映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第127弾の今回は、「マハーシャラ・アリの腕時計」をお送りします。
いじめられっ子の黒人少年が成長する姿を描いた『ムーンライト』（2017）で少年に手を差し伸べる麻薬ディーラーを演じ、アカデミー助演男優賞史上最短となる24分の出演時間でオスカーを獲得したマハーシャラ・アリ。彼は両親がキリスト教徒のアメリカ人ながら、1999年にイスラム教に改宗しているため、ムスリム俳優としても初のオスカー受賞者となっています。
＊出典元：https://www.popsugar.com/
昨今はヒューマンドラマやサスペンスで人種差別と戦う「芸術家」や「刑事」といった役柄を演じる事の多いマハーシャラ・アリ。インテリジェンスを感じさせる洗練された演技が観る者に強烈な印象を残しており、毎年のようにオスカー候補としてノミネートされているのも当然と言えるのではないでしょうか。
今回は、そんな彼が劇中で着用した腕時計に迫ってまいりたいと思います。
ハウス・オブ・カード 野望の階段
HOUSE OF CARDS（2013-2016）
＊出典元：https://deadline.com/
ベテラン下院議員のフランク（ケヴィン・スペイシー）は、大統領候補のウォーカーを応援し、彼を勝たせることで国務長官の座を得ようとしていた。しかし当選を果たしたウォーカーの裏切りにより、国務長官のポストは他人の手に渡ってしまう。大きな屈辱を味わったフランクは、NPO法人の代表を務める妻のクレア（ロビン・ライト）と共に謀略を張り巡らせ、弱みを握った議員たちを手駒としてコントロールし、自らの力で政界をのし上がっていく。
将来の大統領選への地固めとして、ペンシルバニア州知事選挙に自分の息がかかった下院議員、ルッソ（コリー・ストール）を送り込んだフランク。しかし、ルッソが公約として掲げた環境法案は、天然ガス企業のロビイスト、ダントン（マハーシャラ・アリ）の策略により否決されてしまう。当選の可能性が無くなり用済みとなったルッソを、フランクは自殺に見せかけて殺害するが、そのことを懇意の記者に気づかれてしまう、、、
＊出典元：https://tagheuerforums.com/
強大な権力を求め、謀略の限りを尽くしてホワイトハウス入りを目指すベテラン下院議員、フランク・アンダーウッドの栄華と衰勢を描いた政治ドラマ『ハウス・オブ・カード 野望の階段』（2013-2016）。大企業のロビイストとしてフランクの妻と共謀し、やがて大統領へと昇りつめたフランクの補佐官として働くことになる男、レミー・ダントン役を演じたマハーシャラ・アリ。本作で彼が着用している腕時計は、タグホイヤー モナコ クロノ キャリバー11（Ref.CAW211C.FC6241）と思われます。
モナコと言えば、『栄光のル・マン』（1971）で名優スティーブ・マックイーンが着用したブルー文字盤のモデルが有名ですが、こちらはシンプルなシルバー文字盤の一本。スクエアケース＆左リューズで少々個性は強めながら、インダイヤルの色味は抑えられており、スーツやYシャツにも違和感なく合わせられる、落ち着いた大人のスポーツウォッチと言えるでしょう。
グリーンブック
GREEN BOOK（2018）
＊出典元：https://www.vulture.com/
公民権運動の真っ只中にあった1962年のアメリカ。用心棒をしていたナイトクラブの休業で職を失ったイタリア系アメリカ人のトニー（ヴィゴ・モーテンセン）は、黒人ピアニスト、ドクター・シャーリー（マハーシャラ・アリ）が開催するコンサートツアーの運転手兼ボディーガード職の誘いを受ける。黒人に指図されることを嫌ったトニーは最初は断ったものの、ギャラの上乗せにより、渋々ながら誘いを受けることに決めた。
