映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第135弾の今回は、「ヴィゴ・モーテンセンの腕時計」をお送りします。

近年デヴィッド・クローネンバーグ監督の多くの作品で主演を務めるヴィゴ・モーテンセン。最新作『クライムズ・オブ・ザ・フューチャー』(2023)でも、「未知の臓器を生み出すアーティスト」という、いかにもクローネンバーグ作品らしい不気味な役どころを演じています。

そんな彼が演じた役柄として最も広く知られているのは、何と言っても『ロード・オブ・ザ・リング』三部作(2001-2003)のアラゴルン役でしょう。この作品で彼のファンになった方も多いのではないでしょうか。

*出典元:https://theplaylist.net/

あれから約20年経った今では、落ち着いた大人の色気を漂わす人気のシニア俳優として、マッツ・ミケルセンと共に、「マッツン」「ヴィゴやん」の愛称で、世の「枯れ専」女子から二大イケオジ俳優として並び称されるヴィゴ・モーテンセン。

今回は、そんな彼が劇中で着用した腕時計に迫ってまいりたいと思います。

G.I.ジェーン

G.I.JANE(1997)

*出典元:https://port.hu/

アメリカ海軍情報部のジョーダン・オニール大尉(デミ・ムーア)は、男女雇用差別の撤廃を唱える議員からの要請で、志願者の60%が脱落すると言われている海軍特殊部隊の訓練に臨むこととなった。しかし、部隊に加入した彼女を待ち受けていたのは、教官のウルゲイル曹長(ヴィゴ・モーテンセン)からの想像を絶するしごきと、他の訓練生からの蔑視だった。

頭を丸め、男の訓練生たちと寝食を共にするジェーンを、マスコミは「G.I.ジェーン」と揶揄するが、猛烈なしごきに耐え、課題を黙々とクリアしていく彼女の姿に、他の訓練生たちの心にも仲間意識が芽生え始める、、、

*出典元:https://epictures.homes/

ゴースト/ニューヨークの幻』(1990)の主演でブレイクを果たしたデミ・ムーア。彼女のスキンヘッドでの熱演が話題となったミリタリードラマ『G.I.ジェーン』(1997)では、ヴィゴ・モーテンセンは「ネイビーシールズ」をモデルとした特殊部隊の鬼教官、ウルゲイル曹長を演じています。

本作で彼が着用している腕時計は、ルミノックス オリジナル ネイビーシールズ 3001。ルミノックスとネイビーシールズが初めて共同開発し、ミルスペック(軍用基準)をクリアする腕時計として1994年に誕生した「3000シリーズ」の初代モデルです。この歴史を踏まえれば、本作にこれ以上に相応しい腕時計は、なかなか思い浮かびません。

イースタン・プロミス

EASTERN PROMISES(2007)

*出典元:https://www.truemythmedia.com/

クリスマスを目前に控えたある夜、病院に勤める助産婦アンナ(ナオミ・ワッツ)の元に、身元不明の臨月の少女が運び込まれてくる。女の子を生んだ後に息を引き取った少女の所持品は、ロシア語で書かれた日記と、そこに挟まったロシア料理店のショップカードだけ。

アンナの親戚のロシア人が日記を読むと、そこにはロシアンマフィアが関わる人身売買の詳細が記されていることがわかった。生まれた子供の為、なんとか少女の身元を割り出そうとするアンナは、ショップカードを頼りにマフィアに接触。日記と引き換えに少女の身元を教えるよう取引を持ち掛ける。取引の場に現れたマフィアの運転手ニコライ(ヴィゴ・モーテンセン)は、アンナに事件から手を引くよう忠告するが、アンナはミステリアスで時折優しさを見せるニコライに次第に惹かれていく。

*出典元:https://bamfstyle.com/

スキャナーズ』(1981)や『ザ・フライ』(1986)といった名作ホラー映画で知られるデヴィッド・クローネンバーグ監督が贈る、ミステリアスなバイオレンス映画『イースタン・プロミス』(2007)。謎めいたロシアンマフィアのニコライを演じるヴィゴ・モーテンセンは、劇中でジャガールクルト マスターコントロール(Ref .Q1398120)を着用しています。

圧倒的な不気味さと強さを感じさせながら、なぜか目立たぬよう、自分を押し殺すように立ち振る舞う謎の男ニコライ。個性ではなく、スタンダードで実直な印象を演出するマスターコントロールが、彼の正体を知るヒントになるかもしれません。

フォーリング 50年間の想い出

FALLING(2020)

*出典元:https://www.cinematografo.it/

ロサンゼルスに住む旅客機パイロットのジョン(ヴィゴ・モーテンセン)は、同性パートナーのエリック(テリー・チェン)と養女モニカの三人で幸せな家庭を築いていた。そんなジョンの悩みは、認知症を患う父、ウィリス(ランス・ヘンリクセン)のこと。実家の農場で一人暮らしをする父を自宅近くの老人ホームに入居させるため、ジョンは父をロサンゼルスの自宅に連れてくる。

昔気質のモラハラ男だったウィリスは、その攻撃性が認知症によって更に強まり、今ではあたりかまわず暴言を吐いて周囲をうんざりさせる存在だった。それでも忍耐強く父と向き合うジョンだが、やがて老人ホームへの入居を拒否し、家に帰せと罵倒する父と激しい言い争いになってしまう、、、

*出典元:https://twitter.com/

ヴィゴ・モーテンセンが脚本監督主演音楽を担当し、自らの親子関係と家族の絆を半自伝的に描いたヒューマンドラマ『フォーリング 50年間の想い出』(2020)。欠点と問題だらけの父であっても、許し、受け入れる事を選択した息子を、ヴィゴ・モーテンセンが演じています。

本作で彼が着用しているのは、ロレックス デイトナ(Ref.116520)と思われる腕時計。旅客機のパイロットとして世界中を飛び回りながら、同性パートナーと共に養女を育てる、経済的には余裕のある同性愛者の中年男性という役どころを、ロレックス随一の人気モデルを選ぶことで表現しています。ただし、着用カットを見る限り、クラスプも含めてデイトナらしい形状ではありますが、細部の作り込みが甘い様にも見受けられます。デイトナに似せて作られた、小道具用のプロップの可能性が高そうですね。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

ネイビーシールズの鬼教官役でのルミノックス、寡黙なロシアン・マフィア役のマスターコントロール、裕福なパイロット役のデイトナと、いずれも役柄にマッチした腕時計が選ばれており、見事な腕時計センスを感じさせます。

G.I.ジェーン』出演時には「鬼教官役なので、他の俳優と距離を置き、親しくしなかった」と、メソッド演技法の実践者らしい発言もある彼の事。腕時計も、彼にとっては「その人物らしさ」を表現するための重要な「鍵」のひとつなのでしょう。

*出典元:https://www.elmundo.es/

指輪物語』の原作のファンだった長男から「絶対に出るべき。お父さんならやれる!」と勧められるまで、『ロード・オブ・ザ・リング』出演のオファーを断ろうとしてたヴィゴ・モーテンセン。いま彼が出演する沢山の映画を楽しむことができるのは、長男のファインプレーのおかげと言っていいでしょう。ありがとうヘンリー・モーテンセン(画像左のロン毛)。

ではまた!

Actor's watch