映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第131弾の今回は、「ケヴィン・スペイシーの腕時計」をお送りします。

ブラッド・ピットの出世作『セブン』(1995)に登場する殺人鬼、ジョン・ドゥ役で世界中の映画ファンの注目を集めたケヴィン・スペイシー。当時、映画館で『セブン』を観ていた私は、「誰?この見知らぬ俳優は誰?」という疑問に頭を支配されながら、その演技から目が離せなかった事を憶えています。

*出典元:https://whatculture.com/

二度のアカデミー賞受賞(第68回アカデミー助演男優賞/第72回アカデミー主演男優賞)という輝かしい経歴がありながら、近年はセクハラや性暴力で複数の訴訟を受け、キャリアの足踏みをせざるを得なかったケヴィン・スペイシーですが、先日、ロンドンの裁判所で無罪判決を受けて疑いを晴らすことに成功。早くも復帰作の製作が開始されたそうです。

今回は、そんな彼が劇中で着用した腕時計に迫ってまいりたいと思います。

ユージュアル・サスペクツ

THE USUAL SUSPECTS(1995)

*出典元:https://m.imdb.com/

カリフォルニアの港湾で起きた麻薬密輸船の爆破事件。捜査官のクイヤン(チャズ・パルミンテリ)は、多数の死者が出た中でただひとり生き残って逮捕された詐欺師、キント(ケヴィン・スペイシー)を尋問していた。半身が不自由なキントは取調室で恐怖に怯え、この事件は、伝説の犯罪王、カイザー・ソゼが仕組んだものだとクイヤンに打ち明け、そのあらましを語り始める。

キントはある日、お互いを知らない4人の犯罪常習者たちとチームを組み、故買屋からの依頼で宝石強盗を働いた。仕事は成功に思われたが、強奪したケースに入っていたのは宝石ではなく麻薬。話が違うと依頼主に詰め寄った犯罪常習者たちは、依頼主の指示でコバヤシ(ピート・ポスルスウェイト)という弁護士に会うが、彼の雇い主こそが伝説の犯罪王、カイザー・ソゼだった、、、

*出典元:https://whatculture.com/

セブン』(1995)の数ヶ月後に公開された、これまた歴史に残るであろうサスペンス映画の金字塔『ユージュアル・サスペクツ』(1995)。『セブン』での演技に衝撃を受け、ケヴィン・スペイシーの出演作を追いかけ始めた私は、当時としては珍しい「完全入替制」で本作を単館上映していた映画館、今はなき銀座テアトルシネマで鑑賞しました。ネタバレ防止のために密封状態で販売されていたパンレットも、未開封のまま保存してあるハズ、、、

さて、本作でケチな詐欺師を演じたケヴィン・スペイシーが劇中で着用している腕時計は、ロレックス デイデイト(Ref.不明/参考画像)。文字盤やケースが映っているシーンが無いので型番は不明ですが、劇中では金無垢のプレジデントブレスがハッキリと見て取れます。何を書いてもネタバレになってしまう映画なので、彼がなぜこの腕時計を着用しているのか、などといった詳細は省略させていただきます。未鑑賞の方は、ぜひ映画をご覧になってください!

L.A.コンフィデンシャル

L.A. CONFIDENTIAL(1997)

*出典元:https://deadline.com/

マフィア幹部の逮捕を切っ掛けに、ギャングたちは血で血を洗う権力抗争を繰り広げていた1950年代のロサンゼルス。ある日、街のカフェが襲撃され、刑事を含む6人の男女が惨殺されるという陰惨な事件が起きる。

腕っぷしの強い向こう見ずな刑事バド(ラッセル・クロウ)と、出世の為なら同僚の密告も厭わないエリート刑事のエド(ガイ・ピーアス)は、お互いに対立しながらも、ベテラン刑事のジャック(ケヴィン・スペイシー)と共に事件の捜査に当たる。やがて、殺された刑事の相棒だったバドが、犯行現場で目撃されていた三人組を追い詰め、射殺したことで事件は解決したかに思えた。

