映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第16弾の今回は、ジェームズ・キャメロン監督のSFアクション大作『エイリアン2』を取り上げます。
今度は戦争だ!
*出典元:https://www.cinemablend.com
SF映画に登場する時計といえば、未来感溢れるオリジナルデザインのプロップウォッチやマイナーブランドのガジェット時計ばかりで、有名なブランド腕時計はあまり登場しませんね。とはいえ、現代や過去を感じさせてしまう現行品やヴィンテージの腕時計が、未来を舞台にしたSF映画にそぐわないのも当然といえば当然です。
しかし!
『エイリアン2』は違います。
なぜならあの「ジウジアーロデザイン」の時計だから。
ジウジアーロデザインとは
イタリアを代表する工業デザイナー、ジョルジェット・ジウジアーロ。
その名を知らない方でも、映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場した車型タイムマシン「デロリアン DMC12」のデザイナーと言えば、ピンとくるのではないでしょうか。
*出典元:https://en.wikipedia.org
デロリアン以外にも「いすゞ117クーペ」「マセラティ・ギブリ」「フォルクスワーゲン ゴルフ(初代)」「レクサスGS(初代)」「アルファロメオ159」など、数多くの名車を生み出し、またカーデザイン会社「イタルデザイン」の創設者としても知られているジウジアーロ氏。そして彼が自動車以外の工業デザインを行なうために立ち上げたのが、本人の名を冠した「ジウジアーロデザイン」なのです。
*出典元:https://www.italdesign.it
ニコンの名機「F3」、SHOEIのヘルメット「Z100」など、日本人にもなじみ深い数々のプロダクトをデザインしてきたジウジアーロ氏ですが、その中にはセイコーとコラボレーションした時計のデザインの数々も含まれています。
その中から、今回は映画『エイリアン2』に登場した2本の時計をご紹介したいと思います。
映画『エイリアン2』
“ALIENS”(1986)
宇宙船に侵入した1匹のエイリアンによって、乗組員がひとり、またひとりと殺されていくSFホラーテイストの1作目『エイリアン』に対し、「エイリアンの群れVS人類の兵力」のガチンコバトルが展開するド派手なバトルアクション映画となった『エイリアン2』。1作目『エイリアン』のただひとりの生存者であるリプリーが、エイリアン殲滅のために兵士たちと共に再び生息地へと向かい、繁殖を始めたエイリアンたちと死闘を繰り広げていきます。
*出典元:https://www.rogerebert.com
監督は1作目のリドリー・スコットから、『ターミネーター(1&2)』や『タイタニック』のジェームズ・キャメロンにバトンタッチし「史上最高の続編映画」ともいわれる傑作となっています。
*出典元:https://screencrush.com
この中でジウジアーロデザインの時計を着用しているのは、主役のリプリーを演じたシガニー・ウィーバーと、医療アンドロイドのビショップを演じたランス・ヘンリクセンの二人。
では、早速どんな時計なのか見ていきましょう。
セイコー×ジウジアーロ『リプリー』
まずはリプリーの腕に着けられている腕時計。
こちらは1983年に発売されたセイコー スピードマスター「Ref.SSAY068(7A28-7000)」。
*出典元:https://bloody-disgusting.com
ケース3時側の上下に垂直配置されたクロノグラフのプッシャーが何といっても特徴的です。運転中の誤操作を防ぎ、またドライビンググローブを着けたままでも操作がしやすいように、この独特の形状とプッシャー配置になっています。
*出典元:https://www.seikowatches.com
海外でも「SEIKO REPLEY」「ALIENS WATCH」などの愛称で時計愛好家に人気のこの時計は、2015年に限定復刻モデルセイコー スピリット ジウジアーロデザイン 「Ref.SCED035(グレー)/SCED037(黒)」がリリースされ、短期間での完売に至っています。
*出典元:http://flippersdiary.blogspot.com
定価は35,200円(税込)でしたが、現在では中古市場で7万~15万円程度で取引されるプレミアムモデルになっており、コンディションの良い個体であれば、更なる値上がりが期待されます。
セイコー×ジウジアーロ『ビショップ』
続いてランス・ヘンリクセンが演じるアンドロイド、ビショップが着けている腕時計。
こちらも1983年に発売されたセイコー ジウジアーロデザイン「Ref.SSAY048(7A28-6000)」。
*出典元:https://www.spotern.com/
ケース9時側に片寄ったラグの形状から、通称「オフセット(非対称)」と呼ばれる左右非対称のクロノグラフです。9時側ラグの断ち落とされたような直線的デザインが、ジウジアーロらしさを感じさせるデザインとなっています。
*出典元:https://www.ablogtowatch.com
『エイリアン2』の中でも、ビショップのキャラクターが強く描き出されている、有名な「ナイフゲーム」(手の平を広げてテーブルに置き、指と指の間をナイフで突いていく度胸試し)のシーンなどでこの時計がはっきりと映し出されています。
*出典元:https://everydaymetal.com.au
海外の時計愛好家の間では「SEIKO BISHOP」で通じる人気モデルも、2014年に『リプリー』同様、限定復刻モデル「セイコー スピリット ジウジアーロデザイン Ref.SCED003」がリリースされ、こちらも予約のみで即完売。定価35200円(税込)に対し、中古市場では5万円~10万円程度で取引されています。
ちなみにこちらは当店スタッフ愛用の「ビショップ」(Ref.SCED023)、復刻版の色違いモデルです。
まとめ
フェラーリ車などでお馴染みの優雅で官能的なピニンファリーナ系イタリアンデザインに対し、ジウジアーロのデザインは直線を組み合わせた機能美溢れる近未来感が最大の特徴。これこそが、ジウジアーロ氏の時計が違和感なくSF映画に溶け込める最大の理由と言っていいでしょう。
現代の時計でありながら未来を演出できる「セイコー ジウジアーロデザイン」は、文字通り「時代を超えた」腕時計と言えるのではないでしょうか。
ではまた!