモデルのチョイスにも、そういう彼の「こだわりの強さ」が窺えます。
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ガイ・ピアースと言えば、クリストファー・ノーラン監督の出世作『メメント』(2000)で演じた「妻を殺した犯人を追う、10分しか記憶を保てない男」のイメージがなんといっても鮮烈でした。しかし、製作会社の重役とソリが合わず、『メメント』以降、ノーラン監督の映画に出演する事のなかったガイ・ピアース。
彼が『ブルータリスト』の演技でオスカーにノミネートされ、ノーラン監督も『オッペンハイマー』を撮るにあたって製作会社を変えたことで、『メメント』のゴールデンコンビが再びタッグを組むチャンスが生まれてきました。ノーラン監督の次回作のキャストにガイ・ピアースが名を連ねるか否か、楽しみにしたいと思います。
ではまた!