映画やテレビなどで俳優が着用した時計にフォーカスする「Actor’s Watch」。
第122弾の今回は、「ジョセフ・ゴードン=レヴィットの腕時計」をお送りします。

ジョセフ・ゴードン=レヴィットという名前はご存知なくても、この顔を見れば「あー、なんか見たことある」という方も多いのではないでしょうか。1990年代初頭から子役として活躍していた彼は、当時から『リバー・ランズ・スルー・イット』(1992)などの大作映画に出演。若くしてブラッド・ピットデミ・ムーアといったスター俳優との共演を果たします。

*出典元:https://www.hollywoodreporter.com/

ハリウッドの子役の中には、成長するに従いヤサグレていき、気がつけば社会からドロップアウトしていた、なんていうケースも少なくないのですが、ジョセフ・ゴードン=レヴィットは堅実にキャリアを積み上げ、四十路に入った近年も、数々の大作映画で名バイプレイヤーぶりを発揮し続けています。

俳優としてのキャリアを見れば「大御所」と呼んで何ら差し支えないスター俳優でありながら、何歳になっても「実家の近所に住んでいる大学生のお兄さん」のような、親しみある風貌で観る者を惹き付けるジョセフ・ゴードン=レヴィット。

今回は、そんな彼が劇中で着用した腕時計に迫ってまいりましょう。

インセプション

INCEPTION(2010)

*出典元:https://www.allocine.fr/

ターゲットの無意識に侵入して情報を盗み出す産業スパイ集団のリーダー、コブ(レオナルド・ディカプリオ)。彼の次なるミッションは、ある大企業のトップに「会社を潰す」という無意識を植え付け、その企業を崩壊させることだった。依頼者である実業家、サイトー(渡辺謙)のバックアップのもと、コブは長年の相棒、アーサー(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)と共に綿密な計画を練り上げる。

標的となるエネルギー複合企業のトップ、フィッシャー(キリアン・マーフィー)を旅客機の中で眠らせ、彼の潜在意識を自分たちの夢の中へと誘導することに成功したコブ。しかし、コブたちは夢の中で謎の武装集団に襲撃され、重傷者が出てしまう。フィッシャーは、誰かが自分の無意識に侵入することを警戒し、潜在意識を武装化する訓練を受けていたのだった。

フィッシャーからの思わぬ反撃を受けたコブは、ミッションを成功に導くため、潜在意識のより深い階層を目指していく。

*出典元:https://www.nolanfans.com/

インターステラー』(2003)や『テネット』(2020)など、難解ながらエンタメ性溢れるSF作品で知られるクリストファー・ノーラン監督が、潜在意識や夢といった人間の「無意識」の世界を圧倒的なビジュアル表現で映像化した『インセプション』(2010)。他人の無意識にアクセスして機密情報を盗む産業スパイ集団の「No.2」を演じるジョセフ・ゴードン=レヴィットが本作で着用している腕時計は、IWC マーク XVI(Ref.IW325504)と思われます。

インターステラー』(2003)では、ミリタリーウォッチの意匠として知られるコブラ針を採用したハミルトンの「マーフウォッチ」や、パイロットウォッチの意匠を継いだ「カーキパイロット」を、『ダンケルク』(2017)では、第二次世界大戦中にオメガが供給したパイロットウォッチ「CK2129」を、それぞれ劇中で大きくフィーチャーしたノーラン監督。伝統的なミリタリー&パイロットウォッチが監督の好みであることは間違いないでしょう。

本作でジョセフ・ゴードン=レヴィットが演じるアーサーは、パイロットではないものの、激しいアクションシーンも多いアクティブな役柄。それに相応しい、監督好みの「伝統的なミリタリーパイロット」が選ばれたのではないかと思われます。

ダークナイト ライジング

THE DARK KNIGHT RISES(2012)

*出典元:https://keithroysdon.wordpress.com/

警察の権限を強化する新法「デント法」の制定を巡り、凶悪犯「トゥー・フェイス」が犯した罪を自ら被り、逃走犯としてゴッサムシティから姿を消したバットマン。その正体であるウェイン産業の会長、ブルース・ウェイン(クリスチャン・ベール)もまた、財界の表舞台から姿を消し、人目を避けて屋敷に身を潜めていた。