二人は黒人が利用できるレストランや宿泊施設について書かれた旅行ガイド、「グリーンブック」を手に、差別が色濃く残る南部を巡るツアーを開始する。行く先々で人種差別のトラブルに見舞われウンザリし始めていたトニーだが、天才的な腕を持つドクターの演奏を聴き、彼と多くの会話を交わすうち、人種差別の理不尽さに気づき始める、、、
＊出典元：https://www.vanityfair.com/
1960年代に、差別が色濃く残るアメリカ南部を演奏して回った実在の黒人ピアニスト、ドン・シャーリーと、実際に彼に雇われて運転手兼ボディーガードとしてツアーに同行したイタリア系アメリカ人、トニー・リップ・ヴァレロンガの史実に基づくヒューマンドラマ『グリーンブック』（2018）。アカデミー作品賞と脚本賞の栄冠に輝いた本作で、マハーシャラ・アリは２度目のアカデミー助演男優賞を獲得しています。
腕時計がアップになるシーンが無く特定は困難ですが、丸みの強いラグと薄いベゼルを持ち、かつ劇中に描かれる美術品に囲まれた彼の暮らしぶりから推察するに、ヴァシュロンコンスタンタン ティアドロップラグ（Ref.不明/画像は参考品）ではないかと思われます。製造年代も劇中の時代背景とは大きく離れておらず、そのドレッシーな雰囲気は、洗練された彼の立ち振る舞いをより一層引き立てているように思えます。
TRUE DETECTIVE / 猟奇犯罪捜査
TRUE DETECTIVE（2018）
＊出典元：https://twitter.com/
1980年のミズーリ州オザーク高原。ヘイズ刑事（マハーシャラ・アリ）は、相棒のウェスト刑事（スティーヴン・ドーフ）と共に、パーセル家の幼い兄妹の失踪事件を追っていた。やがて12歳の兄、ウィルは死体となって発見され、容疑者がヘイズに射殺されたことで事件は幕引きとなったが、10歳の妹、ジュリーの行方はわからずじまいだった。
事件から10年後の1990年。薬局の強盗事件現場で発見された指紋のひとつが、行方不明となったジュリーの指紋と一致したことで、彼女の捜索が再開される。再びこの事件の捜査に当たることになったヘイズとウェストの両刑事だが、捜査を続けるうち、10年前のこの事件が、証拠の偽造や人種差別によって真相が闇に葬られたままであることに気づき始める、、、
＊出典元：https://professionalwatches.com/
海外刑事ドラマの傑作と名高い『TRUE DETECTIVE』のシーズン3、『TRUE DETECTIVE/迷宮捜査』（2019）では、10年前に起きた猟奇事件に再び立ち向かうことになった刑事を演じるマハーシャラ・アリ。本作で彼が着用している腕時計は、カシオ アナデジ ダイバー（Ref.AMW-320R-1EV）と思われます。
そういえば『TRUE DETECTIVE』は、シーズン2でもコリン・ファレル演じる悪徳刑事がチープカシオの人気モデル「W-87H」を着用しておりました。カシオが番組のスポンサーになっているという情報は無いようですので、もしかしたら制作陣の中にカシオ腕時計の愛好家がいるのかもしれません。
☞#104 【祝！オスカーノミネート】コリン・ファレルの腕時計 を読む
まとめ
いかがでしたでしょうか。
タグホイヤー、ヴァシュロンコンスタンタン、カシオと、役柄や時代背景に合わせ、全く異なるタイプの腕時計を、どれも見事に着けこなしているのは流石と言えるでしょう。
＊出典元：https://www.dmarge.com/
それもそのはず。
マハーシャラ・アリは、オフショットやプライベートショットでのファッションがSNSなどでしょっちゅう話題になる「ハリウッドのファッション番長」の異名を取る男なのです。
残念ながら、彼が着る服と共に腕時計が話題に上ることはあまり無いのですが、オスカーを二度も獲得し、出演料も高みに昇りつめているはずのマハーシャラ・アリ。今後はこのスタイリングに合わせた雲上の高級腕時計を身に着けて、SNSでバズってくれることを期待しております。
その時にはまた「マハーシャラ・アリの超絶腕時計」としてご紹介させていただきますので、ご一読のほど、何卒宜しくお願いいたします（いつになることやら）。
ではまた！