映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第145弾の今回は、「サム・ニールの腕時計」をお送りします。
大ヒット映画『ジュラシック・パーク』(1993)に登場するグラント博士役として、老若男女に広くその顔を知られるサム・ニール。しかし彼は、裏に隠されたもうひとつの顔を持っています。それは「SAN値(さんち)激減俳優」という、ホラー映画オタクだけが知る「狂気の顔」です。
※SAN値:ホラー系の映画やゲームなどにおいて、不気味な場所に迷い込んだり、モンスターに襲われたりした登場人物の「正気を失ってる度合」を示す値。値が大きいほど正気に近く、小さいほど狂気に囚われている。
*出典元:https://www.thewrap.com/
『ジュラシック・パーク』の主人公を演じ、ファミリー向け映画俳優のフリをしているサム・ニールですが、実はホラーやサスペンス作品で「正気を失う&正気を失わせる(SAN値が減る&SAN値を減らす)キャラクター」を数多く演じている「SAN値激減俳優」でもあるのです。
今回は、そんな「狂気に囚われた男」サム・ニールが劇中で着用した腕時計に迫ってまいりたいと思います。
- ◆ ポゼッション
- ◆ ジュラシック・パーク
- ◆ マウス・オブ・マッドネス
- ◆ まとめ
ポゼッション
POSSESSION(1981)
*出典元:https://www.cinematicrandomness.com/
長い単身赴任を終え、妻のアンナ(イザベル・アジャーニ)と一人息子の住む自宅に帰ってきたマルク(サム・ニール)。しかし、妻の様子がおかしいことに気づいた彼は、自分の不在中にアンナが不倫をしていた事を確信する。妻の不倫相手を突き止めたマルクは、その男の部屋を訪ねて脅しをかけようとするが、その男に軽くあしらわれ、逆に、アンナには別の秘密があるようだと教えられる。
探偵を雇ってアンナを尾行させ、その秘密を知ろうとするマルク。しかし、ある古ぼけたアパートの一室に彼女がいるという報告を受けて以降、探偵は音信不通になってしまう。マルクが意を決してその部屋を訪れると、彼はそこで、暗闇に蠢く恐ろしい存在を目にする、、、
*出典元:https://www.reddit.com/
主演女優のイザベル・アジャーニがカンヌ映画祭で女優賞を獲得し、近年もリバイバル上映が行なわれるなど、隠れた名作として知られる仏独合作の不条理ホラー映画『ポゼッション』(1981)。「支配」や「憑依」を意味するタイトル通り、悪しき存在に支配された妻の狂気に取り込まれ、自らも正気を失っていく夫をサム・ニールが演じています。
本作で彼が着用している腕時計は、オメガ コンステレーション マリーン(Ref.193.0147)ではないかと思われます。時計がアップになるシーンが無いため断定はできませんが、映画の公開年と同じ70年代末~80年代初頭という製造時期、そして中コマの無い一連ブレス、装飾のあるベゼルなどの特徴が合致しています。
ジュラシック・パーク
JURASSIC PARK(1993)
*出典元:https://www.ibtimes.co.uk/
恐竜化石を研究するグラント博士(サム・ニール)の元に、莫大な資産を持つハモンド財団の創設者、ジョン・ハモンド(リチャード・アッテンボロー)が訪れる。ハモンドは恐竜のDNAを再生して本物の恐竜を蘇らせ、それを人々に見せるテーマパーク「ジュラシック・パーク」を作ろうとしており、恐竜の専門家であるグラント博士に協力を依頼しに来たのだった。恐竜を見世物にする話に乗り気でなかったグラント博士だが、財団から研究費援助の申し出を受け、背に腹は替えられず協力依頼を承諾する。
しばらくして、コスタリカ沖の孤島にやってきたグラント博士と数学者のマルコム博士(ジェフ・ゴールドブラム)は、そこで沢山の恐竜が歩き回っている姿を目の当たりにする。しかしその夜、暴風雨の襲来によって施設の電力供給が途切れると、恐竜たちはパークから逃亡し、人間を襲い始める、、、
*出典元:https://m.imdb.com/