しかし、偽証の発覚により三人組が真犯人ではないことを悟った刑事たちは、事件の裏に、ロス市警の上層部を巻き込んだ、巨大な陰謀が存在する事を知ってしまう、、、

*出典元:https://oracleoftime.com/

こちらも、今はなき関内の横浜東宝会館で観た『L.A.コンフィデンシャル』(1998)。同じく今はなき関内アカデミーで観た『プリシラ』(1994)でガイ・ピアースのファンになり、彼とケヴィン・スペイシーの共演ということで、首を長くして楽しみに公開を待った記憶があります。

本作で物語の鍵を握るベテラン刑事、ジャックを演じたケヴィン・スペイシーが着用している腕時計は、ヴィンテージのブローバ サーフキング(Ref. – /1965年頃)。舞台となる1950年代よりは少し上の時代の腕時計となりますが、アメリカを代表する腕時計メーカー「ブローバ」のヴィンテージ品を使ったことで、「古きアメリカ」が上手く表現されております。

ロビイストの陰謀

CASINO JACK(2010)

*出典元:https://www.npr.org/

ブッシュ政権を支援する大物ロビイスト、エイブラモフ(ケヴィン・スペイシー)は、ビジネスパートナーのマイケル(バリー・ペッパー)と手を組み、政治家との人脈と資金力を武器に政界のフィクサーとして大きな権力を持ち始める。議員や有力者への接待や賄賂攻勢で敵対する勢力をなぎ倒し、私腹を肥やしていくエイブラモフ。

そんな彼が次に目を付けたのは、アメリカ先住民たちへの優遇政策として経営されている莫大なカジノ利権だった。グレーな方法でその利権を手に入れたエイブラモフだが、やがてそれがブッシュ政権を揺るがす政治スキャンダルへと発展していく、、、

*出典元:https://productplacementblog.com/

モンスター上司』(2011)のトンデモ上司役や、『ハウス・オブ・カード』(2013)の汚職にまみれた大統領役など、ケヴィン・スペイシーが得意とする役柄のひとつに「違法行為も厭わない権力者」があります。ブッシュ政権を揺るがしたカジノ利権詐欺事件を描く『ロビイストの陰謀』(2010)でも、欲望の赴くままに権力を振りかざし、やがてそれが原因となって投獄された政界のフィクサー、ジャック・エイブラモスを演じています。

本作で彼が着用している腕時計は、IWC ビッグ インヂュニア クロノグラフ(Ref.IW378402)。公私に渡ってポルトギーゼダ・ヴィンチといったIWCの腕時計を着用してきたケヴィン・スペイシーは、「ハリウッドNo.1」と言われているほどのIWC愛好家。そんな彼がスーツに合う「ポルトギーゼ」ではなく、敢えて45.5mmサイズのインパクトある「ビッグ インヂュニア」を選んだのは、エイブラモスの人並外れた押しの強さを、着用している腕時計でも表現しようとしたからではないかと思っています。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

性加害の訴訟を受けた2019年頃から映画界からは身を引かざるを得なくなったケヴィン・スペイシーですが、めでたく疑いも晴れたことで、今はハリウッドの映画製作者に留まらず、世界中の映画ファンからも早期の復帰が待ち望まれています。

私も20代の頃からファンとして追いかけ続けている俳優だけに、ケヴィン・スペイシーの事を書き連ねていると、今まで自分が観てきた数々の映画の思い出が蘇ってまいります。その思い出の中には、今はもう閉館してしまった劇場も多く、時代の流れの早さを改めて強く実感している次第です。

*出典元:https://www.koimoi.com/

さて、IWCの熱狂的なファンとして知られるケヴィン・スペイシー。
次回は「祝!無罪評決!」と題して、彼が公私に渡って着用しているIWCの腕時計の数々を、まとめてご紹介していく予定です。

ケヴィン・スペイシーのファンの方だけでなく、IWCファンの方もお楽しみに。

ではまた!

Actor's watch