ある日、ゴッサムシティの地下水道に、テロリストとして知られる傭兵ベイン(トム・ハーディー)が現れ、警察との銃撃戦になる。この事件でゴッサム市警本部長のゴードン(ゲイリー・オールドマン)は銃撃され入院。この警察の危機に、若手警察官のブレイク(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は自らの判断でブルース・ウェインの屋敷を訪れ、彼にベイン制圧への協力を要請する。

孤児だったブレイクは、同じ孤児だったウェインがバットマンの正体であることを見抜いており、彼にバットマンとして復帰するよう懇願するのだった。

*出典元:https://www.nbcnews.com/

バットマン ビギンズ』(2005)、『ダークナイト』(2008)に続く、クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト三部作」の最終作、『ダークナイト ライジング』(2012)。劇中でハッキリとは描かれないものの、いずれバットマンの後継者になるのではないかと観る者に想像させる若き警察官、ジョン・ブレイク(本名はロビン)を演じたジョセフ・ゴードン=レヴィット。本作で彼が着用しているのは、ビクトリノックス スイスアーミー(Ref.24653)と思われる腕時計です。

1884年にスイスのナイフメーカーとして創業し、現代では日本でも人気のマルチツール製造会社として知られているビクトリノックス。軍用・アウトドア用品のメーカーだけに、その腕時計は高い堅牢性を誇りながら、廉価でシンプル。1909年に意匠登録された「スイス国旗を守る盾」の赤いブランドロゴが、アイコニックなアクセントとなっています。堅牢なだけでなく、ブランドロゴで表現される「守護者」としてのイメージが、正義に燃える若き警察官の腕に非常によくマッチしています。

プロジェクト・パワー

PROJECT POWER(2020)

*出典元:https://www.diezminutos.es/

「発火能力」や「迷彩皮膚」など、摂取すると5分間だけ超人的な特殊能力が発揮できる謎のドラッグ、”パワー”がニューオーリンズ中に蔓延する。”パワー”で特殊能力を得た犯罪者が続出し始め、街の治安は悪化の一途を辿る。そんな中、謎の組織に娘を誘拐された元特殊部隊員のアート(ジェイミー・フォックス)は、”パワー”を供給する組織が誘拐の黒幕であると確信。娘を救うため、アートは組織の正体に迫っていく。

一方、自ら”パワー”を摂取することで犯罪を一掃しようと考えるフランク刑事(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、”パワー”犯罪の取り締まりと共に、”パワー”の供給組織を追う元特殊部隊員について捜査するよう上司から命じられる。やがてアートの元に辿り着いたフランク刑事は、彼と共に”パワー”に立ち向かっていくことになるが、、、

*出典元:https://casimods.com/

アメリカ社会が課題とするドラッグ蔓延や治安問題を「5分間だけ超能力が使えるようになるドラッグ」を用いた壮絶バトルで表現した、SFアクション犯罪ドラマ『パワー・プロジェクト』(2020)。”パワー”を使い、銃弾すら跳ね返す「硬化皮膚」の能力を得たフランク刑事を演じたジョセフ・ゴードン=レヴィットは、本作でカシオ スタンダード(Ref.B650WD-1A)を着用しています。

40年以上も基本デザインが変わらない「チープカシオを代表するモデル」として知られる「カシオ スタンダード A158WA-1」。「B650WD-1A」はその二回りほど大きく厚い「デカ厚」バージョンとして2018年頃に生まれた、比較的新しいモデルです。

存在感が控えめな「A158WA-1」ではなく、デカ厚で力強さを感じさせる「B650WD-1A」を小道具に選んだあたり、制作陣の強いコダワリすら感じさせます。ゆめゆめ「チプカシ」と侮るなかれ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

40歳を過ぎても新卒に見える「永遠の大学生」らしい、非常にカジュアルなラインアップになりました。このまま五十路、六十路、七十路になってもこれが続くかもしれないと思うと、ある意味、その恐ろしさに戦慄してしまいますね。現代のサン・ジェルマン伯爵か。

*出典元:https://www.vulture.com/

今回は「チプカシ」のベーシックモデルにもバリエーションがあり、その選択によってキャラクター表現の強弱に繋がるのかもしれないという「発見」がありました。当店で扱うカテゴリーの腕時計ではないものの、高くても安くても「腕時計」は「腕時計」。身に着ければ、そこに何らかの意味や人間性が表現されるもの。そういうことを改めて認識させられた次第です。

次の休みの日には、久々に家電量販店に最近のチプカシG-SHOCKを見に行ってみようかなと思った私!衝動買いしてもお財布に優しいし、奥さんにも怒られないから!

ではまた!

Actor's watch