現在も洋の東西を問わず、老若男女に広く楽しまれている恐竜映画『ジュラシック・パーク』シリーズ。サム・ニールは1作目だけでなく、シリーズ6作中の3作で、いつも金欠の古生物学者、恐竜オタクのグラント博士を演じています。
本作で彼が着用しているのは、スモールセコンドを備えたヴィンテージウォッチ。『ポゼッション』同様、こちらもアップになるシーンが無いので断定は難しいのですが、第二次世界大戦の頃(1940年代)に使われたミリタリーウォッチと思われます。ラグの形状など、当時の軍用時計メーカーで近いのはウォルサムあたりでしょうか。パイロットグローブを着けたままでも操作がしやすいよう、リューズが大きめの「ビッグクラウン」になっているのが特徴です。
マウス・オブ・マッドネス
IN THE MOUTH OF MADNESS(1994)
*出典元:https://blurayauthority.com/
ホラー小説のベストセラー作家、サター・ケイン(ユルゲン・プロホノフ)が「私の小説は現実だ」と言い残して失踪する。彼に保険金をかけていた出版社は、保険調査員のトレント(サム・ニール)に捜索を依頼。ヒントを求めてケインのホラー小説を読み漁り、小説の表紙にニューハンプシャーの地図が描かれていることに気づいたトレントは、そこにケインがいると直感する。
ケインを担当していた女性編集者、リンダ(ジュリー・カーメン)と共に、地図に描かれた街へと向かうトレント。道中、不気味な怪奇現象に見舞われながら辿り着いたのは、ケインの小説に登場する田舎町「ホブ」と寸分違わない、奇妙な町だった。これは出版社が仕掛けた謎解きゲームに違いないと疑いを抱いたトレント。しかし彼は、自分が「ホラー小説が現実となる世界」へと突き進んでいることに、まだ気づいていなかった、、、
*出典元:https://www.imdb.com/
1920~30年代に怪奇作家のH.P.ラヴクラフトによって創作され、現代でも恐怖小説やホラー映画、ロールプレイングゲームなどの題材として人気のある「クトゥルフ神話」。『ハロウィン』(1978)や『遊星からの物体X』(1982)で知られるジョン・カーペンター監督が、クトゥルフ神話をモチーフに「虚構が現実を侵食する不条理」を描いたホラー映画が『マウス・オブ・マッドネス』(1994)です。
本作では、ホラー小説の世界に迷い込み、精神を崩壊させていく現実主義者を演じたサム・ニール。その腕に着けられているのは、ロンジン ドルチェヴィータ 1932(Ref. L5.662.6.79.2)ではないかと思われます。本作の監督、ジョン・カーペンターはカルティエ パシャを愛用している事で知られており、この画像を最初に見た時には「同じカルティエのタンクか?」と思ったものの、リューズにカボションが無く、残念(?)ながら「監督と主演俳優が、お揃いのカルティエ」というワケにはいきませんでした。
ジョン・カーペンター監督愛用のカルティエ パシャはコチラ
☞#100 『映画監督が愛用する腕時計 PART.2』を読む
まとめ
いかがでしたでしょうか。
今回は古めの映画が多く、腕時計に関する画像や情報が少なかった為、推察をメインとして、ブランドやモデルの断定は避けさせていただきました。ご了承ください。
*出典元:https://dailydead.com/
彫りの深い顔立ちに鋭い眼光、普通にしていても口角が上がって見える「ニヤリ」顔。サム・ニールが映画の中でただならぬ狂気を感じさせるのは、高い演技力はもちろん、この「自分だけが世界の秘密を知っている」かのような、個性的な顔立ちがあってこそと言えるでしょう。
そんなサム・ニールですが、今年に入って血液の癌で闘病中というニュースが流れてきました。昨年も『ジュラシック・ワールド/新たなる支配者』(2022)や『ソー:ラブ&サンダー』(2022)に出演し、人気俳優として精力的に活動していたので、今回ご紹介した『ポゼッション』と『マウス・オブ・マッドネス』が大好きな私としては、大きなショックを受けました。
サム・ニールが病に打ち勝ち、再びスクリーンに登場して観客のSAN値を削り取る日が来ることを期待して待ちたいと思います。
ではまた!